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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

上田岳弘さん:イメージ

第204回:上田岳弘さんデビュー作「太陽」の頃から、大きな時間の流れの中での人類の営みと、個々の人間の哀しみや郷愁を融合させた作品を発表し続け、『私の恋人』で三島由紀夫賞、そして今年『ニムロッド』で芥川賞を受賞した上田岳弘さん。5歳の頃から「本を書く人」になりたかった上田さんに影響を与えた本とは? 作家デビューを焦らなかった理由など、創作に対する姿勢も興味深いです。

その4「ミクロとマクロの視点」(4/6)

――IT会社を立ち上げる友人に声をかけられて参加して役員になられたのはおいくつの時でしたっけ。

上田:25歳の時です。大学時代の営業のバイトで知り合った友人と、学生時代から何回か一緒にやっていて、その時が3回目でした。前から彼は会社を設立すると僕に声をかけてくるんですよ。僕が大学を卒業して作家を目指して2年間応募生活をしていた頃は、飲みに誘われてもなかなか対応できなくて。で、1回小説書くのを休むと決めたので「飲みに行けるよ」と電話をしたら「また会社を立ち上げたから、今から迎えに行くよ」って言って迎えに来て、そのまま入社しました。それからなんだかんだいって15年という。

――そこまで上田さんに声をかけてくれるというのは、何かすごい見込まれて...。

上田:いや、別に就職しているわけでもないし、立場が自由そうだったからじゃないですか。「こいつだったら誘いに乗ってくるかな」っていう。それにキャラクターが正反対だからかもしれないですね。彼は東大の理系なんです。僕、文系だし。

――入社してからしばらくは、小説執筆や読書からは離れたわけですか。

上田:そうですね。朝9時から働き始め終電で帰る毎日で4、5年が過ぎました。それが落ち着いてきたのが31歳くらいの時。それでまた書き始め、新潮新人賞の最終選考に残り、滝口悠生に負け(笑)、落選。その2年後に「太陽」でデビューですね。

――執筆を再々開した時にはもう、今の作風だったのですか。

上田:そうですね、かなり、今の感じでした。

――その世界観はどのように熟成していったのかなと思うんです。宇宙とか世界といった空間の広がりだけでなく、悠久の時間も感じさせる作風ですよね。

上田:どうなんでしょうね。自然と興味のあるものがそっちだったんですよね。25歳くらいの時に「純文学ってこういう感じだろう」と書いた私小説風のが最終選考に残って以降、小説を書いていない時期も、自分がいつか書くだろうものは考えていたんですよね。それで、単純に自分のやりたいことを突き詰めていくと、大きなことを書くということだったんです。大きなことって、当時の純文学的にはなかなか認めづらい部分があったと思うんですけれども、やっぱりそこを突き詰めていきたい気持ちが強かった。30歳を過ぎたことで、受賞するしないはどうでもいいから、とりあえず書きたいものを書こうというふうに腹をくくれたというのはあったと思います。

――大きなことが、もともと好きだったという。

上田:なんか、幼児的な万能感ってあるじゃないですか。たとえば小学校5年生くらいの時に、ソフトボールで球拾いしながら「永久機関はどうやれば作れるのかな」みたいな茫漠とした妄想みたいなものを広げていくとか。今ないものを作りたいというのは、僕の「突飛なことを言わなきゃいけない」という面とリンクしているのかもしれないですけれど。そういう幼児的万能感とか、幼児的空想感が、いまだにちょっと残留している感じがあります。

――永久機関を妄想する小学5年生...。

上田:具体的なオブジェクトというよりも、その裏側にある仕組みが好きなんですよね。なぜこれがこういう形をしているのかなと考えてしまう。ミクロに見ていくと、なぜ水はこうなのか、なぜ沸騰するのか、とか。もちろん科学的に解明されていることもありますけれど、解明されていない部分について、なんでだろうと考えてしまうんです。
で、そういう目で見た場合、すごく小さなものとすごく大きなものって、わりと同じ仕組みで動いているんだな、というのがなんとなく分かるんですよ。それをミクロの側から表現すると、単にミクロな視線を持っている人だなって思われる。でもマクロ、ものすごく大きなところから表現すると、「こんなでかい発想どこから来たのか」って思われる。実は微視的に見ていたりするんですけれどね。
 今お話ししていて、僕の視点を表現するためには、そういう大きな建付けが必要かもしれないんだなと思いました。単に仕組みを知りたいだけなんだけれど、その仕組みをすごく大きなものに適用したことで、「太陽」っていう作品が成り立ちました、というような。ある意味、自分の視界の確かさを確かめるために、大きな建付けが必要なのかもしれないですね。

――うまい例えができませんが、量子のことを説明するために宇宙を語るとか、宇宙を語ることが量子を語ることにもなる、みたいなことというか。

上田:現象として見ると同じなんですよね。ただ、スケールが違うだけ。それを、小さなもののスケールで表現すると小さなものを書いているようになっちゃうけれど、スケールが大きなほうで表現すると、何か新しく見える。やりたいことがビビッドに伝わるんじゃないかなと仮定した気がしますね、言われてみれば。

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