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第4回:三浦しをんさん

戦争の記憶を伝えるノンフィクションから少女漫画まで
<プロフィール>1976年、東京生まれ。
早稲田大学卒業。2000年、『格闘する者に○』(草思社)でデビュー。2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で第135回直木賞受賞。近作に『光』(集英社)、『神去なあなあ日常』(徳間書店)、『星間商事株式会社社史編纂室』(筑摩書房)などがある。エッセイも人気があり、『悶絶スパイラル』『ビロウな話で恐縮です日記』(ともに太田出版)など多数。最新作は『まほろ駅前番外地』(文藝春秋)。最新情報ならびにブログは、http://www.boiledeggs.com/

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【1】『昭和二十年夏、僕は兵士だった』(角川書店)

『昭和二十年夏、僕は兵士だった』

 金子兜太、三國連太郎、水木しげるら、従軍経験のあるひとへのインタビュー集です。戦争体験のみならず、無数の死者の経験を抱えた彼らが、戦後をどう生きたのかまでをも視野に入れ、著者は誠実に話を聞いています。戦争は、生きのびたひと、直接戦争体験のない私たちに対しても、未だになんらかの影響を投げかけているのだと、改めて感じました。

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【2】『康子十九歳 戦禍の日記』(文藝春秋)

『康子十九歳 戦禍の日記』

 粟屋康子は、原爆で亡くなった広島市長、粟屋仙吉の娘です。康子自身も、被爆したお母さんの看病をするうちに原爆症になり、敗戦の年に亡くなりました。私は寡聞にして、市長一家のことをまるで知りませんでした。本書は、康子の日記をもとにしたノンフィクションです。日記には、康子のほのかな恋や戦争に対する考えが、端整かつ情熱的な文章で記されています。康子と親しく交流した人々の、戦後の生きかたについても丹念に取材してあるところに、著者の意志と、諦めずに希望を抱こうとする姿勢を感じます。

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【3】『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

 日本がなぜ「戦争」という選択肢に踏み切ってしまったのか、最新の研究成果を駆使して、日清戦争から太平洋戦争までを分析した本です。高校生向けの講義をもとにしているので、本格的な内容ながら、私のような門外漢にもわかりやすく整理されています。私はなんとなく、イケイケドンドンな軍部が独走して戦争に突入したものと単純に思っていたのですが、実際は当然ながら、世界情勢やさまざまな思惑の絡んだ、非常に複雑な要因があるのだと知りました。冷静かつ科学的に歴史を研究分析するのは、未来にとってこんなにも有意義な行いなのかと蒙が啓かれる思いです。

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【4】『第二次世界大戦紳士録』(朝日出版社)

『第二次世界大戦紳士録』

 ドイツ軍と日本軍の軍人について、漫画で紹介した本です。後世の評価や思想云々はとりあえず脇に置いて、あくまで人物像に焦点を絞ったところがおもしろいです。「どういうひとだったんだろう」という興味が湧かなければ、歴史や思想を調べてみようという気にもなれないですから。この本を読んで、山本五十六の特技が、「酒が飲めないのに宴会芸」だったと知り、胸がキュンとしたのでした。ちなみに趣味は、「会議で嫌いなやつが立って発言していたら、そっと椅子を引いておいて転ばせること」だったとか。どうなんだ、それは。まわりのひとも止めろよな、と思うけれど、なんだか憎めない感じです。

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【5】『古地図と古写真でよみがえる 図説 城下町 江戸』
【6】『江戸屋敷三〇〇藩いまむかし 江戸と東京を散歩する』(学習研究社)(実業之日本社)

『古地図と古写真でよみがえる 図説 城下町 江戸』 『江戸屋敷三〇〇藩いまむかし 江戸と東京を散歩する』

東京の都心部を歩いていると、「○○藩の上屋敷があった場所です」といった案内板を、たまに目にします。私は極度の方向音痴なのですが、藩邸の位置を把握することで、もしかして都心をより楽しく、迷子にならずに歩けるようになるのではないか?そんな無謀な考えが萌し、この本を買い求めました。さっそく眺めては、都心散策への意欲を高めています。

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【7】『世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周』(集英社)

『世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周』

 小説関係で、まず買ったのは、こちらです。前作にあたる『文芸漫談 笑うブンガク入門』も、爆笑とともに読んだのですが、続編が出ていたとは! 今回も、いとうせいこうさんと奥泉光さんのかけあいが楽しく、「そうか、『吾輩は猫であり、坊っちゃんは童貞である』のだなあ」と納得しました。未読の作品は読みたくなる、既読の作品は新たな読みどころに気づかされる。世界の名作についての、愉快で優れた評論です。

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【8】『神器 軍艦「橿原」殺人事件』上下巻(新潮社)

『神器 軍艦「橿原」殺人事件』上下巻

 なぜか買いそびれていた作品。「ひとさまのお金で買い物をする」という使命と緊張感があると、本棚を見る視界が広がり、迂闊にも見過ごしていたものを発見できるようです。これから読みます。楽しみです。

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【9】『ハイファに戻って 太陽の男たち』(河出書房新社)

『ハイファに戻って 太陽の男たち』

 この本は、『アラブ、祈りとしての文学』(岡真理、みすず書房)という評論を読んだときから、気になっていた作品です。アラブ文学を、私はほとんど読んでこなかったなあと思って。これから読みます。

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【10】『日本のゲイ・エロティック・アート Vol.1&2』(ポット出版)

『日本のゲイ・エロティック・アート Vol.1&2』 『日本のゲイ・エロティック・アート Vol.1&2』

 まだパラパラとしか眺めていませんが、図版が多数収録されていて、大変な労作だし、意義ある内容だと感じました。埋もれてはならぬものを埋もれさせない。「出版」や「本」というものの持つ力がみなぎっています。

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【11】『クィア・ジャパン VOL.3 [特集]魅惑のブス』(勁草書房)

『クィア・ジャパン VOL.3 [特集]魅惑のブス』

 こちらも、まだ通読はしていませんが、ちょっとつまみ読みしただけでも、刺激的で深い論考が満載の様子です。美醜ってなんなのでしょう。とりあえず、「ひとは見た目じゃないよ」という安易な慰めはよしてほしいと、腹黒いことばっかり考えている身としては思うのでした。本書は、安易な慰めとも、安易な美の礼賛とも無縁なようです。

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【12】『すゞしろ日記』(羽鳥書店)

『すゞしろ日記』

 画家の山口晃さんのエッセー漫画です。脱力なのか緻密な計算なのかわからぬ展開がやみつきになり、時間を忘れて読みふけってしまいました。

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【13】『さよならキャラバン』(小学館フラワーコミックスアルファ)

『さよならキャラバン』

 少女漫画です。独特な空気感と、ゆるやかにつながっていく構成の妙を堪能しました。

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 自腹じゃないのは申し訳ないと思いつつも、自分の欲望に忠実に、欲しい本をたくさん買ってしまいました。買うとすぐに読まずにはいられなくて、原稿の締め切りを破ってしまう始末。本があれば満足なんだなということと、本さえなければ真人間として働けたかもしれないのになということを、改めて痛感させられた企画でした。
 でも、とっても胸躍る時間を過ごせました。どうもありがとうございました!

(於 ジュンク堂書店新宿店)

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