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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

第15回:角幡唯介さん

16冊42センチを一気買い!
<プロフィール> 1976年2月5日北海道芦別市生まれ。早稲田大学卒業後、新聞記者を経てノンフィクション作家・探検家。チベット・ツアンポー峡谷の探検記『空白の五マイル』(集英社)で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。近著にヒマラヤでの雪男捜索を描いた『雪男は向こうからやって来た』(同)がある。2011年はカナダ北極圏1600キロ冒険行を行い、「アグルーカの行方」と題し、すばる誌上で連載中。

 読書をすると、自分には永久に起きそうもない出来事を疑似体験できるし、他人の異質な思考や内面世界をのぞき込んで気持ちが悪くなったり、笑えたりする。また自分の世界観や人生哲学みたいなものが一変させられるという暴力的な体験も時には起こる。そういう効果を天秤で計ると、自分で同じことを経験するよりは、時間も手間もかからずはるかに経済的であることから、私は比較的本を買って読む方だと思う。
 ただ私の場合、自分で買った本のうち、実際に読めるのは半分ぐらいのものだろう。なにせ本屋に行けば絶対に欲しい本が現れるし、新聞の書評やアマゾンの検索でも次々に買いたくなって、他にこれといった趣味もないものだから、それらを次々に購入する。しかし一応仕事もあるし、読書以外の唯一の趣味である山登りにも行かなくてはならないので、買った本のすべてに目を通すことはできないのである。私はそんなにヒマではないのだ。だから最近では、絶対に読むぞ、と意気込んで本を買うのではなく、仮に今この本を買ったら、そのうち読む機会が訪れるかもしれないぐらいの気持ちで買うことにしている。本というのは人間と同じで一期一会の出会いが重要で、その場で買うのを控えたら永久に出会えない可能性が高く、しかも自分の人生を変えてしまう可能性すらあるから厄介だ。そういう機会を逃したらもったいないので、私は本屋で気になった本があれば、なるべく買うことにしている。
 といってもそんなに経済的に余裕があるわけでもないので、気になった本をすべて買うことはできない。本屋で何度も見開き、散々迷った挙句、購入を断念したものも無数にある。だから今回、図書カード3万円で好きな本を買って原稿にするという企画をいただいた時、真っ先に私は、今まで買おうと悩んで結局買わなかった本を選ぼうと思い立ち、それらをリストアップして手帳に書き留めておいた。都合のいいことにこの企画は、その本を買った理由について原稿にすればいいだけなので、買った本を実際に読まなくてもいいという。その結果リストアップされたのは、実際に読めるかどうか自信のない難解そうな本や、分厚い小説、ページ数の割には値段の高い本などが中心となった。

角幡唯介さんが図書カードで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『共喰い』 田中慎弥/集英社 ¥1,050
『道化師の蝶』 円城塔/講談社 ¥1,365
『世界文明史の試み』 山崎正和/中央公論新社 ¥3,360
『地の底のヤマ』 西村健/講談社 ¥2,625
『宿屋めぐり』 町田康/講談社 ¥1,995
『笛吹川』 深沢七郎/講談社文芸文庫 ¥1,470
『ジェノサイド』 高野和明/角川書店 ¥1,890
『写楽 閉じた国の幻』 島田荘司/新潮社 ¥2,625
『神々の沈黙』 J・ジェインズ、柴田裕之訳/紀伊國屋書店 ¥3,360
『塩の道』 宮本常一/講談社学術文庫 ¥840
『秘境ブータン』 中尾佐助/岩波現代文庫 ¥1,155
『原発ジプシー』 堀江邦夫/現代書館 ¥2,100
『逮捕されるまで』 市橋達也/幻冬舎 ¥1,365
『池袋チャイナタウン』 山下清海/洋泉社 ¥1,470
『虹の解体』 R・ドーキンス、福岡伸一訳/早川書房 ¥2,520
『森にかよう道』 内山節/新潮選書 ¥1,155
合計 16冊  購入総額 ¥30,345

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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