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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

芦沢央さん:イメージ

第183回:芦沢央さん

その2「毎週数十冊を読破する日々」(2/5)

2012年に『罪の余白』で野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビュー、以来巧妙な仕掛けで読者を魅了している芦沢央さん。短篇集『許されようとは思いません』が各ミステリーランキングにランクイン、吉川英治文学新人賞の候補になり、新作『貘の耳たぶ』では新境地を拓くなど、ますます期待の高まる若手はどんな本を読んでその素地を培ってきたのか? 読書愛あふれるその遍歴を語ってくださいました。

なんて素敵にジャパネスク ―新装版― 全10巻完結セット (コバルト文庫)
『なんて素敵にジャパネスク ―新装版― 全10巻完結セット (コバルト文庫)』
氷室 冴子
集英社
5,079円(税込)
十二国記 文庫 1-11巻セット (講談社X文庫―ホワイトハート)
『十二国記 文庫 1-11巻セット (講談社X文庫―ホワイトハート)』
小野 不由美
講談社
キル・ゾーン1 ジャングル戦線異常あり (集英社コバルト文庫)
『キル・ゾーン1 ジャングル戦線異常あり (集英社コバルト文庫)』
須賀しのぶ
集英社
24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
『24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』
ダニエル・キイス
早川書房
1,080円(税込)
火星の人類学者──脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)
『火星の人類学者──脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)』
オリヴァー サックス
早川書房
アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)
『アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)』
ダニエル・キイス
早川書房
929円(税込)
白河夜船 (新潮文庫)
吉本 ばなな
新潮社
464円(税込)
蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)
『蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)』
山田 詠美
新潮社
562円(税込)

――中学生時代はいかがでしたか。

芦沢:ちょうど今でいうライトノベルのレーベルがいろいろ出ていたと思うんです。コバルト文庫とか、講談社X文庫ホワイトハートとか、いろんな潮流があって、すごく楽しくて。コバルト文庫にハマったきっかけは氷室冴子さんの『なんて素敵にジャパネスク』でした。平安時代の16歳のお姫様が、結婚問題で大騒ぎしたり、政治陰謀事件を解決したり。設定が古典や歴史の勉強で知るような時代なのに、こんなに面白くていいんだと感動しました。「こんな顔も知らない男と結婚してられるか」みたいな、当時の風俗にしっかり則った上で、等身大の女の子を自由に動かしていて。
そこからそうしたレーベルのものを片っ端から読んでいきました。特に衝撃を受けたのが、小野不由美さんの『十二国記』シリーズ、須賀しのぶさんの『キル・ゾーン』シリーズ、榎木洋子さんの『龍と魔法使い』シリーズ。当時は「少女小説」とひとくくりにされる中でもかなり幅広い作風の作品が刊行されていましたが、これらはその中でもずば抜けて「容赦がなかった」。死や別離といった喪失がぼかすことなく描かれていて、そこに直面する登場人物たちの葛藤や決断に、本を閉じた後もなかなか現実世界に戻ってこられないほど気持ちを揺さぶられました。自分が悩み、迷い、何かを信じ、時に何かを間違えて後悔したりするように、自分以外の他者もまた同じように悩み、迷い、信じ、後悔したりするのだと理解したのも、この頃の読書体験があったからです。誰もが認める正義があり、わかりやすい悪があるわけではないということも知りました。後に大学で史学科に進んだのも、明らかにこれらの作品の影響で、そう考えるとこの頃これらの本を読んでいなければ人生が全然変わっていたなと思います。

――そういう「発見」は友達と共有したりしましたか。

芦沢:私、実は中高時代、友達と読書について共有したことがほとんどなかったんですよ。小学生の時に星新一を読んでいたら「すごい字がちっちゃいのばっかり読んでてヘンなの」みたいなことを言われて馬鹿にされたのが悔しくて。自分が好きなものを馬鹿にされるのがすごく嫌だったんです。「私の好きな世界を馬鹿にされるくらいだったら誰にも言わない」と思って、それからは誰にも言わなかったんですね。だから中高時代、私が本を読んでいるって、ほとんど知られていなかったと思います。実際、「ずっと部活ばかりやっている、運動系の人に見えていたから作家になるなんて驚いた」と後に何人にも言われました。作家になってからインタビューなどで「須賀しのぶさんが好きだった」とか答えているのを読んだ当時の友達から「私も好きだったよ!」と連絡をもらったりして、「あ、みんな好きだったんじゃん」と知ったり。今考えれば、当時、言っても誰も馬鹿にしなかったと思うんですけれどね。私も幼かったんで、好きなものはもう傷つけさせないみたいなバリアをはってしまっていたんです。
でも本は読みたくて、いつも鞄の中に2~3冊の本を入れていて、通学電車で読んでいました。朝、電車の中で読んでいたら面白すぎてやめられなくて、駅に着いてもホームで読み続けて2限に遅刻するくらいの時間まで読んで、読み終えたら学校に行かずに図書館に行っちゃうんですね。で、返してまた借りて。その間って学校のある時間だから、同級生は誰も来ないじゃないですか。だからのびのびと好きなものを探せたんです。あ行の棚からわ行の棚まで全部見て、1時間くらい図書館にいるので学校はさらに遅刻するわけですけれど。学校のある千代田区の図書館では一度に10冊までしか借りられないから、地元の葛飾区の図書館でもまた別に借りて、毎週返しては借りる、というのを繰り返していました。土日も予定がなければ3冊くらい読んでまた図書館に入りびたり、みたいなこともやっていましたね。いちばん多い年で一年に1000冊くらい読んでいました。当時はお金がなくてそこまで本が買えなかったので、図書館は本当にありがたい存在でした。あの頃の蓄積があったから今があるというのは絶対なので。

――それを中高時代ずっと?

