もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。
第9回:穂村弘さん
- 『幻』だらけ
- <プロフィール> 歌人。1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌の他に詩、評論、エッセイ、絵本翻訳などを手がける。著書に『ラインマーカーズ』『世界音痴』『本当はちがうんだ日記』『絶叫委員会』『ぼくの宝物絵本』などがある。2008年に『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞、「楽しい一日」で第44回短歌研究賞、石井陽子とのコラボレーション「『火よ、さわれるの』」でArsElectronica InteractiveArt部門Honorary Mentionを受賞。
その日、私は編集者との打ち合わせを終えて、お茶を飲んでいた。
「これから、好きな本を3万円分買って貰う仕事なんですよ」
きかれてもいないのに、つい口にしてしまう。嬉しくて自慢したいのだ。ここのところ、メールなどでも近況報告のように皆に云いまくっている。
「えっ、そんな仕事があるんですか」
「ええ」
「いいですねえ」
「いいでしょう」
「何時からですか」
「16時です」
「え、今16時ですよ」
「ええっ」
汗が噴き出す。嘘。ほんとだ。ばたばたと店を飛び出して挨拶を交わしてタクシーに飛び乗って数百メートル移動して車から転げ出た。歩道橋を駆け上がって駆け下りる。さらにダッシュして16時11分、青山ブックセンター本店に到着。担当の浜本さんは入り口に仁王立ちで待っていた。
「はあはあはあはあ、すみません」
「そんなに慌てなくてもいいのに」
浜本さんは優しかった。すみません。遅刻したから3万円は自腹でお願いします、とか云われなくてよかった。
穂村弘さんが図書カードで購入した本
著書 | 著者/出版社 | 価格(税込) |
---|---|---|
『絵本』 | 谷川俊太郎著、ウィリアム・I・エリオット、川村和夫訳/澪標 | ¥1,575 |
『海と灯台の本』 | V・マヤコフスキー文、B・ポクロフスキー絵、松谷さやか訳/新教出版社 | ¥1,995 |
『コドモノクニ名作選 大正・昭和のトップアーティスト100人が贈るワンダーランド!』 | アシェット婦人画報社 | ¥4,725 |
『小林かいちの世界 まぼろしの京都アール・デコ』 | 山田俊幸、永山多貴子編/国書刊行会 | ¥2,940 |
『秘密のスクールデイズ 学校というフェティッシュ』 | 岩田恵、望月学英/発行:アトリエサード/発売:書苑新社 | ¥1,500 |
『吉岡実句集 奴草』 | 吉岡実/書肆山田 | ¥2,940 |
『びっくり館の殺人』 | 綾辻行人/講談社文庫 | ¥580 |
『Weniger, aber besser(Less, but be tter)』 | Dieter Rams/Klatt, Jo | ¥3,922 |
『NON PERDERE IL FILO』 | William Wondriska/Corraini | ¥3,255 |
『TOKYO』 | Takashi Homma/Aperture | ¥5,292 |
『喧嘩商売 22』 | 木多康昭/講談社 | ¥559 |
『テルマエ・ロマエ 1』 | ヤマザキマリ/発売:エンターブレイン/発行:角川書店 | ¥714 | 合計 12冊 購入総額 ¥29,997 |
それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。