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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

第54回:須賀しのぶさん

宝の山で予定崩壊
<プロフィール> 須賀しのぶ(すが・しのぶ)
1972年埼玉県生まれ。上智大学文学部史学科卒業。『惑星童話』で1994年コバルト・ノベル大賞の読者大賞を受賞しデビュー。2013年『芙蓉千里』で第12回センス・オブ・ジェンダー賞、2016年『革命前夜』で第18回大藪春彦賞、2017年『また、桜の国で』で第四回高校生直木賞を受賞。その他の著作に『紺碧の果てを見よ』『くれなゐの紐』『帝冠の恋』『荒城に白百合ありて』の他、野球を題材にした『雲は湧き、光あふれて』『夏の祈りは』『夏空白花』等がある。

 今月の図書カード3万円お買い物コーナーに挑戦するのは須賀しのぶさん。歴史棚から音楽関係まで、足と思考をぐるんぐるんまわしながら厳選した5点6冊はこれだ!
(2020年2月4日 於丸善丸の内本店)

 図書カード3万円使い放題。連絡を頂いた時、ガッツポーズが出ました。
 だって喜ばない作家なんています? 以前からこちらのコーナーを読むたびに、もし自分が呼ばれることがあったらこんな本を買おうこんなことを書こうと果てない夢を見ていたものです。なにしろ当時は今以上にお金がありませんでした。資料代で結構な額になってしまうので、なかなか「普通に楽しむ」ための本を買う余裕もなく、夢見るあまり厳選リストを数日かけて作ったりしていました。仕事しろよ。いやでも、同じことしていた人けっこういると思うんですよね......。
 とにかくそんな夢が実現したわけで、私は意気揚々と再び厳選リスト作成にとりかかりました。お客さんも多いことだし、あまり時間をかけては同行してくださる「本の雑誌社」の編集さんや担当さんのご迷惑になるし、30分ぐらいでパパっといく感じにしよう。ちょうど新連載が始まるから資料として目星をつけていたのにしようか、いやでもせっかく店舗で手にとって見れるんだから欲しい本を優先すべきか......と楽しく悩んで当日を迎え、丸善丸の内本店に向かいました。人文書は3階と教えていただき、うきうきと3階へ。
 結果、30分では終わりませんでした。ですよね。終わるわけないよね。もう楽しくて楽しくて。自宅の近所には、私が住み始めたころは4軒の書店がありましたが、今はひとつもありません。資料として必要な本はだいたいネット書店で揃えてしまいますし、本当に書店に足を運ぶ機会が少なくなってしまいました。それが、もう見渡すかぎり本。上行っても本。下行っても本。テンションが振り切れ、最初に向かった歴史の棚でさっそく予定は崩れました。
 リスト最優先に入っていたのは、イアン・カーショーの『ヒトラー』上下巻でした。カーショーはこのジャンルの第一人者で、この評伝も非常に評判がよい。同作者の近現代ヨーロッパ史もとてもよかった。しかし、かなりの厚みとお値段ゆえ、興味はあるものの金銭的時間的理由で後回しにしていたものなので、今こそ! と意気込んでいたのです。
 もちろん、目当ての本はありました。というか一目でわかりました。背幅厚すぎて。
 とくに2巻、え、これ広辞苑より厚くない? 白水社さん製本がんばったな......うん、まあそりゃこれだけ厚ければ2万超えるよね......。予想をはるかに越える厚さに若干腰の引けた状態でぼそぼそ話す我々。そう、これで2万を超えるのです。必要な資料でも2万を超えるとかなり悩みます。だからこそ、こういう本はこの機会に! と思っていたはずなのに、いざ前にすると迷う迷う。
 もちろん後悔はしないでしょう。でも、夢に見た図書カード3万使い放題なんですよ。今日しかないんですよ。3分の2を早々に使っていいの? 3万超えの本をポンと買った方もいらっしゃるしそういうのもアリですよ、と「本の雑誌社」の編集さんはおっしゃいましたが、やはり他もじっくり見て楽しみたいということでいったん保留。たしか、ご迷惑になるといけないから30分で終わらせようとか殊勝なことを言っていたような気がしたんですが、気のせいだったようです。人間、やはりお宝の山を前にして理性を保つことは難しい。私はウロウロしたいのです!
 そんなわけで、足も思考もぐるんぐるんまわしながら選んだ本はこちらです。

須賀しのぶさんが図書カードで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『第三帝国の到来 第三帝国の歴史』上下 リチャード・J・エヴァンズ、大木毅監修、山本孝二訳/白水社 ¥9,240
『製パンマイスターとナチス ドイツ近現代社会経済史の一側面』 鎗田英三/五絃舎 ¥4,950
『ベルリン・フィル その歴史秘話 1882-1944』 菅原透/アルファベータブックス ¥2,420
『東ドイツ史 1945-1990』 ウルリヒ・メーラート、伊豆田俊輔訳/白水社 ¥3,080
『東欧を知る事典』 柴宜弘、伊東孝之、南塚信吾、直野敦、萩原直 監修/平凡社 ¥10,120
合計 6冊 ¥29,810

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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