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第58回:大槻ケンヂさん

混沌と錬修の箱入り本
<プロフィール> 大槻ケンヂ(おおつき・けんぢ)
1966年、東京生まれ。1982年、ロックバンド「筋肉少年少女隊」結成。1988年「筋肉少女帯」でメジャーデビュー。バンド活動と共に、エッセイ、作詞、テレビ、ラジオ、映画等多方面で活躍中。小説では『くるぐる使い』『のの子の復讐ジクジク』で 2年連続「星雲賞」を受賞。『グミ・チョコレート・パイン』等映画化作品も多数。1999年「筋肉少女帯」を脱退後、「特撮」を結成。2006年「筋肉少女帯」に復帰。「特撮」を含め現在も活動中。

購入書籍No.   123456789101112

【1】『トリックといかさま図鑑 奇術・心霊・超能力・錯誤の歴史』
       (日経ナショナルジオグラフィック社)
【2】『オカルト番組はなぜ消えたのか 超能力からスピリチュアルまでのメディア分析』(青弓社)

『トリックといかさま図鑑 奇術・心霊・超能力・錯誤の歴史』『オカルト番組はなぜ消えたのか 超能力からスピリチュアルまでのメディア分析』

 3万円分の図書カードをもらった時、すかさず「じゃ、アレ買おう」と浮かんだ本が2冊あった。「トリックといかさま図鑑 奇術・心霊・超能力・錯誤の歴史」マシュー・L・トンプキンス著と「オカルト番組はなぜ消えたのか 超能力からスピリチュアルまでのメディア分析」高橋直子著。前者は自称超能力者や物理的霊媒師のイカサマ、トリックのネタを貴重な写真の数々で紹介したオールカラーの豪華本。後者は50年代の心霊ラジオ番組から始まって、宜保愛子、江原啓之のブームなどを経てオカルト番組がいかにして衰退して行ったのかを膨大な資料を用いて分析した宗教学者の著す1冊。ちなみに「國學院大學課程博士論文出版助成金の交付を受けた出版物」であるとのこと。2冊ともオカルトの信疑を問うことよりオカルト的現象が時代ごとにどう民衆に扱われてきたのかを冷静に観察している。僕はオカルト本が大好きで、「ムー」は毎月蛍光ペンで傍線を引きながら読んでいる。未確認生物ウモッカや、"UFOは有明で取れる海苔を狙っている"などというパワーワードに線を引いているとたちまちムーが蛍光ペンでビッシリ埋まっていって、読了後にパラパラめくると全てのページがキラキラ光ってまばゆいほどだ。なんでもUFOの燃料には有明の海苔が必要であるそうだ。ハイオク的なやつなのか?
 ...で、なんだ、そうだ、オカルト好きな僕は大概のオカルト本は書店に並ぶとすぐに購入する。でも「トリックといかさま~」「オカルト番組は~」はなかなか購入には至らなかった。その理由はザックバランに言って高いからだ。前者3,600円、後者2,800円である。安かないっスよね?オカルティックな本は昭和の昔なら国書刊行会あたりから箱に入って高値で売られていた。これは買う方には「買うぞ!」との意気込みがあったから文句は無かった。あるいはカッパ・ブックスとかで数百円で売られていてこちらはまぁなんとかなる値段であった。近年はオカルトの情報はもっぱらネットに流れ、また本としてはコンビニで安価で買えるようになった。オカルト本はなぜコンビニで売られるようになったのか?その考察は長くなるのでまたにして、さてこのちょっとお高い2冊は蛍光ペンで傍線を引くべきか否か今悩んでいるところ。

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【3】『井上陽水 ギター弾き語り曲集 永久保存ワイド版』(ドレミ楽譜出版社)

『井上陽水 ギター弾き語り曲集 永久保存ワイド版』

 オカルト本の次に音楽に関する本を買った。音楽本もまたニッチな層を狙って売られているためか安くはない。図書カードのある今が買い時なのである。まず「井上陽水 ギター弾き語り曲集」タブ譜(各自御検索下さい)付きの初心者用譜面集である。僕は40代半ばからギターを始めたのだ。「傘がない」「帰れない二人」といった初期曲収録がうれしい。井上陽水さんには一時期、飲みに連れて行ってもらったりよくしていただいた。ある夜、陽水さんに銀座だったかのお店でおごっていただいていたら、店の扉がバーン!と開いて、白いスーツの野坂昭如さんが手に花束を抱えて入っていらっしゃった。店中がシーンとした。ママに花束をプレゼントした野坂昭如が振り返るとそこには井上陽水がいた。
「お、君が井上陽水か...」続けて何か言おうとした。井上陽水を初見しての野坂昭如の一言とは何だったか?もはや高度に過ぎるそれは大喜利である。そして野坂昭如は言ったのだ。「君が井上陽水か...でっかいな~」確かに、陽水さんは背が高いのだけども、大作家が大音楽家を表して「でっかいな~」との感想には意表を突かれてずっこけたものである。

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【4】『内田裕也 反骨の精神』(青志社)

