もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。
第4回:三浦しをんさん
- 戦争の記憶を伝えるノンフィクションから少女漫画まで
- <プロフィール>1976年、東京生まれ。
早稲田大学卒業。2000年、『格闘する者に○』(草思社)でデビュー。2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で第135回直木賞受賞。近作に『光』(集英社)、『神去なあなあ日常』(徳間書店)、『星間商事株式会社社史編纂室』(筑摩書房)などがある。エッセイも人気があり、『悶絶スパイラル』『ビロウな話で恐縮です日記』(ともに太田出版)など多数。最新作は『まほろ駅前番外地』(文藝春秋)。最新情報ならびにブログは、http://www.boiledeggs.com/
3万円で好きな本を買っていいという、夢のようなこの企画。バチが当たるんじゃないかと思って、かえって緊張しました。でも、ジュンク堂書店新宿店さんで、並んだ書棚を見たら、もう夢中。時間を忘れ、読みたかった本、目にとまった本を購入しました。
思いがけず、戦争の本が多くなりました。私の祖父は、召集され、兵隊として旧満州に出征していたそうです。私が知る祖父は、のどかな村で自由奔放に生きている姿のみなのですが、戦争体験は相当つらく、本人のなかに深く刻印されていたようです。祖父は自身の体験を、祖母以外には語ることはなかったのですが......。
祖父が生きて戦争から戻らなかったら、私が生まれることもなかった。しかし終生、ほとんどだれともわかちあえぬ記憶を祖父は抱いていたのだと思うと、戦争とはいったいなんなのか、考えずにはいられません。唯一、祖父の話を聞いた祖母も、先年亡くなりました。祖母が元気だった最後の年、私は村の橋の欄干に座り、祖母とおしゃべりしました。なんの加減でか、「日本がまた、戦争するようなことはあるだろうか」と尋ねましたところ、祖母は即座に、「そうならないようにせねばあかん」と言いました。「ならない、とも思っている。当時といまとでは、教育がちがう。ええか、人間にとってなにより大切なのは、教育です」と。
祖母の言葉は、重く響きました。大切なのは、己れを知り、世界を知ること。そのために有効な手段のひとつが、読書であるのはまちがいないところです。
三浦しをんさんが図書カードで購入した本
著書 | 著者/出版社 | 価格(税込) |
---|---|---|
『昭和二十年夏、僕は兵士だった』 | 梯久美子/角川書店 | ¥1,785 |
『康子十九歳 戦禍の日記』 | 門田隆将/文藝春秋 | ¥1,500 |
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』 | 加藤陽子/朝日出版社 | ¥1,785 |
『第二次世界大戦紳士録』 | ホリエカニコ/ホビージャパン | ¥1,575 |
『古地図と古写真でよみがえる 図説 城下町 江戸』 | 浅野伸子・菅井靖雄著、平井聖監修/学習研究社 | ¥1,470 |
『江戸屋敷三〇〇藩いまむかし 江戸と東京を散歩する』メディアユニオン編 | 発行有楽出版社/発売実業之日本社 | ¥1,575 |
『世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周』 | 奥泉光、いとうせいこう/集英社 | ¥1,680 |
『神器 軍艦「橿原」殺人事件』上下 | 奥泉光/新潮社 | ¥3,780 |
『ハイファに戻って 太陽の男たち』 | ガッサーン・カナファーニー著 黒田寿郎・奴田原睦明訳/河出書房新社 | ¥2,310 |
『日本のゲイ・エロティック・アート Vol.1ゲイ雑誌創生期の作家たち』 | 田亀源五郎編/ポット出版 | ¥4,725 |
『日本のゲイ・エロティック・アート Vol.2ゲイのファンタジーの時代的変遷』 | 田亀源五郎編/ポット出版 | ¥4,725 |
『クィア・ジャパン VOL.3 [特集]魅惑のブス』 | 伏見憲明編/勁草書房 | ¥1,785 |
『すゞしろ日記』 | 山口晃画/羽鳥書店 | ¥2,625 |
『さよならキャラバン』 | 草間さかえ/小学館 | ¥420 |
合計 14冊 購入総額 ¥31,740 |
それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。