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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

第59回:高山羽根子さん

伊勢佐木町でお買い物
<プロフィール> 高山羽根子(たかやま・はねこ)
1975年富山県生まれ。2010年「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作、2016年「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞を受賞。2020年「首里の馬」で第163回芥川龍之介賞を受賞。著書に『オブジェクタム』『居た場所』『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』『如何様』『暗闇にレンズ』などがある。

 今月の図書カード3万円お買い物コーナーは高山羽根子さんが挑戦! 球春はじまりのプロ野球選手名鑑から海外文学、歴史ノンフィクションに文庫までガンガン買った20冊はこれだ!
(2021年3月23日 於有隣堂伊勢佐木町本店)

 小説を書いて本に載せてもらい始めたころ「将来、作家が3万円分書店さんでお買い物するあの企画に出られるといいねえ」と言われたことを思い出す。これが "あの企画" だ。私自身も、かつて読んだ笹塚日記によって「いつか笹塚に住む、笹塚というのはそういう街だ」と信じていたくちなので、今回このお話をいただいたときには「わしもついにここまで来たか」と思ったものだ。別にどこにも到達していないけど。
 このお話をいただいたときは3月の頭で、それから企画当日までしばらく生活しながらあちこちの書店さんに行く間「どんな選書をすれば多くの人に笑ってもらえるか」「せっかくだから宣伝になるような買い物をしたほうがいいのでは」「じゃあ今買うよりもあの企画のときに買ったほうが」「そんなこといってガマンしたあげくお店になかったらどうするつもりなのか」などと悶々しているうちに日は過ぎる。さらにこの企画は、書店さんの候補選びからこちらにゆだねられていた。家の近くの書店さんはガチでご近所すぎたり、独立系の書店さんだと図書カードが使えなかったりなので、そこも悩ましかった。ただ、縛りといっても図書カードの件と、書店さんに断られないということだけなので、裏を返せばそれ以外はなんでもできる。書泉グランデさんで1個3万円のボードゲーム買ったって、ヴィレッジヴァンガードさんでなんか巨大なぬいぐるみ買ったって良い。自分は幸せになるけれどもたぶんここの文章欄ですごくすべるだけだ。
 そもそも私が本を買うことがなんの娯楽コンテンツになるのだ。週に2、3回はふつうに行われていることなのに。黙ってうろうろしてニヤッとして買う、みたいななんの楽しさもない絵面になりはしまいか。
 ただまあ悩んでもどうにもならないだろうと数冊の「これは在ったら欲しい」リストと、なんとなくの希望を抱えて、あとは流れのままに買っていこうと決めて当日を迎えることにした。
 書店さんは、横浜は関内駅、伊勢佐木モールの有隣堂さんにお願いした。関内は久しぶりだった。プロ野球の昨シーズンは前半無観客だったということもあり、ハマスタには5回も行けなかった。
 さかのぼって十代のころを思い出すと、伊勢佐木町あたりは自分にとって映画の街だった。関内アカデミーでマルチェロ・マストロヤンニを観て、ジャック&ベティでチャン・イーモウを観て、横浜日劇で濱マイクを観た。
 そうしてついでに拙著、映画をテーマにした『暗闇にレンズ』は舞台の一部が横浜なので、そのあたりのことも頭の中にあった。ようするに宣伝半分だ。

高山羽根子さんが図書カードNEXTで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『NSK MOOK プロ野球オール写真選手名鑑〈2021〉』 日本スポーツ企画出版社 ¥999
『Baseball Times増刊』2021年2月号 スクワッド ¥489
『日刊スポーツマガジン』2021年2月号 日刊スポーツP ¥999
『野球太郎〈No.038〉 プロ野球選手名鑑+ドラフト候補名鑑2021』 イマジニア ナックルボールスタジアム ¥1,530
『かわいいウルフ』 小澤みゆき編/亜紀書房 ¥1,870
『アヒル命名会議』 イ・ラン、斎藤真理子訳/河出書房新社 ¥1,980
『踊る熊たち 冷戦後の体制転換にもがく人々』 ヴィトルト・シャブウォフスキ、芝田文乃訳/白水社 ¥3,300
『台湾博覧会1935 スタンプコレクション』 陳柔縉、中村加代子訳/東京堂出版 ¥3,960
『エゴ・ドキュメントの歴史学』 長谷川貴彦編/岩波書店 ¥3,300
『幻影の偽書『竹内文献』と竹内巨麿 超国家主義の妖怪』 藤原明/河出書房新社 ¥2,145
『文豪宮本武蔵』 田中啓文/実業之日本社文庫 ¥770
『臆病同心もののけ退治』 田中啓文/ポプラ文庫 ¥770
『庶務省総務局KISS室政策白書』 はやせこう/ハヤカワ文庫JA ¥858
『猫は宇宙で丸くなる 猫SF傑作選』 中村融編訳/竹書房文庫 ¥1,320
『ハロー・ワールド』 藤井太洋/講談社文庫 ¥825
『日本奥地紀行』 イザベラ・バード、高梨健吉訳/平凡社ライブラリー ¥1,650
『女のキリスト教史 「もう一つのフェミニズム」の系譜』 竹下節子/ちくま新書 ¥946
『宇宙の春』 ケン・リュウ、古沢嘉通訳/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ ¥2,090
『人之彼岸』 郝景芳、立原透耶・浅田雅美訳/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ ¥1,980
『ある昭和史 自分史の試み(改版)』 色川大吉/中公文庫 ¥942
合計 20冊 ¥32,723

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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