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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

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作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

真藤順丈さん:イメージ

第196回:真藤順丈さん

その3「大学時代の作家読み」(3/6)

ダ・ヴィンチ文学賞大賞の『地図男』や日本ホラー小説大賞大賞の『庵堂三兄弟の聖職』など、いきなり4つの文学賞に入選してデビューを果たした真藤順丈さん。その後も着実に力作を発表し続け、最近では戦後の沖縄を舞台にした一大叙事詩『宝島』を発表。骨太な作品を追求するその背景には、どんな読書遍歴が?

砂の女 (新潮文庫)
『砂の女 (新潮文庫)』
安部 公房
新潮社
562円(税込)
箱男 (新潮文庫)
『箱男 (新潮文庫)』
安部 公房
新潮社
562円(税込)
水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)
『水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)』
安部 公房
新潮社
594円(税込)
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)』
村上 春樹
新潮社
810円(税込)
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
『ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)』
村上 春樹
新潮社
680円(税込)

――大学時代の読書生活はいかがでしたか。

真藤:大学で国文学部に入ったのもあって、ようやく小説を系統立てて読むようになりました。授業の課題というのもあったし、それがなくても文章の面白さにやっと開眼したんです。近代文学をいろいろ読みました。夏目漱石、太宰治、三島由紀夫、坂口安吾、「この人が書くものは面白い」となったら本屋に並んでいるものを端から読んでいく「作家読み」をするようになったのもこのころからだと思います。

――作家読みしたのはどの人ですか。

真藤:安部公房はすべて読みました。『砂の女』、『箱男』、『方舟さくら丸』、短編集の『R62号の発明』『水中都市・デンドロカカリヤ』が忘れられない。比喩や表現がとにかく面白くて、舐めるようにゆっくり文章を読んでいくのが心地良くて。だるいところやつまらないところがまったくなくて、前衛でありながらエンタメという面白さは、映画や漫画ではなかなか味わえないものでしたね。
 村上春樹も、現在に至るまで「作家読み」しています。『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』と『ねじまき鳥クロニクル』は分厚い上下巻がまるで苦にならない面白さで、小説ってすごいなと、こんなにどっぷり作品世界に入りこませてくれるのかと。筒井康隆さんにハマったのもこのころです。こちらの想像力を活性化してくれる作用があるというか。もっとも偏愛しているのは『驚愕の曠野』ですかね。
 そのあと純文学にカテゴライズされる作品から、エンタメ方向にも読書がひろがっていって。江戸川乱歩やスティーヴン・キングに行ったあたりから、ホラーや幻想怪奇といったジャンルが「主食」のようになっていきました。『IT』とか『シャイニング』は映画よりも原作派です。
それまでずっと海外小説って読めなかったんだけど、あれって読書筋のようなものがあるのか、つづけて本を読んでいるといつのまにかすいすい読めるようになるのね。で、それが嬉しくて、調子に乗ってビッグタイトルにも手を出していって。ガツンとやられたのはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』。メインの話が父親殺しの兄弟たちの裁判で、枝葉末節だらけなのに面白く読めるのはどういうこっちゃ、と。「世界最高の小説」といったときに上のほうに出てくる小説はやっぱりなんかすごいから読んでいこうと思った。サルマン・ラシュディの『真夜中の子供たち』が面白くてマジックリアリズム系の作品を読んでみたり、あとはセオドア・ローザックの『フリッカー、あるいは映画の魔』。

――あ、「このミス」の1位も獲得した海外ミステリですよね。ミステリという感じではなかったけれど面白かった記憶が。

真藤:映画好きというのもあって、これは何度も読み返しました。B級ホラーばっかり撮っているのになぜか観客の視線を釘づけにする幻の映画監督の謎を、映画科教授の主人公が追いかけていくという。師匠筋の女性評論家とエロティックな関係になったり、オーソン・ウェルズやジョン・ヒューストンが出てきたりして、虚実が入り乱れながらハリウッド映画史の変遷が語られていくんです。実際に映画を観ているような心地にさせる精緻な描写が圧巻でして。『フリッカー』の中から拾った〝マグナムオーパス〟というラテン語(文芸・芸術における最高傑作、偉大な仕事といった意)があるんですが、要するにオールタイムベストみたいなことですが、僕にとってこの小説はまぎれもなくマグナムオーパスですね。
 あ、マグナムオーパスでいうと、また漫画の話に戻っちゃって恐縮ですが、新井英樹の『ザ・ワールド・イズ・マイン』。連載中から読んでいて、ちょっと比類のない衝撃を与えられました。今でもその脳震盪めいたショックが続いているような気がするぐらい。創作物としての破格の力が、ある種の呪縛めいたものにまでなっている。

――どんな話ですか。

真藤:モンちゃんとトシという連続爆弾魔がいて、それが本州を北に上がりながら次々と魔法瓶に仕組んだ時限爆弾を仕掛けていくんですね。どうやら梶井基次郎が本の上にレモンを置いて爆弾を仕掛けたつもりになるっていう、文学上の有名なエピソードから採られて「モンちゃん」と呼ばれているんだけど、実際は本名も来歴もわからない謎の男で。その一方で、北からヒグマドンっていう怪獣が下りてくる。その二つの勢力があるところでぶつかってカタストロフィになるんですけど、アメリカ大統領から日本の首相、自衛隊、世界中のテロ組織も巻きこむ驚異の展開が続いていく。暴力描写や非道徳性がすごく取り沙汰された作品だけど、本当にすごいのは国家首脳からそこらの暴走族、女子高生、小学生や幼稚園児、事件の被害者遺族に加害者の親、ヒグマドンに踏みつぶされる犠牲者まで全員にストーリーがあるところで。「あ、この人はモブなしで物語世界を作ろうとしている」と感じました。その徹底ぶりがすばらしくて、しかもどの人物も、人間臭いんだけどいとおしくて、そういうものは読んだことがなかったから圧倒されました。それって実はもっとも道徳的な創作の在り方なんじゃないかって。黙示録の部分だけをグーッと引き延ばして書かれた聖書のように思えましたね。

  • IT〈1〉 (文春文庫)

    『IT〈1〉 (文春文庫)』
    スティーヴン キング
    文藝春秋
    1,026円(税込)

  • 新装版 シャイニング (上) (文春文庫)

    『新装版 シャイニング (上) (文春文庫)』
    スティーヴン キング
    文藝春秋
    994円(税込)

  • カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

    『カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)』
    ドストエフスキー
    新潮社
    907円(税込)

  • 真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 1巻(1) (ビームコミックス)

    『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 1巻(1) (ビームコミックス)』
    新井 英樹
    KADOKAWA / エンターブレイン

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