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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

石井遊佳さん:イメージ第194回:石井遊佳さん

その1「お寺の書架で読書にふける」(1/6)

新潮新人賞を受賞したデビュー作『百年泥』が芥川賞を受賞、一躍時の人となった石井遊佳さん。幼い頃から本を読むのが好きだった彼女が愛読していた本とは? 10代の頃は小説を書けなかった理由とは? インドのチェンナイで日本語教師となる経緯など、これまでの来し方を含めてたっぷり語ってくださいました。

暗黒神話 完全版 (愛蔵版コミックス)
『暗黒神話 完全版 (愛蔵版コミックス)』
諸星 大二郎
集英社
3,456円(税込)
妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)
『妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)』
諸星 大二郎
集英社
745円(税込)
西遊妖猿伝 大唐篇(1)
『西遊妖猿伝 大唐篇(1)』
諸星大二郎
講談社
雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)
『雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)』
水上 勉
新潮社
594円(税込)

――一番古い読書の記憶から教えてください。

石井:一番古いかどうか分からないんですけれど、私、小学校に入った頃くらいから浄土真宗のお寺の日曜学校に行っていたんですよ。みんなで在家さん向けのお経を音読して、和尚さんではなく奥さんがちょっとしたお話をしてくれる会があったんです。そこのお寺に大きな書架があって、お話の本がいっぱいあったんです。私はそこにペタリと座り込んで、お勤めの時も出ていかずに、名前を呼ばれても気づかないくらい没入して本を読みふけっていました。全部終わると最後に仏様のお下がりのお菓子でティーブレイクするんですけれど、その時になると本を置いて出てくるという、とんでもないガキでした。読書に耽溺した最古の思い出はそのへんからかもしれないです。

――へええ。お寺にはどんな本があったんでしょう。

石井:お寺だから親鸞様の小さい頃のお話とか、お釈迦様の事績の本とか、仏教説話もあったんじゃないかな。ご信徒さん用の普及版とか。だから後々仏教を学ぶようになったわけではないんだけれども(笑)。普通の、子ども向けのお話の本もありました。自然にお寺に集まる本を置いてあるみたいな感じだったと思います。内容は憶えていないんですけれど、私は字だったらなんでも好きなんですよね。もちろんその頃は大人用の難しい漢字が沢山ある本は読まなかったと思います。

――字を読むのが好きだったんですか。では、家でもずっと本を読んでいるような子だったのでしょうか。

石井:いや、外でも遊んでいました。私たちの頃だと「一段」というゴム飛びや、ドッチボールが流行っていましたね。虚弱というわけでもなかったので、外でも遊ぶし、本もめっちゃ好きっていう子どもでした。小学校の3~4年の頃の担任の先生が子どもに読書させること熱心に推進していて、「どれだけ本を読んだ」という棒グラフで生徒を競わせたりしていて。そのやり方はどうかと思うんだけれど、私はそれでいつも1番でした。教室の中にもいっぱい本があって、恵まれていましたね。携帯もないし、他にすることもないし。
家にも本は充満していたんですよ。というのも、うちの母が子どもの本を広めるために図書館の分室を開設する運動をやっていて、一時的に自宅に本を置いていた時期があったんです。うち、めちゃめちゃ狭かったんですよ。時計眼鏡店をやっていて、その裏の、普通に見たら物置きみたいなところに一家4人住んでいて、そこに本を置くからすごい状態になっていて。はっきり言ってうちは貧乏でしたが、本に関しては大富豪。手を伸ばせば本があって、好きなだけ読むことができました。貧しいけれど豊か、みたいな不思議な感じですね。これで短篇が書けるなと思っているんですけれど。

――どんな本が多かったか憶えていますか。お話なのか、伝記とかなのか。

石井:お話と伝記、どちらも読みました。伝記は福沢諭吉とかリンカーンとかキュリー夫人とか。お話は海外のものもあったけれど、やっぱり日本の話が好きだったかな。憶えているのは、ある時期から江戸時代の農民ものが好きになって。

――農民もの?

石井:年貢に苦しめられて一揆をして首謀者が殺されて、みたいなリアルな話。子ども向けでそういう本もいっぱいありました。本当にキラキラした童話も嫌いじゃないけれど、小学校も後のほうになってくると、もうちょっと現実的な話が好きになったのかな。まあ、現実といっても江戸時代の話なんだけど。

――読書感想文なども得意でしたか。

石井:読むほど得意ではないんですけれど、書くことに興味を持ちだしたのは、小学校の終わり頃ですね。5~6年生の時の先生が書かせることにすごく熱心で、いろいろ書かせられたんですよ。で、「詩を書きなさい」と言われて、詩を書くのがすごく好きになりました。今から思うとわりと大人びた詩を書いていましたね。自分の内面感覚というのかな。たとえばプールのことを書く時も、プールでパシャパシャした、というよりも、ちょっと寒い日なんかにプールから上がってきて身体を屈めていたら、身体の中でほのかな熱がどこからどこに伝わったとか、そんなことを書いていた気がする。だから、そういう形でものを書くことに意識的になりましたが、小説を書く次元ではなかったです。

――中学校時代はいかがでしょう。

石井:小学校までは大阪府の枚方市にいたんですけれど、中学校から大阪市内に引っ越したんですよね。そこに行ってからいわゆる子どもの本から大人の本への移行がうまくいかなくて。中学くらいはあまり本を読まなかったですね。漫画ばっかり読んでいたので、その頃は漫画家になりたかったんですけれど(笑)。諸星大二郎とか好きだったんですよ。『暗黒神話』とか『妖怪ハンター』とか。ずっと後になって、たぶんもう私が学生時代になって『西遊妖猿伝』という、『西遊記』にまつわる漫画なんか描いてたけど、それはちゃんと読んでない。
小学校の頃から本も読んでいたけれど、漫画も読んでいたんです。どこかに行くと漫画が置いてあるから。通っていたヤマハ音楽教室にもあったし、家にお風呂がなかったから銭湯に行ったら少年漫画が読めた。床屋に行っても少年漫画がありましたね。「マガジン」も「ジャンプ」も読みました。
それで、中学校になったら読むのは漫画だけになっちゃって。先生もうまく指導してくれなくて、本は何を読んだらいいのか分からなかったんです。でも、いい本は読んでいたんですよ。水上勉さんの『雁の寺』。これは母から「読みなさい」と言われて。あと、有吉佐和子さんの『非色』。その2冊は読んだ。そのくらいかな。

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