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作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

又吉直樹さん:イメージ

第211回:又吉直樹さんお笑い芸人として活躍する一方で読書家としても知られ、発表した小説『火花』で芥川賞も受賞した又吉直樹さん。著作『第2図書係補佐』や新書『夜を乗り越える』でもその読書遍歴や愛読書について語っていますが、改めて幼少の頃からの読書の記憶を辿っていただくと、又吉さんならではの読み方や考察が見えてきて……。

その2「ヒーローではない人物に心を寄せる」(2/7)

DRAGON BALL 1 (ジャンプコミックス)
『DRAGON BALL 1 (ジャンプコミックス)』
鳥山 明
集英社
440円(税込)
幽★遊★白書 1 (ジャンプコミックス)
『幽★遊★白書 1 (ジャンプコミックス)』
冨樫 義博
集英社
484円(税込)
キャプテン翼 1 (ジャンプコミックス)
『キャプテン翼 1 (ジャンプコミックス)』
高橋 陽一
集英社
440円(税込)
サッカー少年ムサシ1: 第1巻 (空手少年ムサシ「サッカーに目覚める!」の編)
『サッカー少年ムサシ1: 第1巻 (空手少年ムサシ「サッカーに目覚める!」の編)』
たなかてつお

――本以外で、文化的な影響を受けたものは。やはりお笑いでしょうか。

又吉:お笑いです。小学校の時に見ていた吉本新喜劇の、間寛平師匠と池乃めだか師匠のやりとりが好きでした。普通の劇の中でお店の人と借金取りの人といった対立関係にある二人が言い合っているうちに、めだか師匠が猫になっていって、寛平師匠が猿になっていって、猫と猿で対決するっていうくだりがあるんです。吉本新喜劇のことをベタなお笑いやって言う人もいるんですけれど、あれのどこがベタなのかって思います。人間が動物になって闘いだすんですから。お二人のすごいところが、そのくだりは毎週のようにあるんですけれど、進化していくんですよ。わーっと闘って、1回離れて、視線を逸らす間があったりする。それがすごく動物ぽくて、公園で見る鳥と猫の関係とおんなじで、すごいなと思っていました。それが劇の中に突然入ってくるということと、大人がやっているというバランスがすごく好きでした。

――自分でもお笑いをやりたいとは当時から思っていましたか。

又吉:小学校5年生の時には確実にやりたいなと思っていました。1回、大阪のNSCの入学願書みたいなものを友達と一緒に見ていた記憶がありますね。その時は夜中に、当時若手やったお兄さん方の番組を見ていました。ダウンタウンさんを見始めたのも5、6年生からで、みんなよりちょっと遅いんです。姉は前から見ていたんですが、僕はサッカーをやっていたからあまり見ていなくて。でも教室でダウンタウンさんの名前を聞くようになって「え、知らんの」って言われるので見て、みんなと同じように夢中になりました。
 5年生くらいからネタも考えるようになって、6年生からはノートに書き始めてリングの小さいノートが2冊くらいたまって、中学生になってからはもうちょっと大きいノートに書くようになって、何冊かありました。

――漫画は読まれましたか。

又吉:読みました。『ドラゴンボール』でもピッコロのような、最初は敵だったのがちょっと仲間になってくるようなキャラクターが好きでしたね。『幽☆遊☆白書』の飛影とか。天真爛漫でみんなから愛される主人公には惹かれませんでした。『キャプテン翼』も、翼くんに憧れはあるんですけれど、友達の前で口が裂けても「翼くんが好き」とは言えない。翼君がひょいとジャンプで交わしてしまうスライディングしてきた後ろ姿の少年くらいやなと思ってました。でも、小学生の時はどんだけ努力しても全国大会に行けないから、その少年ですらなかったんですけれど。
 『サッカー少年ムサシ』という全3巻の漫画は好きでしたね。それは主人公もヘンやったんです。『じゃりン子チエ』もめちゃくちゃ好きです。チエちゃんも好きですけれど、気の弱い同級生のヒラメちゃんも好きで。チエちゃんにケンカ打ってはやられてしまう二人組の男の子がいて、その一人のマサルくんの「今日のチエは強いわ」って台詞がすごく好きでした。今日だけじゃなくていつもやられてるやん、っていう。たまにチエちゃんがナイーブになっていて、マサルたちにちょっかい出されても「うち、もうええわ......」っていう時があるんですよ。そういう時に二人組が戸惑うんです(笑)。「チエの様子がおかしい」て。そういうのがすごく好きでしたね。

――ヒーロータイプに憧れるわけではなかったんですね。

又吉:屈折しているわけじゃないんですけれど、アニメや特撮を見ていても、どっちかというと敵の格好いい奴を好きになるんですね。仮面ライダーがすごく好きやったんですけれど、「仮面ライダーBLACK」とそのあとの「仮面ライダーBLACK RX」にシャドームーンという敵が登場するんです。友達同士がショッカーに誘拐にされ、片方は逃げるけれど片方が捕まって改造されて、仮面ライダーBLACKのライバル、シャドームーンになる。心まで改造されてしまっているんですけれど、たまに人間だった時の自分の心が出る。僕はこのシャドームーンに感情移入してしまうんです。中学生になって読んだ中島敦の『山月記』の、虎になってしまった李徴にすごく心惹かれたんですが、李徴とシャドームーンが少し重なります。
 ピカピカのヒーローとか、女の子から人気があってすげえ格好いいヒーローというものを、自分みたいな人間が好きになってはいけないんじゃないかという意識がありました。ゴレンジャーでも、みんなレッドを取りたがるけれど、僕はレッドじゃないなと思って、みんなが取り終わって残ったものでいいと思っていました。
 唯一、主人公では「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎は好きでした。妖怪やし、いったら悪いですけれど身なりも汚いから、僕が好きでもいいよな、と思える。僕もシャツがお姉ちゃんのおさがりで、朝礼で並んでいると僕のシャツだけ黄色かったし、その黄色いシャツに合わせて被っている帽子にも土をわざとつけて黒くしてダメージを与えていたんです。鬼太郎とか、言葉でぱきっと説明しにくい感情を抱えている登場人物に共感しやすかったですね。

  • じゃりン子チエ(1) (双葉文庫)

    『じゃりン子チエ(1) (双葉文庫)』
    はるき悦巳
    双葉社
    880円(税込)

  • 李陵・山月記 (新潮文庫)

    『李陵・山月記 (新潮文庫)』
    中島 敦
    新潮社
    440円(税込)

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