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第8回:桜庭一樹さん

魔都新宿で極悪パワー炸裂?!
<プロフィール> 島根県生まれ。鳥取県出身。1999年「夜空に、満天の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞佳作入選。『AD2015隔離都市 ロンリネス・ガーディアン』と改題し刊行、デビュー。『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)受賞。2008年『私の男』で第138回直木受賞。

購入書籍No.   123456789101112131415

【1】『山尾悠子作品集成』(国書刊行会)

『山尾悠子作品集成』

 当方、仕事場が近くなので、徒歩である。編集部も近いらしく、『本の雑誌』の浜本氏はママチャリにて現れた。作家が徒歩、編集者がママチャリ......(都会じゃないみたい......。魔都新宿なのに......)。
 挨拶もそこそこ、ダーッと1階に駆けこむ。あったー!『山尾悠子作品集成』を「獲ったドー!」の人(濱口優?)のように掲げて振り返り、「まずこれを買いますっ!」と宣言すると、浜本氏が一言「で、でかい」。後は安心して、1階をゆっくり回って品定めした。

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【2】『フォーチュン氏の楽園』(新人物往来社)

『フォーチュン氏の楽園』

 おっ、「20世紀イギリス小説個性派コレクション」の2冊目『フォーチュン氏の楽園』が出てる。責任編集のうちの1人、横山茂雄氏はものすごい本読みとして有名らしい(それと、別名義で小説も書いている)。1冊目の『ヴィクトリア朝の寝椅子』がすごく面白かったので、作者のこともなにも知らないけど、編集人を信じて購入。

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【3】『セーヌの釣りびとヨナス』(パロル舎)

『セーヌの釣りびとヨナス』

   あと、作者は現ポーランド領の上部シュレジエン地方ボイテン生まれのライナー・チムニク、訳者は矢川澄子の、大人絵本『クレーン男』が大好きだったので、同コンビの『セーヌの釣りびとヨナス』をみつけて、握る。

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【4】『尼僧とキューピッドの弓』(講談社)

『尼僧とキューピッドの弓』

 それから国内新刊コーナーを歩いて、多和田葉子さんのかわいい新刊『尼僧とキューピッドの弓』をふらーっとジャケ買い。

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 レジに並ぶ。この時点で、約15,000円遣った。「エッ。もう、半分なくなってしまった......」ものすごくおいしい(でも高い)ものを食べているとき、こういう悲しい気分になったのをふと思いだした......。

【5】『ヴェルサイユ宮殿に暮らす』(白水社)
【6】『心霊写真』(青土社)

『ヴェルサイユ宮殿に暮らす』 『心霊写真』

 巨大迷路の如き宮殿の実生活を解体した『ヴェルサイユ宮殿に暮らす』と、心霊写真を"つくる"人たちの心理と歴史を解いた『心霊写真』について書店員さんに聞くと、調べてくれて、5階にあるという。

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紀伊國屋書店新宿本店は8階まであって、1階が単行本、2階が文庫や雑誌、上の階は専門書などである。わたしは1階、2階はよくうろうろしているので、ほしそうな本はすでにけっこう買ってしまっているけれど、上の階には普段あまり行かないから、たまーに上がると、物珍しい本をみつけてごっそり買いこんでしまう。 「ぼくも、上の階まではなかなかきませんねぇ」と浜本氏もおっしゃる。「そうですよねぇ。あっ、5階か6階に喫茶店があったらいいのに」「なるほど。そしたら上がっちゃいますねぇ」「名物もあるといいなー。紀伊國屋カレーとかオムライス、本の形のチョコが載ってるパフェとか......」と話しながら、5階に。

【7】『澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド』(集英社新書ヴィジュアル版)
【8】『美輪明宏が語る寺山修司』(角川文庫)

『澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド』 『美輪明宏が語る寺山修司』

 このへんに現代詩の棚が......と角を曲がったら、立地がちょっと変わっていて、なんだかわからない別のコーナーになっていた。そこでふらふらと『澁澤龍 ドラコニア・ワールド』と『美輪明宏が語る寺山修司』を持ったら、手から離れなくなった。もういい加減、関連本も山盛り持っているのだけれど、澁澤、寺山と表紙に書いてあると、ついまた買ってしまうのだ......。

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【9】『俺は死ぬまで映画を観るぞ』(現代思潮新社)