芦沢:特に高校生になってからですね。中学時代は2つ部活を掛け持ちして、毎日ぎっしり予定を入れていたのですが、高校では部活が1つになったので時間ができて。

――それでも年間1000冊とか、よく読めましたね。

芦沢:通学が片道1時間だったのと、あとは遅刻しまくっていたので(笑)。まずは図書館のヤングアダルトコーナーにあった文庫を読み漁って、そこから好きな人を作家読みして。で、引き続き、ノンフィクションも好きだったので、心理学のコーナーの面白そうな本も読みました。多重人格というか、解離性同一性障害ってなんだろうと思って『24人のビリー・ミリガン』などの本を20冊くらい読んだり、「サイコパスってなんだろう」とか「発達障害ってなに」とか思って読んだり。他にはオリヴァー・サックスの『火星の人類学者』も読みました。棚に並んでいて面白そうなものを見つけたらとにかく借りて読んで、その本の参考文献に載っているものも探して読む感じでしたね。

――『24人のビリー・ミリガン』のダニエル・キイスとか、児童心理学者のトリイ・ヘイデンとかの本は一時期ベストセラーになっていましたよね。

芦沢:ああ、そうですね、ダニエル・キイスはそこから小説の『アルジャーノンに花束を』を読んで、活字で書くってこういう面白さがあるんだなと思って。

――邦訳だと、最初はひらがなが多い文章が、主人公の脳の発達にあわせてだんだん漢字も増えて内容も知的になっていって...という。

芦沢:活字ならではの面白さに感動しました。
その一方で、山田詠美さんや吉本ばななさんを読みだしたのもこの頃で、ドハマりしました。そういう本があったから、私、あの時期を生き残れたなというか。別にいじめられていたとかいうわけではないんですけれど、何か、ずーっと息苦しさみたいなものがあって。たぶん、それくらい本が好きだったのに誰にも本を読んでいるって言えなかったのもあったんですよね。あと、中高一貫の進学校だったのですが、私はまぐれで合格して入ってしまったようなところがあったので、授業についていけないというのもありました。同級生が先生に対してしている質問自体が理解できなかったり。私は小学校時代にピアノの伴奏を任されたりして自分ではそこそこうまいと思っていたんですけれど中学校に入ったら「月光」を中一で弾いちゃうような人が何人もいて。お嬢様も多くて、声楽の先生について勉強している子がいたり、作文コンクールがあると文部科学大臣賞みたいなのを獲っちゃうような子がいたんです。中一で「あ、私って凡人」と、自分が何者でもなかったことを思い知らされて、自分をどう受け止めたらいいのか分からなくてぐるぐるしていた時に吉本ばななさんの『白河夜船』を読んだのかな、あれは悲しみ方を教えてもらいました。

――親友が死んでしまった後の話ですよね。

芦沢:すごく悲しいことが起きてしまった時に悲しみに浸りまくる話なので「ああ、こういう浸り方があるのか」と思えたんです。こうやって沈み込んで何もしないで鬱々としていてもいいんだ、みたいな。悲しんではいけないとか、早く復活しなきゃいけないと思っていたけれど、そうじゃなくていいんだ、って。悲しいは悲しいままでよくて、それをそのまま受け止めればいいみたいなことを教わりました。
山田詠美さんの本にはすごく格好いい人がたくさん出てきて、生きる姿勢を教わった気がします。たとえばいじめられていても、いかにして自分を持ち、誰に何を言われようといかにブレないで生きていくかが描かれていたりとか。

――『風葬の教室』とかですか。

芦沢:そうです、『風葬の教室』や『蝶々の纏足』にすごく救われました。『放課後の音符(キイノート)』とか『ラビット病』とかにも。未知の世界があったんですよね。「私が見ているのは本当に小さな世界でしかなくて、その外のどこかには全然私の知らないキラキラした世界があるんだ」「だったら、人生絶対にこれからのほうが楽しいだろう」って思わせてくれたというか。自分が今、辛くてもいいんだと思えたし、未来への憧れみたいなものがいっぱい持てたんです。つらい時も踏ん張れたのは、ああいう読書があったからだなと思いますね。吉本さんも山田さんも当時出ていたものは全部読みましたね。この作家が好きとなると、全部読むタイプなので。
学校では、なぜ女子校でこれが流行るのか、と思うような漫画がすごく流行りました。『リングにかけろ』とか『聖闘士星矢』とか、『ARMS』とか『スプリガン』とか。それと、『生徒諸君!』のような昔の漫画を読むのが格好いいという雰囲気もあって、かなり幅広いジャンルに触れられたのも今考えれば贅沢でしたね。

  • 放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)

    『放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)』
    山田 詠美
    新潮社
    497円(税込)

  • ラビット病 (新潮文庫)

    『ラビット病 (新潮文庫)』
    山田 詠美
    新潮社
    497円(税込)

  • リングにかけろ1 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

    『リングにかけろ1 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)』
    車田正美
    集英社

  • 生徒諸君!(1) (デザートコミックス)

    『生徒諸君!(1) (デザートコミックス)』
    庄司陽子
    講談社

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