作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。
作家の読書道 第291回:砂村かいりさん小説投稿サイト「カクヨム」の第5回カクヨムコンの恋愛部門で、『炭酸水と犬』『アパートたまゆら』が特別賞をダブル受賞。二作とも書籍化されてデビューをはたした砂村かいりさん。恋愛小説に限らず、現代社会を生きる人々の葛藤や再生を丁寧に描く著者は、どんな本を読み、影響を受けてきたのか。愛読書について、たくさんの書名を挙げてくださいました。ご堪能あれ。
その5「本の貸し借りが盛んだった高校時代」 (5/9)

- 『潮騒 (新潮文庫)』
- 三島由紀夫
- 新潮社

- 『午後の曳航 (新潮文庫)』
- 三島由紀夫
- 新潮社

- 『十七歳だった! (集英社文庫)』
- 原田宗典
- 集英社

- 『スバラ式世界 (集英社文庫)』
- 原田宗典
- 集英社

- 『東京見聞録 (講談社文庫)』
- 原田宗典
- 講談社

- 『放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)』
- 山田詠美
- 新潮社
――高校は英語科に進まれたそうですね。
砂村:そうです。もう何年か前に廃止されてしまったんですけれど、公立高校の英語科に推薦入学で入りました。普通科の授業よりも英語に特化していて、ネイティブの先生による英語しか使われない授業があったり、全員に英語圏の名前が割り振られたりして。3年間クラス替えがなく、ほとんどが女子で男子は少数でした。高校はすごく楽しかったですね。アメリカの東海岸へ10日間の語学研修に行くプログラムもあり、ホストファミリーのもとで一週間過ごしたりして。中学までの閉塞的だった世界が開けて視野が大きく広がった高校時代だったなと思います。
――読書生活はいかがでしたか。
砂村:この頃、近代の作家、いわゆる文豪の作品を読み始めました。なかでも三島由紀夫にはまりました。最初に『潮騒』を読んだんですが、あれは三島にしてはレアな爽やかな作品ですよね。いろいろ読んでいくうちに、独特の美学や思想を貫いた人だったのだと理解しました。展開の鮮やかな『午後の曳航』が特にお気に入りです。あとは、星新一のショートショートをコンプリート目指してどんどん買っていたのもこの頃ですね。
現代作家では、原田宗典のエッセイにはまっていました。この頃ってスマホもなかったせいか、程度の差こそあれみんな本を読んでいて、クラスで本の貸し借りが盛んに行われていたんです。それで友人に借りた原田宗典の『十七歳だった!』というエッセイがめちゃくちゃおもしろくて、自分でも既刊を買うようになりました。『あはははは』とか『スバラ式世界』とか『東京見聞録』とか。本当に笑えるんですよね。思春期のモヤモヤだったり、恥ずかしい失敗だったりが、シュールな空気とねっとりした文体で語られていて。のちに原田マハがデビューした時に、「原田宗典の妹なのか」と知って衝撃を受けました。
山田詠美を読み始めたのもこの頃でした。『放課後の音符』と『僕は勉強ができない』は鉄板ですよね。文学と性描写が軽やかに溶け合わさっているというのは、やっぱり衝撃でした。都会の高校生ってこんな生活をしているのか、とか、こんなに奔放なのか、と想像をかきたてられもして。とにかく洒落ていて魅せられたし、思春期ならではの痛い失敗なんかで胸に突き刺さるエピソードがいっぱいありました。
この頃から、わりと容赦なく性描写を盛りこむ作家さんたちに触れ始めていたと思います。内田春菊は小説も漫画も読みました。やっぱり最初は『ファザーファッカー』を読んだのかな。『南くんの恋人』を読んだのはもっと後だったかもしれません。『あたしのこと憶えてる?』や『ファンダメンタル』も印象的です。やっぱり痛い話が多かったけれど、山田詠美作品と同じで、怖いもの知りたさのような気持ちで手を出していました。
それと、母か姉の趣味で家の本棚には歌集もあって、わたしもまんまと短歌が好きになりました。俵万智の『チョコレート革命』という歌集が出た時、表紙が板チョコのデザインだったこともあってジャケ買いしたクラスメイトもいて、俵万智がちょっとブームになったんです。ちょっとした手紙に短歌を添えたりして、文学が生活に溶けこんでいると実感できる時期がありました。
その頃は短歌を詠んでノートに書き溜めていました。高校3年の時の担任が国語の先生で、それを見てすごく褒めてくれて。その先生は文芸部の顧問で、文芸コンクールの短歌の部に出してみないかと声をかけてくれたんです。五首詠んだものを出したら県で第一席を獲って、表彰式に行ったりしたのが懐かしいです。そんな感じで、この頃は表現としては小説よりも短詩型文学に夢中で、将来小説家になるとは微塵も思っていませんでした。
――さきほど内田春菊さんの漫画の話もありましたが、高校時代は漫画も読めましたか。
砂村:結構読みました。それこそ漫画の貸し借りは教室内でも頻繁にありましたね。おすすめの漫画の文庫版全巻を紙袋にきっちりと詰めたやつを借りて、自転車のかごに積んでヒイヒイいいながら漕いだりして。幼児の頃にアニメでちょっと観ていた『キャッツ・アイ』を友達が貸してくれて、その後自分でも文庫版を大人買いしましたんですが、これは本当に衝撃的な終わり方をするんですよね。アニメ版とは全然違うんです。来生瞳は永遠の憧れです。
それと、高校時代にうすた京介にはまりました。『チクサクコール』や『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』、『武士沢レシーブ』とか。「マサルさん」のギャグはもう、岡田あーみんロスを埋めてくれるくらいおもしろかったですね。
――高校時代、部活はなにかされていましたか。
砂村:写真部でした。小学生の頃に祖母に買ってもらった「りぼん」に、水沢めぐみの『チャイム』という連載があったんですね。『姫ちゃんのリボン』のひとつ前の連載です。主人公が写真部に所属していて、一眼レフで撮るモノクロ写真が物語のモチーフになっていて。それで写真部に憧れたんですが、中学に写真部がなかったので、高校にあったら入ろうと決めていました。父からペンタックスの一眼を譲り受けて、モノクロのフィルムで撮影して、現像からプリントまで暗室で作業を行っていました。撮影旅行に行ったり、大会に臨んだり、貴重な経験と思い出がいっぱいです。

『ぼくは勉強ができない』
山田詠美
新潮社
『ファザーファッカー (文春文庫)』
内田春菊
文藝春秋
『南くんの恋人 (文春文庫)』
内田春菊
文藝春秋
『あたしのこと憶えてる? (中公文庫)』
内田春菊
中央公論新社
『ファンダメンタル 1』
内田春菊
電書バト
『チョコレート革命』
俵万智
河出書房新社
『CAT’S EYE 1巻 (ゼノンコミックス)』
北条司
コアミックス
『チクサクコール うすた京介短編集 (ジャンプコミックスDIGITAL)』
うすた京介
集英社
『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)』
うすた京介
集英社
『武士沢レシーブ (ジャンプコミックスDIGITAL)』
うすた京介
集英社
『チャイム 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)』
水沢めぐみ
集英社
『姫ちゃんのリボン 1 (集英社文庫(コミック版))』
水沢めぐみ
集英社
「作家の読書道」は「WEB本の雑誌」からコンテンツの提供を受けています。
