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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

又吉直樹さん:イメージ

第211回:又吉直樹さんお笑い芸人として活躍する一方で読書家としても知られ、発表した小説『火花』で芥川賞も受賞した又吉直樹さん。著作『第2図書係補佐』や新書『夜を乗り越える』でもその読書遍歴や愛読書について語っていますが、改めて幼少の頃からの読書の記憶を辿っていただくと、又吉さんならではの読み方や考察が見えてきて……。

その4「魅力的な笑いのある小説は」(4/7)

夫婦善哉 正続 他十二篇 (岩波文庫)
『夫婦善哉 正続 他十二篇 (岩波文庫)』
織田 作之助
岩波書店
864円(税込)
痴人の愛 (新潮文庫)
『痴人の愛 (新潮文庫)』
谷崎 潤一郎
新潮社
737円(税込)
変身 (角川文庫)
『変身 (角川文庫)』
フランツ カフカ
角川書店
7,980円(税込)

――小説でも、本当に笑えるか笑えないかは又吉さんにとって大事な要素なんですね。

又吉:大事ですね。笑かそうとしてなくてもいいんです。そのまんまの状態が書かれていたら普通に笑えるはずなんです。普通の状態って笑えますから。でも意図的にテクニカルに笑いを取りにいこうとするとなかなか笑いづらい、というのはありますね。

――他に笑いの感覚があると思ったのはどの作家になりますか。

又吉:織田作之助は語りが面白いんですけれど、大阪のお笑いみたいなところじゃなくて。たとえば『夫婦善哉』の、夫婦がいろんなことをそれぞれに考えて話が進んで、最後に二人で並んでふたつずつの善哉を食べている場面は、あれは僕は自分の状態によって泣くこともできるし、笑うこともできる。わりと人間のそのまんまの姿やなって。僕も両親を見ていると、この二人はもともと他人なのになんで一緒におるんやろうと思う。でも二人揃って飯食っているのが普通という。言葉にせんでも二人が善哉食っているという描写だけで、なんか分かってしまう。これは意味があることなんやって。それが、僕は泣けるし笑えるんです。そういうのをやってくれたら、僕は楽しめるんです。
 谷崎潤一郎にも面白いところがいっぱいありますね。『痴人の愛』のラストシーンはあまりにも有名ですけれど、他にも、ナオミが同世代の男友達とよう遊んでいて、主人公が思ってたよりも手に負えんということを感じ始めた時に、若者に「あいつ俺たちの間でなんて呼ばれているか知ってる?」みたいなことを言われて、ぐっとなる。谷崎は具体的には書かないけれど、たぶん卑猥な言葉が想像できる、すごく嫌なシーンなんですよ。そこは主人公の顔を想像すると、すごく可哀そうやなとも思うけれど、面白いですね。
 カフカの『変身』もめっちゃウケましたね。ひとつめのポイントは、グレゴール・ザムザがある朝起きたら虫になっていて、それを自覚した後に「わ、会社どうしよう」ってなって、そこから会社の愚痴みたいなのを考えているところ。そんなこというてる場合ちゃうやん。あれはむちゃくちゃ笑いやなと思います。そこから起こることも、家族の反応も含めて、ものすごいコメディですけれど、巻末の解説に、当時の社会の、非日常的なことを普通に受け入れてしまう部分が描かれているとあって、笑いながら読んだのにそうなんかと思いました。でもやっぱり笑う小説だと思うんです。
 ドストエフスキーの『罪と罰』は語りが全部面白いですね。なんで面白いのかな、あれ。すっごく笑っちゃってますね。急にひどいことを言ったりするじゃないですか。書かれている内容とか、全体を読んでみて感じることもありますけれど、でも何より、あの語りが面白いですね。

――海外小説もいろいろと読まれていたのですね。

又吉:最初は、中学生くらいの時に友達とか友達のお母さんに薦められて読みました。でもその時は、たとえば主人公の女性に感情移入して読んでいて、性的な描写があると「え、なんで」と思ってしまっていたんですよ。好きな人ができて、二人が結ばれたとか、そういう営みが書かれていると、そこは語んなよ、そこは見たくなかったよ、と。男子校やったのも影響していると思うんですけれど。友達が「実はこないだ彼女とこうこうこうで」って具体的に語ってきたら、「嫌な奴やから、こいつとはもう喋らんとこ」って思うように、小説の主人公でいうと、「ああ、こいつの繊細な部分に共感しながら読み進めてきたのに、なんでそのこと語るのに一切抵抗がないんやろ、変な奴やな」って思ってしまっていたんですね。それがある種の悪趣味なサービスに思えていましたが、でも後々、海外小説も読むようになりましたね。『罪と罰』の後に読んだゲーテの『若きウェルテルの悩み』も好きでした。

  • 罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

    『罪と罰〈上〉 (新潮文庫)』
    ドストエフスキー
    新潮社
    825円(税込)

  • 若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

    『若きウェルテルの悩み (岩波文庫)』
    ゲーテ
    岩波書店
    814円(税込)

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