お祝い、お礼・お返し、ご挨拶。贈り物には図書カードNEXT

  • 文字サイズ
  • 文字サイズ:小
  • 文字サイズ:中
  • 文字サイズ:大
  • twitter
  • facebook
menu

図書カードNEXT トップ > 作家の読書道

作家の読書道 WEB本の雑誌 Presents

WEB本の雑誌

作家自身は、どんな「本屋のお客」なんだろう?そしてどんな「本の読者」なんだろう?
そんな疑問を、作家の方々に直撃インタビューです。

寺地はるなさん:イメージ

第202回:寺地はるなさん婚約を破棄されどん底にいた女性が、ひょんなことから雑貨屋で働くことになって……あたかい再生の物語『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞、以来、現代人の心の沁みる小説を発表し続けている寺地はるなさん。幼い頃は親に隠れて本を読んでいたのだとか。読書家だけど小説家を目指していたわけではなかった寺地さんが小説を書き始めたきっかけは? 読むことによって得た違和感や感動が血肉となってきたと分かる読書道です。

その2「古典名作を読みはじめる」(2/7)

ミザリー (文春文庫)
『ミザリー (文春文庫)』
スティーヴン・キング
文藝春秋
山椒大夫・高瀬舟 (新潮文庫)
『山椒大夫・高瀬舟 (新潮文庫)』
森 鴎外
新潮社
529円(税込)
伊豆の踊子 (新潮文庫)
『伊豆の踊子 (新潮文庫)』
川端 康成
新潮社
389円(税込)
蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)
『蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)』
田山 花袋
新潮社
432円(税込)

――中学生時代はいかがでしたか。

寺地:中学校の時は......ぼーっとしていましたね。あ、その頃、リヴァー・フェニックスがすごく好きだったんですよ。でも映画も自由に観られないから、映画のチラシを集めたりしていて。『スタンド・バイ・ミー』のスティーヴン・キングの原作の新潮文庫を買うと、カバーの見返しのところに映画の写真が載っていたんですよ。だから読んで、写真を見て、読んで、写真を見て、という(笑)。原作は映画とはだいぶ違うけれどそれも面白かったので、そこからホラー小説を読むようになった時期がありました。キングだと『ミザリー』とか。

――テレビも見られなかった人がなぜリヴァー・フェニックスを知ることができたのでしょう。

寺地:いとこの家に泊まりに行ったら「映画でも観ようか」といって普通にレンタルビデオを借りているので「ああ、なんて素敵な家族なんだ」と思って、その時に「旅立ちの時」と「スタンド・バイ・ミー」を観たのかな。

――その頃はまだリヴァー・フェニックスって生きてました? 若くして亡くなったんですよね。

寺地:(亡くなったのが)高校2年生の時だったんです。名前を口にするのも辛すぎて、つい最近までファンだったことも言えなくて。最後に出演した「ダーク・ブラッド」もまだ観ていないです。観たらなんか、本当に終わってしまいそうで。あれから20年以上経って、この間「別冊文藝春秋」のコラムのお話をいただいた時にはじめてリヴァー・フェニックスについて書いて、ようやく普通に「ファンやったんです」と言えるようになりました。

――そんな若い頃に好きな人に死なれるのは辛いですよね...。と、すみません、脱線させてしまい。中学生の時に話を戻しますと。

寺地:中学2年生の時に、あまりにも成績が悪すぎて、塾に入ろうとしたら入れなかったんです。「ちょっと手に負えません」みたいにいわれて。それで、公文式の教室に行くことになったんですけれど、そこの教材に森鴎外の『高瀬舟』が出てきたんです。抜粋されていた部分がすごく面白くて。でも、『高瀬舟』って短いじゃないですか。

――数分で読み終えられるくらいの長さですよね。

寺地:問題で出されたのもあの短い小説の、かなり後半部分だったんですけれど、問題文を読んだ時はそれが長篇の一部だと思ったので、「続きが気になる」と思って図書室で借りて読んで、あの短さに驚きました。「あ、問題に出た部分はもう終わりのところやったんや、ええー」って。でも、古典的名作といわれるものって難しいと思っていたけれどすごく面白いんだと気づいて、「じゃあ、有名なやつを読もう」となりました。でも、まわりに本を読む人がいないから、どれが面白いかも聞けないし作家の名前も分からない。それで国語の便覧に載っている人を中心に読んでいくことにしたんです。谷崎潤一郎とか、太宰治とか...川端康成は『伊豆の踊子』がなんとなく嫌だなと思って。出てくる学生さんが偉そうだな、って。当時としてはそれが普通の感覚やったんですかね。あとはあれです、『蒲団』。

――ああ、田山花袋の『蒲団』はね(笑)。

寺地:そうそう、大人になった今なら「まあ人間だもんね」って思うんですけれど、中学生で読んだ時は「嫌だ、気持ち悪い」って思っちゃったんですよね。作家の先生が、奥さんもいるのに若い女性の弟子のことを好きになって、その子が使っていた布団に顔をうずめて泣くなんて気持ち悪い、って。今なら、人にはそういう情けないところもあるよねって思うんですけれど(笑)。

――逆に、いいなと思った作品はありましたか。

寺地:谷崎潤一郎の「刺青」の出だしがすごく格好いいなと思って。「其れはまだ人々が「愚(おろか)」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった」という文章ですね。「愚」って馬鹿にする言葉なのにそれを「貴い徳」というところが衝撃的でした。
太宰治も、最初に犬を捨てる話を読んだんです。「畜犬談」ですね。きったない犬を飼っていて、みんなに笑われるだろうから捨てようとしたけれど捨てられなくて付いてきちゃって、家に帰って奥さんに、捨てれんかったわと言ったら「ああ」という反応だったというような話ですけれど。ああ、太宰って面白い人なんだなと思って読んでいました。太宰の短篇は面白いですね。
夏目漱石は『こころ』が一番好きかな。中学生の時は、わりと難しい言葉が多いなという印象でした。志賀直哉は『小僧の神様』とかは読んだけれど『暗夜行路』は読んでいません。島崎藤村は読んでいないかもしれません。目録を読んで読んだ気になっているだけかもしれません(笑)。

  • 刺青・秘密 (新潮文庫)

    『刺青・秘密 (新潮文庫)』
    谷崎 潤一郎
    新潮社
    562円(税込)

  • こころ (新潮文庫)

    『こころ (新潮文庫)』
    夏目 漱石
    新潮社
    400円(税込)

  • 小僧の神様―他十篇 (岩波文庫)

    『小僧の神様―他十篇 (岩波文庫)』
    志賀 直哉
    岩波書店
    691円(税込)

  • 暗夜行路 (新潮文庫)

    『暗夜行路 (新潮文庫)』
    志賀 直哉
    新潮社
    961円(税込)

「作家の読書道」は「WEB本の雑誌」からコンテンツの提供を受けています。

ページトップへ

× 閉じる