『俺は死ぬまで映画を観るぞ』

 おっ、四方田犬彦さんの『俺は死ぬまで映画を観るぞ』もみつけた。
まぁ好みなのだけれど、昔から、四方田さんと沢木耕太郎さんの映画評が好きなのだ。

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きりがないので、ここまでにして、レジに向かった。1階で問い合わせた2冊(ヴェルサイユ宮殿と心霊写真)も購入。専門書はけっこう高いので、あぁ、ここでまた9,000円ぐらい遣ってしまった......。
 がっかりしながら「あとフォレストで漫画を1冊買って、残りは2階で文庫を買います......」とレジに背を向け、とぼとぼと歩きだしたら、きゃっ! 壁際で国書刊行会フェアをやっていた。箱入りの『久生十蘭全集』1冊約10,000円で全11巻とか、『鴨居羊子コレクション』BOXとか。首が痛くなるほど見上げながら「なんと魅力的な棚だっ。しかし、ここで買ったら30,000円なんてすぐ消えちゃいますね」「ですねぇ......」とぼやく。早く逃げようと、じわじわ右のほうにカニ歩きしていくと、きゃっ! 右の棚では、こんどはみすず書房の在庫希少本フェアが......。棺桶(品切れ重版未定)に片足をつっこんだ面白そうな本が、「オイ。なにこっち見てんだよ、てめー」と言いたそうな顔をして、ぎっしり、むっつりと並んでいる......。
 でも残りはあと5,000円弱だ。この棚の本はけっこう高いし、2冊も買ったら終わってしまいそうだ。心を鬼にして(またこよう、ここまで上がってこよう......)と思いながら背を向けたら、うわっ。後ろの棚ではなぜかユングフェア開催中だった。難しそうな専門書が棚いっぱいに並んでいる。
「な、なんだこれは」浜本氏がおおきな黒いブロックみたいなものを持ちあげてつぶやいている。わたしも覗きこんで、「?」「?」「?」と、2001年の猿みたいに一緒に持ちあげたりなんだりしていて、ようやく本だと気づいた。化粧箱入りの巨大豪華本『赤の書』で、2人がかりでようやく中から出して、開くと、ハリー・ポッターの映画に出てきそうな魔道書じみた文字と絵がみっしりと並んでいた。
 読めないし、おおきいし、定価は37,800円だし、手が出ないのでいっそ気楽に「すごいなぁ」「何部刷ったんでしょうね」「重いなぁ」としばし眺めてから、そーっともとにもどし、エレベーターで1階に降りた。

【10】『秘密 8』(白泉社)

『秘密 8』

 漫画は裏手のビル「フォレスト」の2階にある。清水玲子の近未来サスペンス『秘密』シリーズの8巻が出ているので、買おうと思ったのだけれど、ここの漫画の棚をあまり見慣れてなくて、どこにあるのかわからない。新刊の棚を捜したり、出版社別の棚を捜したりしたあげく、検索機で調べてようやくみつけた。

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これが800円くらいで、ということは残りは4,000円ちょっとである。文庫ならまだたくさん買えるので、本館2階に移動。
 こないだ読んだ遠藤周作『海と毒薬』の巻末広告で気になっていた2冊、なかにし礼『赤い月』と、吉行淳之介『原色の街・驟雨』を探す。が、どちらも新潮文庫の棚になかった。続いて、ソフトバンク新書の畑正憲『人という動物と分かりあう』も捜したけど、なかったので、あきらめる。
 リアル書店に毎日通っていると、「ないなー」という、この"縁がなかった感"、"本に逃げられました感"も、じつはそんなにいやじゃない。またみつけたときに買おっ、とべつの棚にふらふら~っと移動。

【11】『マイナス・ゼロ』(集英社文庫)

『マイナス・ゼロ』

 角川と集英社の夏のフェア棚の前にきた。あっ、読もうと思いつつまだだった(本屋でなかなか会わなかった)広瀬正の『マイナス・ゼロ』を、急にみつけた。わたしが生まれたつぎの年になくなったSF作家で、最近、集英社文庫から相次いで6冊も復刊されたのだ。その1冊目。よし、いま買おう!

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【12】『星を継ぐもの』(創元SF文庫)

『星を継ぐもの』

 ついで、SF界の巨匠J・P・ホーガンがなくなったので、追悼フェアをやっていた。じつは......かの有名な......『星を継ぐもの』をなんと読んでいないので......「ええーっ!?」(浜本氏の声)......わたしは自己流で本を選んできたので......じつはとんでもなく有名な作品を、1人だけ読んでなかったりするのだ......で、買うことに。
「あれ、でもこの文庫だけごっそり減ってる。案外、まだ読んでない人がけっこういるのかも。若い人とか」と浜本氏。確かに『星を継ぐもの』だけ平棚でガクッと山が減っていた......。

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【13】『娘に語る祖国』(光文社文庫)

『娘に語る祖国』

 つづいて、つかこうへいさんの追悼棚もみつけ、『娘に語る祖国』を購入。

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【14】『笑いの源泉 戦後短篇小説再発見15』(講談社文芸文庫)

『笑いの源泉 戦後短篇小説再発見15』

 確か『新刊ニュース』で、作家の朝倉かすみさんがお薦めしていたような気がする、講談社文芸文庫の「戦後短篇小説再発見」というアンソロジーシリーズをみつける。吉田知子の短篇が入っている、と読んだ記憶があるけれど、全18巻のうちに抜けがあって、みつけられなかった。と、隣で浜本氏が「わーっ」と叫んだ。「どうしました?」「この15巻、舟橋聖一、正宗白鳥、小沼丹、花田清輝......」「フンフン」「椎名誠......」「ほんとだ、椎名さん! なんだか面白そう。お試しの1冊でまずこれを買おうー」と15巻『笑いの源泉』購入。

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計算上はここで終わりだったけれど、どうやら計算が間違っていたらしく(そういや、昔から数字に弱かった)、1,000円ぐらいあまった。じゃっ、と、最後にまた1階に降りた。男性エッセイの棚に行く。

【15】『浮き世のことは笑うよりほかなし』(講談社)

『浮き世のことは笑うよりほかなし』

 この一角が昔から好きで、ここで棚ざしの本を出しては1冊ずつぱらぱらし、偶然みつけた名随筆も数知れず。あっ、山本夏彦翁の対談集『浮き世のことは笑うよりほかなし』をみつけて、ぱらぱらめくったらいい言葉が目に飛びこんできたので(でも、なんだったかもう忘れちゃった......)若干、足が出るけどこれにした。

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 買ったドー......。
 ちょっと、ぐったり。でも楽しかった!
 で、喫茶店で、この原稿の締め切りや枚数の打ち合わせをして、両手に大荷物でがしがし帰宅した。
 床にドーンと積んで、順番に読むことにした。いつもの夜だ。
 あー。これぞ極悪、いやっ、ちがうちがう、極楽である。

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