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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

第21回:三上延さん

地獄の釜の底が抜けた日
<プロフィール> 三上延(みかみ えん)1971年神奈川県横浜市生まれ。10歳で藤沢市に転居。市立中学から鎌倉市の県立高校へ進学。藤沢市の中古レコード店で2年、古書店で3年アルバイト勤務。古書店での担当は絶版ビデオ、映画パンフレット、絶版文庫、古書マンガなど。2002年に『ダーク・バイオレッツ』(電撃文庫)でデビュー。『偽りのドラグーン』シリーズ、『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズなどのシリーズ物を30冊以上執筆。

 3、4歳の頃、私は母親に連れられて時々本屋へ行っていた。買い物のついでに立ち寄っていたのだと思うが、本好きの子供にとっては至福の時間だった。棚に並んでいる絵本を1冊選んで持っていくと、それを買ってもらえたのである。
 大人になった今でも、本の入った紙袋を抱えて帰るのが好きだ。店名の印刷されたがさがさした紙袋の匂いを嗅ぐと、実家に続く細い砂利道を妙にはっきりと思い出す。
 さてある日のこと、いつものようにふらふら絵本売り場に行きかけた私に向かって「今日は2冊選んできていいよ」と母親が声をかけてきた。ボーナスでもあったのか、単にたまたま機嫌が良かっただけかもしれないが、とにかく私は雷に打たれたように立ち竦んでしまった。
 なぜそんなに驚いたかというと、その瞬間まで私は本というものを「1冊ずつ」買わなければならないと思いこんでいたのである。そういえば大人たちは何冊もの本を抱えてレジに行っているではないか。別に一度に2冊、いや20冊買ったって構わないのだ。
 今思えば、地獄の釜の底が抜けた瞬間だった。だったらいくらでも欲しい本がある。もっと本を買わせろ。代金はいくらあっても足りない。もちろん3万円分だって一気に買ってやる──。
 というわけで2013年5月のある日、私は紀伊國屋書店の新宿本店に向かっていた。たぶん東京で最も馴染みのある店だ。今回の依頼でいかに楽しく本を買うか、行きの電車でつらつら作戦を練ったが、3万円というのは意外に難しい金額だと気付いた。
 専門書ばかり選ぶとすぐ3万円に達してしまう。マンガや文庫本に絞るのも手だが、せっかくだからなるべく色々なジャンルを買いたい。
 結局、専門書のフロアで高めの本を何冊か買った後、比較的単価の安い文芸書、文庫、マンガを買って帳尻を合わせるという作戦で行くことにした。普段、小説の仕事でもここまで手順を考えない。
 紀伊國屋書店前で本の雑誌の杉江さんと合流。「依頼を心待ちにしていました」と言うと、「この企画への依頼には皆さんすぐに返事を下さるんですよ」とのこと。確かに私もすぐに返信メールを送った。

三上延さんが図書カードで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『レイ・ハリ-ハウゼン大全』 トニー・ダルトン著、矢口誠訳/河出書房新社 ¥6,930
『マキノ雅弘の世界』 山田宏一/ワイズ出版 ¥1,680
『黒澤明の十字架』 指田文夫 /現代企画室 ¥1,995
『実録やくざ映画大全』 洋泉社mook ¥1,600
『XOXO: Hugs and Kisses』 James Jean /Chronicle Books Llc ¥1,044
『江戸社会史の研究』 竹内誠/弘文堂 ¥3,360
『コリーニ事件』 F・v・シーラッハ著、酒寄進一訳/東京創元社 ¥1,680
『濠端随筆』 入江相政/中公文庫 ¥1,500
『自伝的女流文壇史』 吉屋信子 /中公文庫 ¥1,400
『模倣の殺意』 中町信 /創元推理文庫 ¥777
『見えない日本の紳士たち』 G・グリーン著、高橋和久他訳 /ハヤカワepi文庫 ¥1,050
『魔界転生』上下 山田風太郎 /角川文庫 ¥1,560
『闇の国々』 B・ペータース作、F・スクイテン画、吉永真一、原正人訳 /小学館集英社プロダクション ¥4,200
『放課後の国』 西炯子 /小学館文庫 ¥680
『さよならソルシエ』1 穂積 /小学館 ¥450
『ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々』 増田こうすけ/集英社 ¥590
合計 17冊  購入総額 ¥30,496

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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