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第71回:金原ひとみさん

壁が見えない人生
<プロフィール> 金原ひとみ(かねはら・ひとみ)
1983年東京都生まれ。2003年、『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。2004年、同作で第130回芥川龍之介賞を受賞。2010年、『トリップ・トラップ』で第27回織田作之助賞を受賞。2012年、『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。2020年、『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞。『アンソーシャルディスタンス』で第57回谷崎潤一郎賞を受賞。その他の著書に『AMEBIC』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』『腹を空かせた勇者ども』等がある。

購入書籍No.   1234567891011121314

【1】『植物少女』(朝日新聞出版)

『植物少女』

 まずは高くて文庫化されていない本を選ぼうと翻訳書のコーナーに移動する途中、目に止まった朝比奈秋さんの『植物少女』を手に取る。美しい装丁。三島賞の選評を読んで気になっていた本だった。

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【2】『ドレの神曲』(宝島社)

『ドレの神曲』

 海外文学コーナーで、見覚えのある『ドレの神曲』を見つけて、手に取った。ずっと本棚にあったけれど、旦那が出て行った際に持って行ったのだろう。最近見ていない背表紙だった。ある時にはあるのが当然で特に思いを馳せることもないけれど、なかったらなかったで「やっぱりあった方がいいかも」と思う本というのが、この世にはまあまあ存在する。実家を出たり、同棲を解消したり、海外移住したりするタイミングで、そう思って一定数の本を買い足してきた。そんなことをしているから、同じ本が2冊、3冊と溜まっていくこともある。昔はすでに持っている本を買ってしまったことに気づくと自分の愚かさを忌々しく思ったけれど、最近ではダブった本の版が同じだと双子の再会、版が違うと腹違いのきょうだい、と想像してそれぞれの幸福な人生を祈れるようになった。パラパラとページをめくりながら、10年くらい前に大鵬がダンテを掴んで舞い上がる絵のタトゥーを入れようか悩んで、全身タトゥーの友達にデザインの相談をしていた時のことが蘇った。10年後の今でも入れたいと思えるから、もう入れてもいいのかもしれない。

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【3】『エタンプの預言者』(KADOKAWA)

『エタンプの預言者』

 背表紙が目に飛び込んできたのが『エタンプの預言者』。60代のリベラルインテリがパラダイムシフトについていけずカタストロフ......、的にSNSで紹介されているのを見て、連載中の新作とテーマが近いこともあり気になっていた。

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【4】『新しい人生』(藤原書店)
【5】『僕の違和感』〈上下〉(早川書房)

『新しい人生』『僕の違和感』〈上下〉

 オルハン・パムクは名前を見つけるだけでテンションが上がる。持っていない本を軒並み買ってしまおうかと思ったが、どれも分厚いし高いしまだ新刊も読んでいないしと思いとどまり上下巻と1冊に留める。

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【6】『普通という異常 健常発達という病』(講談社現代新書)

『普通という異常 健常発達という病』

『普通という異常 健常発達という病』3万円で本屋で買い物をする企画の依頼が来ましたと竹花さんが教えてくれた帰り道、彼が最近読んで面白かった本としてこの本を挙げたため、この企画で買おうと1番に決めた本だった。竹花さんから聞いた話だからどこまで本当かは分からないけれど、現代社会では普通と異常が定義づけられているが、普通もまた異常である、という趣旨の本とのことだった。全ての資質はグラデーションでしかなく、全ての定義は超個人的なものなのではないか、という小説を書く上で障害にもなり得る常日頃からの疑問に関わる問題が書かれているのではないかと期待。

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 何かしら人生の帰路に立たされた時、仕事の内容で悩んでいる時に、ドゥルーズの『アベセデール』というDVDを見ることにしている。なかなか形にならないぼんやりとしたテーマ、漠然とした不安、ああでもないこうでもないの逡巡、そういうものが鮮明に見えてきたり、雪のように溶けていったり、全く別のものに変容したり、という化学変化が毎回起こる。

【7】『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)

『ドゥルーズの哲学原理』

 でも実際にドゥルーズの本を読破したことはない。興味はあるけど、手を出しづらい、でも國分さんなら、という葛藤ののち、難解なんだろうなと思いつつ手を伸ばした『ドゥルーズの哲学原理』。難しそうな本は基本、目次だけ読んでしばらく寝かせることにしている。

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【8】『ニューヨークで考え中』〈1〜4〉(亜紀書房)

『ニューヨークで考え中』〈1〜4〉』

「彼氏が『A子さんの恋人』に影響されて元カノと植物園に行きやがった」という担当編集者のパワーエピソードを聞いて『A子さんの恋人』をネットで即時購入して翌日早速読み始めた、という経緯も相まって、近藤聡乃さんの名前を見るとなんだか胸が苦しくなる。『ニューヨークで考え中』は、最近個展の開催に合わせて近藤さんとのトークショーに出演したと植本一子さんがLINEをくれたことで、そう言えば買ってなかったと思い出した漫画。

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【9】『GLITCH-グリッチ-〈4〉』(KADOKAWA)

『GLITCH-グリッチ-〈4〉』

『GLITCH 4』はやっぱり竹花さんがお薦めしてくれた漫画で、完結していると思いこみ3巻まで買って放置していたが、最近Amazonの新刊出たよ通知によって完結していなかったことを知った。先に読んだパートナーが、私の大好きなカネコアツシさんの『SOIL』に雰囲気が似ていると言っていたので期待大。

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【10】『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社)

『母という呪縛 娘という牢獄』

 地下の漫画コーナーから、話題の本が集まっている1階へ。『母という呪縛 娘という牢獄』が真っ先に目に飛び込んできて手に取る。定期的にSNSで目にしていて、ずっと気になっていた本だ。自分の好きな作家の本、SNSで話題になっていた本、人から薦められた本は大抵すぐにポチってしまうけれど、この本はなんとなく「でも私はもう母の呪縛から逃れた人間だし」とか「でももし呪縛から逃れられていなかったとしたらそのことに気付かされてしまうかも」とか意味不明な躊躇があってAmazonのカートに入れては出しを繰り返していたけれど、「まあ今だな」と諦めのようにカートに入れた。

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【11】『ワインつまみ すぐおいしいじっくりおいしい』(池田書店)
【12】『分解する』(白水uブックス)

『ワインつまみ すぐおいしいじっくりおいしい』『分解する』

 レシピ本を1冊くらい買いたいと思っていたけれど、実際にレシピコーナーを見て回ると「こんなに手の込んだ、しかも手に入りにくい食材を使った料理はしないな......」という専門的なものと「この辺の基本的な料理はレシピがなくても作れるな......」の2種類ばかりで、無理して買うことないかと思いかけた時に見つけた『すぐおいしいじっくりおいしい ワインつまみ』は、その中間にあるちょうどいい本だった。「レバーペースト」と「ひよこ豆のペースト」のレシピが決め手になった。

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【13】『氷壁』(新潮文庫)
【14】『日本百名山』(新潮文庫)

『氷壁』『日本百名山』

 あと2千円くらいですね。と言われてじゃあ文庫でもと文庫コーナーに行ってすぐ、去年大人になってから初めての登山をした時、登山関係の有名な本って何がありますかと同行していた編集者たちに聞いたところ、『神々の山嶺』『氷壁』『日本百名山』の3つが上がったのを思い出した。『神々の山嶺』以外の2冊は買っていなかったことを思い出し即決。多分これで3万超えましたと言われてレジに赴くと30,062円で、思わず声が出た。

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