もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。
第6回:椎名誠さん
- この企画毎月連載にしてもらいたいなあ
- <プロフィール>1944(昭和19)年、東京生れ。
作家、「本の雑誌」編集長。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー、『アド・バード』で日本SF大賞受賞。『わしらは怪しい 探検隊』シリーズなどの紀行エッセイ、『哀愁の町に霧が降るのだ』や『岳物語』『大きな約束』などの自伝的小説、また『ONCE UPON A TIME』など写真家としても活躍。
3万円を渡されて本を自由に買っていい──という、なんとも誘惑的かつ有意義的かつやぶれかぶれ的な不定期シリーズを本誌がやっているのは知っていたが、まさかいわゆるひとつの当事者であるぼくのところにその役がまわってくるとは思いもよらなかった。3万円も出してくれるのか! 大丈夫なのか、本の雑誌! 創刊号から本誌の編集長をやってきてこんなに驚いたことはない。ろうそくが燃え尽きるとき一瞬ピカリと炎の色がはじけるというが、ついにそういうときが来たのだろうか。かずかずの?的期待と不安を持って、浜本発行人と池袋のジュンク堂書店にむかったのであった。
こういう本の買い方は、通常の本の買い方と明らかにココロガマエが違う。まずひとつはココロの枠がぐんと太っ腹にひろがっている。何を買ってもいいのである。普段なら多少迷うものも即座に買ってしまえる驚くべき勇気と早い決断力というものが生じてくる。それがつまらなくても、まあいいやという鷹揚かつ太っ腹な態度になる。これが3000円だと相当な吟味、逡巡、葛藤などとのタタカイがあり、決めるまでにくたくたになる可能性がある。とはいえこれが30 万円になると1日では無理だ。7日間通わなければならなくなる。原稿が書けなくなる。出版界の今の現状が見えてくる。30万円も買ってなどいられない。その7日間のあいだに30万円分くらい書かなければならないだろうという悪夢のような超常的経済空間に脳髄が震える。そういう意味で3万円というのは、心理的にいっても体力的にいってもまことにすぐれた金額である。
椎名誠さんが図書カードで購入した本
著書 | 著者/出版社 | 価格(税込) |
---|---|---|
『リヤカーマン アンデスを越える』 | 永瀬忠志/日本経済新聞出版社 | ¥1,575 |
『アマゾンの巨魚釣り』 | 醍醐麻沙夫/つり人ノベルズ | ¥997 |
『東ヒマラヤ探検史』 | 金子民雄/連合出版 | ¥2,242 |
『黄河源流からロプ湖へ』 | プルジェワルスキー著、加藤九祚・中野好之訳/白水社 | ¥4,200 |
『世界の不思議な家を訪ねて』 | 小松義夫/角川oneテーマ21 | ¥970 |
『海のレゾナンス』 | 大瀧健一/舵社 | ¥1,799 |
『文明の中の水』 | 湯浅赳男/新評論 | ¥3,465 |
『水と文化』 | 秋道智彌・小松和彦・中村康夫編/勉誠出版 | ¥3,150 |
『追跡! 私の「ごみ」』 | エリザベス・ロイト著、酒井泰介訳/日本放送出版協会 | ¥1,890 |
『未来をひらく 海洋温度差発電』 | 上原春男/サンマーク出版 | ¥1,575 |
『臓単 語源から覚える解剖学英単語集[内臓編]』 | 河合良訓監修、原島広至 文・イラスト/エヌ・ティー・エス | ¥2,730 |
『肉単 語源から覚える解剖学英単語集[筋肉編]』 | 河合良訓監修、原島広至 文・イラスト/エヌ・ティー・エス | ¥2,730 |
『脳単 語源から覚える解剖学英単語集[脳・神経編]』 | 河合良訓監修、原島広至 文・イラスト/エヌ・ティー・エス | ¥2,730 |
『骨単 語源から覚える解剖学英単語集[骨編]』 | 河合良訓監修、原島広至 文・イラスト/エヌ・ティー・エス | ¥2,730 |
『スターメイカー』 | オラフ・ステープルドン著、浜口稔訳/国書刊行会 | ¥2,730 |
『釣り人の「マジで死ぬかと思った」体験談』 | つり人社出版部編/つり人社 | ¥945 |
『水辺の怪談最恐伝説 釣り人は見た』 | つり人社書籍編集部編/つり人社 | ¥945 |
合計 17冊 購入総額 ¥37,403(超過分は自腹) |
それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。