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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

瀧羽麻子さん:イメージ

第199回:瀧羽麻子さん

その3「作家コンプリート読み」(3/6)

京都を舞台にした「左京区」シリーズや、今年刊行した話題作『ありえないほどうるさいオルゴール店』など、毎回さまざまな作風を見せてくれる作家、瀧羽麻子さん。実は小学生の頃は授業中でも読書するほど本の虫だったとか。大人になるにつれ、読む本の傾向や感じ方はどのように変わっていったのでしょうか。デビューの経緯なども合わせておうかがいしました。

ミーナの行進 (中公文庫)
『ミーナの行進 (中公文庫)』
小川 洋子
中央公論新社
741円(税込)
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
村上 春樹
新潮社
2,592円(税込)
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
『ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)』
村上 春樹
新潮社
680円(税込)
レキシントンの幽霊 (文春文庫)
『レキシントンの幽霊 (文春文庫)』
村上 春樹
文藝春秋
497円(税込)

――大学は京都ですよね。大学時代はどうでしたか。

瀧羽:他のことに興味が向いて、読書する時間はそれほど多くなかったと思います。ただ大学の友達には結構カルチャー通が多くて、映画に詳しい子とか、美術に詳しい子とか、音楽に詳しい子とか、もちろん本好きもいて、彼らに薦められるままいろいろ読みました。オースターとかカポーティとかヴィアンとか、かっこいいなあと思いましたね。それまでの友達は、本は普通に読むけどめちゃくちゃ読書家というわけでもなかったので、好きな本を教えあうような関係ははじめてでした。
大学の図書館は専門書ばかりで、小説が少なくてがっかりしましたね。めぼしいのは全集くらい。その中でも比較的新しいのが、村上春樹全集でした。友達から「村上春樹くらい読んでいないと駄目だ」みたいなことも言われたので、そういうものかと読んでみて、素直にすごいなあと思いました。たまたま出身地が近くて、初期の作品には実家の周辺も出てきたりしたのもあって、予想していたよりは入りやすかったです。でも、年を追うごとに話がどんどん難解になって理解が追いつかなくなってきて、友達が熱く語るのをおとなしく聞いていました。
それから、大御所の女性作家の作品は、変わらず読み続けていました。高校時代から読んでいた江國さんや山田詠美さんに加えて、山本文緒さん、角田光代さん、小川洋子さんも好きでした。今でも新刊が出たら必ず読みます。

――それこそ、小川さんは芦屋の方ですよね。

瀧羽:『ミーナの行進』はまさに芦屋が舞台で、うちの家族も大好きです。それ以外の小説にも、阪神間の雰囲気を感じることがあります。
ひとりの作家に興味を持つと、とりあえず全作読んでみたいという意欲がわいてくるようになって、「長い物語を読む」時代から「作家コンプリート読み」時代に移行していきました。そうしたら、短篇もちょっとずつ面白く思えてきて。たとえば村上春樹作品でも、最初は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』といった壮大な長篇が好みだったんですけれど、今はむしろ『レキシントンの幽霊』とか、短篇集のほうが好きなくらいです。小川洋子さんの短篇も、すばらしいですよね。短篇でいうと、川上弘美さんも大好きです。昔は、物語が長ければ長いほど奥が深いと信じていたんですが、たとえ文字の量は少なくても世界が深く深く広がっている短篇が存在するということに、遅ればせながら気づきました。

――大学は経済学部でしたよね。本が好きだけど文学部ではなかったんですね。

瀧羽:本は漫画とかゲームなどと同じ「趣味」という位置づけで、勉強する対象とはとらえていなかった気がします。文学を学問としてやる発想がなかったし、実際、今も文学的なことはあまり分かりません。
理数科目がそんなに得意じゃなかったので、文系にしようと決めました。あと、卒業後の進路について考えたときに、私は気が小さいので、誰かの人生を決定的に左右してしまうような仕事は怖くてできないと思ったんです。それで、たとえば法学部は弁護士や裁判官、教育学部は教師のイメージがあって、なんとなく敬遠しました。経済学部の場合は、もちろんお金で人生は変わるけれど、直接ふれてしまう感じにはならないかなと思って選びました。
一方で、芸術に対する憧れも強かったです。自分がそういう素養のない人間だという自覚があったので。詳しい友達にあれこれ教えてもらって背伸びして、勝手に成長した気分になっていました。今思い返すと恥ずかしいです。

――サークルは何かやっていましたか。

瀧羽:スキーをやっていました。体育会系ではないんですが、意外に本気のサークルでした。冬はスキー場のシーズン券を買って、山にこもって、春がくるまで降りてこないという。私の人生で、最初で最後の体育会系的な経験です。でもそこで根性が叩き直されたので、結果的にはよかったです(笑)。雪山では、のんきに本を読んでいるどころではなかったですね。

――上下関係が厳しくて?

瀧羽:というより、忙しくて。肉体的にも精神的にも余裕がありませんでした。合宿や大会の期間は全員が集まるんですけど、それ以外のときは、一人か二人ずついろんなスキー場のペンションや民宿に住み込みさせてもらって、働きながら練習するんです。それまで私は偏食で好き嫌いも激しくて、ちょっと潔癖症ぎみだったんですが、そんなわがままは言っていられない。賄いの食事は残しちゃいけないし、客室やトイレの掃除もしなくちゃいけないし、お客さんには感じよく接しなきゃいけないし、いろいろな社会のルールに適合する必要がありまして。結果、一冬で偏食も潔癖症もすっかり矯正されました(笑)。

――そういえば、これまでのところ、全然「作家」という職業を意識する気配がないですね。

瀧羽:確かに! すみません。ただ大学時代には、私自身は書かなかったんですけれど、小説を書いている友達が何人かいました。時間が余っているせいか、そういう年頃なのか、自己表現っぽいことがしたくなるみたいで。で、みんな私が本好きと知っているから、「読んでみて」って渡してくるんですよ。自分の内面について吐露した、かなりヘビーな純文学っぽいやつを。「あ、小説って読むだけじゃなくて書くこともできるんだな」と気づいたのは、それがきっかけです。

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