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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

第49回:武田砂鉄さん

隅々まで歩いてお買い物
<プロフィール> 武田砂鉄(たけだ・さてつ)
ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社で主に時事問題・ノンフィクション本の編集に携わり、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論――テレビの中のわだかまり』(青弓社)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋)、『日本の気配』(晶文社)など。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。

 今月の図書カード3万円お買い物コーナーは武田砂鉄氏が登場! オリンピックに「戦後」本、ヘヴィメタルの歌詞世界に台湾作家の日本旅行記等々、店内を端から端まで歩いて買った18冊はこれだ!
(平成31年2月5日 於東京堂書店神田神保町店)

 隔週で出ているラジオ番組の忘年会では、実にありきたりなプレゼント抽選会があるのだが、こういうものは趣向を凝らす必要なんてないわけで、現金や商品券や家電やペアチケットが結構な確率で当たるのが楽しい。出演者が出品する慣例になっており、昨年末の忘年会で、自分は「図書カード3万円」を出品しておいた。存分に本を読んでください、というシンプルな思いである。しかし、自分で出しておきながら、いいなあ、3万円もあれば本がだいぶ買えるな、と羨んでいたら、年が明け、本の雑誌編集部から「砂鉄さん、図書カード3万円分の本を買いませんか」とのメールが来たのだから飛び上がる。編集者Tさんは、毎年末に開かれる速水健朗さん×おぐらりゅうじさんが一年間の出来事を振り返るイベントのコーディネートもしており(何年も連続でゲスト出演しているのだ)、このイベントの集合時間に必ず遅れてくる二人よりも、比較的時間通りにやって来る自分を見つけては、褒めてくださる。今回はもっと具体的に褒めるべく、このような喜ばしい企画に声をかけてくれたのだろうか。
 東京堂書店神田神保町店は、書評する本を探しに定期的に出向いている書店だ。極めて感覚的だが、「この本どうですか!!!」ではなく、「この本、どうでしょう」と静かに語りかけてくる佇まいが好きで、本屋に行って、本を選ぶ、というシンプルな行為がとても丁寧に守られている気がする。早速、店内を物色し始めると、この恒例企画を編集するのは初めてだというTさんが、後ろからコソコソとついてくる。かつて、友人女性が駅前のスーパーで買い物をしていたら、同じ最寄駅の上司が後ろから覗き込んできて、「おや、今夜はお肉ですか?」と聞かれて悪寒がした、とのエピソードを思い出す。悪寒はしていないが、「あ、ついてこなくて大丈夫ですよ」と告げておく。「この本を買う」ならまだしも、「この本を買おうとしてやめる」と決断する瞬間って、なんかものすごくプライベートだと思う。この記事には、買った本のリストが載っているはずだが、買おうとして買わなかった本が10冊はある。それは言えないし、見られたくない。Tさんが距離をとってくれたのを確認して、店内を隈なく回り始める。

武田砂鉄さんが図書カードで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『みすず』2019年1・2月合併号 みすず書房 ¥324
『ベストセラーはもういらない ニューヨーク生まれ 返本ゼロの出版社』 秦隆司/ボイジャー ¥2,700
『夢も見ずに眠った。』 絲山秋子/河出書房新社 ¥1,890
『たのしい暮しの断片』 金井美恵子文、金井久美子絵/平凡社 ¥2,700
『月』 辺見庸/KADOKAWA ¥1,836
『在宅無限大 訪問看護師がみた生と死』 村上靖彦/医学書院 ¥2,160
『見知らぬものと出会う ファースト・コンタクトの相互行為論』 木村大治/東京大学出版会 ¥3,024
『段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル』 島津冬樹文・絵/柏書房 ¥1,512
『リベラルを潰せ 世界を覆う保守ネットワークの正体』 金子夏樹/新潮新書 ¥864
『平成史講義』 吉見俊哉編/ちくま新書 ¥972
『やっぱりいらない東京オリンピック』 小笠原博毅、山本敦久/岩波ブックレット ¥562
『一九六四年東京オリンピックは何を生んだのか』 石坂友司、松林秀樹編著/青弓社 ¥3,024
『[増補]論壇の戦後史』 奥武則/平凡社ライブラリー ¥1,404
『イラスト・ルポの時代』 小林泰彦/ヤマケイ文庫 ¥972
『不敗のドキュメンタリー 水俣を撮りつづけて』 土本典昭/岩波現代文庫 ¥1,426
『意味も知らずにヘヴィメタルを叫ぶな!』 川嶋未来/リットーミュージック ¥1,728
『我的日本 台湾作家が旅した日本』 呉佩珍、白水紀子、山口守編訳/白水社 ¥2,052
『東西書肆街考』 脇村義太郎/岩波新書 ¥907
合計 18冊 ¥30,057

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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