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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

江國香織さん:イメージ

第206回:江國香織さん読書家としても知られる江國香織さん。小さい頃から石井桃子さん訳の絵本に親しみ、妹さんと「お話つなぎ」という遊びをしていたけれど、その頃は小説家になることは考えていなかったとか。さらにはミステリ好きだったりと、意外な一面も。その膨大な読書量のなかから、お気に入りの本の一部と、読書生活の遍歴についておうかがいしました。

その7「本を読む場所、そして新作」(7/7)

彼女たちの場合は
『彼女たちの場合は』
江國 香織
集英社
1,944円(税込)
ホテル・ニューハンプシャー〈上〉 (新潮文庫)
『ホテル・ニューハンプシャー〈上〉 (新潮文庫)』
ジョン・アーヴィング
新潮社
767円(税込)

――普段、どんなところで読みますか。

江國:どこででも読むんですよ。だけど一番は、私、毎日朝起きて2時間お風呂に入るので、その間はずっと読んでます。それがたぶん、1日にまとめてする読書の量としては最長で、その他も、電車の中でも寝る前でも読んでいます。

――お風呂で読む時って、濡らさないにしても、本が湯気を吸ってふわっとなったりしませんか。

江國:私はカバーを外して読むんですが、ずっと持っている部分とか、本の下の部分が擦れたようになったりはしますね。でも私はそういうのは全然気にしなくて。カバーをかけてしまえば元通りだしね(笑)。ページを折るのも平気だし、うたたねしてザバッと落としてしまうこともありますけれど、ちゃんと拭いて、ちょっと波々になっちゃってもあまり気にしないです。でも1回、妹の六法全書のコンパクト版を借りてお風呂で読んでた時に、湯舟に落としてもないのにまったく閉じなくなっちゃって。妹が学生の頃だったんですけれど、しょうがないからもう1冊買って返したってことがあります。

――お風呂で六法全書を?

江國:法律が好きだったから。本当の六法全書じゃなくて、コンパクト版ですよ。その六法全書、サウナでも読んでいたんです。そっちが悪かったのかな。サウナに入ってその後お風呂の中で読んで、そうして出てみたら、本がすごいことに...。重石したりして何日か頑張ったんですけれど、全然直らなかった。

――そんなことが(笑)。ところで、書店で見つける意外に、本を選ぶのに参考にするものはありますか。書評とか。

江國:ありますね。私はあんまり新聞は読まないんですが、ファッション雑誌を読んでいて偶然見た書評とか、出版社から送っていただいた雑誌の書評で気になるものがあったら、ページをちぎって本屋さんに買いに行きます。でも、鞄にそのページを入れて何週間か経ってから本屋さんに行くと、もう絶対と言っていいくらい、無いの。それで注文するんですけれど、そういう時、書評で読んでなかったら私は本屋さんに行ってもこの本とは巡り合ってないんだなって思いますね。書評を眺めていて良かったと思う。

――小説の登場人物を考える時、その人がどんな本を読んでいるか考えることはありますか。新作『彼女たちの場合は』は、ニューヨークに住んでいる従姉妹同士、17歳の逸佳と14歳の礼那が「もっとアメリカを見なきゃ」といって旅に出ますが、礼那が本好きで、アーヴィングやミランダ・ジュライ、村上春樹や太宰治を読んでいますね。

江國:いつも書き始める前に、登場人物の性格設定をノートに書いておくんです。身長とか誕生日といった、小説に書かないような部分も含めて。礼那の場合、ニューヨークに5年住んでいるので、日本の現在の新刊はあまり読めていないと思いました。両親の本棚から読んでいるとすると、少し上の世代が読むようなものや古典、普遍的なものを多く読んでいるだろうなと思ったんですよね。そういうものを作った上で、たとえば、こいういう本を読んでいるならこういう子なんだろうな、と考えていくんですね。行先を決めていない旅に出るという時に、アーヴィングが好きならきっと『ホテル・ニューハンプシャー』の舞台に行ってみたくなるだろうな、とか。それが彼女たちが最初にニューイングランドに向かった理由のひとつでもありますね。

――行先も目的もなく旅立ち、ニューイングランドから、オハイオ、テネシー......と旅を続けていく。移動するごとに町の景色も人々の様子も、食べる料理も変わっていって、それがすごくリアルで。江國さんも実際にこのルートを辿ったことがあるのですか?

江國:行ったことのあるところもあれば、ないところもあります。映画を観てイメージがあった場所もあるし、写真集やガイドブックも見ましたね。そのなかで、小さな変化を拾いたいと思いました。それで海のほうへ行かせたり、山のほうへ行かせた部分もあります。ただ、今回は旅をするのが子供たちなので、お酒が飲めないし、グルメなことができなくて(笑)。いつもハンバーガーとフライドポテトやデリのサンドイッチだとつまらないので、せめてシーフードを食べようとか、せめてパンケーキを食べようとか、できるだけバリエーションを出すようにしました。

――そうだったのですか。もう、彼女たちと一緒に旅をしている気分になって、のめりこみました。いろんな出会いがあり、トラブルもあり、その一方で、彼女たちを案じる親の心情の変化も描かれる。少女たちのロードノベルを書こうと思ったのはどうしてですか。

江國:留学していた頃に、実際に女友達と2人で行先も決めずにアメリカを旅したことがあったんです。でも意気地なしなので、1週間くらいで戻ってしまって。その体験を「小説すばる」の当時の編集長に話したら「面白いから小説に書いてください」と言われたんです。もうひとつの理由は、自分の年齢が上がるにつれ、小説の登場人物たちの年齢もあがってきていて。なんとなく、釈然としなかったんですね。若い人が書けないと言われると悔しいので、書いてみたいと思っていました。それで、子供と大人の中間くらいの年齢の女の子2人の旅になりました。

――行先も目的もなく、長期間、気の向くままに旅してみたくなります。働いているとなかなか難しいですけれど。

江國:私も若い頃、そういう旅をしてみたかったし、ちょっとはしてみたわけですが、そんなにいろんなことができるだけの度胸もお金もなかった。今はお金はあっても時間がない。私の場合、旅先でも原稿は書けるので、やろうと思えばできるんですけれど、でも旅をするのってちょっとものを捨てる、見捨てることのような感じはして、今はその思い切りがつかない。うまくいかないものですね(笑)。

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