『内田裕也 反骨の精神』

 内田裕也著「内田裕也 反骨の精神」購入。内田裕也さんには大昔にお世話になった。裕也さんの主催するニューイヤーロックフェスティバルに呼んでいただいたのだ。僕は20歳くらいだった。ド緊張しながら楽屋へ挨拶にうかがうと、相当お酒を召されているらしい裕也さんが、やはり相当お酒を召されているらしい元フェイセズの山内テツさんとお話をされていた。「あ、僕ら筋肉少女帯と申します」メンバー全員で頭を下げた。裕也さんは「おっ」と言って僕たちにテツさんを紹介してくださった。「おっ、テツっていうんだ、テツ、俺がお前と初めて会ったのは、お前がロッド・スチュワートとケンカしてるのを、俺が止めたんだよな」そこで「んっ?」という表情になって「んっ?ありゃぁ、ロッドじゃなくてミック・ジャガーだったっけか?」ロッドでもミックでも僕らにしてみれば世界史のようなお話である。スケールが、レベルが違うと驚いた。「反骨の精神」の中でも「誰も闘わなくても俺は闘うんだよ!」などと、レベルの違う名言製造器ぶりでリスペクトである。巻末には中上健次、岡本太郎との対談も収録。「人間、目と目が合うだけで芸術だ」と、岡本太郎先生もまたレベルの違う名言連発なのだが、裕也さんと昔会っていることを全く岡本太郎が思い出せぬまま対談が進むのがおかしい。芸術だもの仕方が無い。この対談は80年代に「平凡パンチ」で連載されていたものからの抜粋だ。当時僕は連載を楽しみに読んでいた。連載担当編集のこぼれ話で、裕也さんが「おっ、次の対談相手、天皇どうかな?天皇」と軽い調子でリクエストした話が大好きであった。

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【5】『キング・クリムゾン全史 混沌と錬修の五十年』(Pヴァイン)

『キング・クリムゾン全史 混沌と錬修の五十年』

「キング・クリムゾン全史 混沌と錬修の五十年」シド・スミス著購入。10代の頃、同級生の高橋君の家の前でウォークマンで「21世紀のスキッツォイド・マン」(当時は「21世紀の精神異常者」というタイトルだった)を聴いてガーン!と来て以来、キング・クリムゾンは一番好きなロックバンドだ。ジャンルで言うとプログレッシブ・ロック、いわゆるプログレにカテゴライズされている。が、ロック、ジャズ、あらゆる音楽を取り入れた唯一無二の音楽で、一筋縄ではくくれない。だからであろうか、彼らの活動をまとめた本書は、二段組863ページ、箱入りでバカみたいに重い。石碑のようである。一体そんなに書くことあるのか、とファンでさへ困惑させるブ厚さにたじろぐ。なかなか読み出すに至らない。そしてさらに混沌とさせられるのは、「全史」とあるが、キング・クリムゾンは今も存在しているのである。解散したわけでは無いので、この後さらに「完全史」「現在進行史」「まだまだやってる史」みたいなこれまたズッシリ重い本が出る可能性もいなめない。まさに「錬修の」必要なバンドなのである。問題はそれだけではない。そのストイックで完全主義の性格から、ロック界の哲学者、カタブツ、と知られていたクリムゾンの中心人物、ギタリストのロバート・フリップが、近年、何を思ったか何があったかわからないが、奥さんのトーヤさんとYouTubeで、夫婦漫才としか言いようの無い面白(さして面白くは無いが)映像を続々とアップし始めたのだ。奥さんが珍妙なかっこう~ムチを持ってみたりヘンなコスプレしたり~をして歌い踊り、その横でダンナのロバート・フリップが往年のロックの名曲をギターで弾くという。一本二本なら「フフ、師匠、お戯れを」と笑って観ることもできたが、ハイペースでガンガン上げてきて「し、師匠、これ、もしかして本気? 何?何なの??」意味がわからない。夫婦漫才も含めてがクリムゾンなのか。とにかく動画が上がる度に僕はこの先のシド・スミスさんの混沌と錬修を想ってなんだかやるせない気分になるのであった。

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【6】『中央線は今日もまっすぐか? オレと遠藤ミチロウのザ・スターリン生活40年』
       (シンコーミュージック・エンタテイメント)
【7】『JAF情報版 最新国産&輸入車全モデル購入ガイド』(JAFメディアワークス)
【8】『地球の歩き方 東京』(ダイヤモンド・ビッグ社)

『中央線は今日もまっすぐか? オレと遠藤ミチロウのザ・スターリン生活40年』『JAF情報版 最新国産&輸入車全モデル購入ガイド』『地球の歩き方 東京』

 他にイヌイジュン著「中央線は今日もまっすぐか? オレと遠藤ミチロウのザ・スターリン生活40年」購入。お風呂でボンヤリめくるのは車の本が最高なので「最新国産&輸入車全モデル購入ガイド2021」購入。"かつて東京五輪開催の予定があった"と数年後に記念となるように「地球の歩き方 東京」購入。

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【9】『学研まんがNEW日本の伝記 織田信長 天下統一をめざした武将』(学研プラス)
【10】『幕末・維新人物伝 坂本龍馬』(ポプラ社)
【11】『Lシフト スペース・ピープルの全真相』(ナチュラルスピリット)

『学研まんがNEW日本の伝記 織田信長 天下統一をめざした武将』『幕末・維新人物伝 坂本龍馬』『Lシフト スペース・ピープルの全真相』

 子供の頃読んでた学習漫画ってアレ何が描いてあったのだろ?との疑問から「学研まんが 織田信長」「コミック版日本の歴史11 坂本龍馬」購入。
スピリチュアル本とオカルト本の差って何だろう?「Lシフト スペース・ピープルの全真相」布施泰和、秋山眞人著購入。

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【12】『タイタンの妖女』(ハヤカワ文庫SF)

『タイタンの妖女』

 あ、図書カードまだ使える。小説が1冊も無いな。カート・ヴォネガット・ジュニア著「タイタンの妖女」購入。高校の頃、授業中に読んでいたら先生に見つかって取り上げられて序盤までしか読んでいなかった。以来数十年ぶりに読み切った。壮大でアイロニカルで感傷的な小説であった。これ高校の頃に読了していたらどう思ったろう?きっと他はよくまだ理解できなかったとしても、センチメンタルの側面だけはヒシヒシと読書少年の心を打ったのではないのかなと思った。

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