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第53回:阿部智里さん

予算オーバーなんか怖くない!
<プロフィール> 阿部智里(あべ・ちさと)
1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く著書「八咫烏シリーズ」は累計130万部を越える大ベストセラーに。松崎夏未氏が『烏に単は似合わない』をWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)にて漫画連載中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

購入書籍No.   1234567891011

【1】『宝石の国』〈1〉~〈10〉(講談社)

『宝石の国』〈1〉~〈10〉

 まずは宝石関係だ。  私は、小さい頃からキラキラしたものが大好きだった。デパートに行けば宝飾品売り場の前から動かなくなり母を困らせたし、縁日では必ず宝石すくいをして、アクリル製の「宝石」をほくほく顔で持ち帰ったものだった。校庭の砂の中から石英の結晶を見つけるのも得意で、父にねだって、水晶が取れるという川原に連れて行ってもらったこともある。現在でもミネラルショーなどに行っては、ちまちまとお手ごろ価格で気に入ったものを買い足している。
以前から鉱物や宝飾品をモチーフにしたファンタジーを書きたくて自分でも構想を練っていたのだが、今回、『宝石の国』を一気読みして非常に感動した。独特の世界観と鉱物、宝石特有の設定(硬度や劈開など)が効いていてめちゃくちゃに面白かった。

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【2】『西欧中世宝石誌の世界 アルベルトゥス・マグヌス『鉱物書』を読む』(八坂書房)
【3】『ナショジオが行ってみた究極の洞窟』(日経ナショナルジオグラフィック社)
【4】『アクセサリーの歴史事典〈上〉頭部・首・肩・ウエスト』(八坂書房)

『西欧中世宝石誌の世界 アルベルトゥス・マグヌス『鉱物書』を読む』『ナショジオが行ってみた究極の洞窟』『アクセサリーの歴史事典〈上〉頭部・首・肩・ウエスト』

同時に買った『西欧中世宝石誌の世界 アルベルトゥス・マグヌス『鉱物書』を読む』や『ナショジオが行ってみた究極の洞窟』、『アクセサリーの歴史事典〈上〉頭部・首・肩・ウエスト』も合わせて、キラキラの世界に積極的に溺れていきたい。

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 そして、海と水棲生物も大好きだ。
 実は、私が人生で目にしたものの中で一番美しいと思ったものは、宝飾品でも鉱物でもなく、沖縄の西表島で見た珊瑚礁だった。
 それまでもテレビや写真で珊瑚礁を見ていたが、実物との差があれ程あるとは思わなかった。珊瑚やイソギンチャクはネオンサインのように色とりどりに発光し、ふわふわの熱帯魚が妖精のようにあちこちを泳ぎまわっている様子は御伽噺の世界にでも迷い込んだかのようで、深くて綺麗な海を泳ぐ感覚は空を飛ぶ感覚に近いのだと初めて知った。泳いでいる最中、大きくて暗い洞穴と、一抱えもあるようなウツボを見つけて、この広い水の世界には本当に人間の知らない生き物が棲んでいるかもしれないと、異様に興奮したのが9歳の夏のことである。
 以来、海獣や大きな魚にロマンを感じるようになってしまい、某水族館の年間パスポートを所有するに至った。旅先でもなるべく水族館には行くようにしている。

【5】『水族館の文化史 ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界』(勉誠出版)
【6】『驚異と怪異 想像界の生きものたち』(河出書房新社)
【7】『世界魚類神話』(八坂書房)
【8】『海洋大図鑑』(ネコ・パブリッシング)

『水族館の文化史 ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界』『驚異と怪異 想像界の生きものたち』『世界魚類神話』『海洋大図鑑』

『水族館の文化史 ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界』や『驚異と怪異 想像界の生きものたち』(※人魚について扱っている)、『世界魚類神話』などはまさにそんな世界へのロマン欲を刺激するもので、これから読むのがとても楽しみだ。そしてものすごい情報量を見やすい写真や図で説明している『海洋大図鑑』! オーバーした一万円分が実はこれで、迷っていたところを担当編集氏が「買っちゃえ、買っちゃえ」と唆してくれたのだが、実際買ってとても良い本だったので彼女には心から感謝している。

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【9】『家のネコと野生のネコ』(エクスナレッジ)

『家のネコと野生のネコ』

 さて、『家のネコと野生のネコ』は、この最高に魅力的な表紙が目に入った瞬間に買うしかないと覚悟を決めた。  私は犬と育ったので、もともとは大の犬好きだ。愛用の犬図鑑を、同じく犬好きの父に取られたので、本当は新しい犬図鑑を求めてこのコーナーに来たはずだったのだが、見事に猫に転んでしまった。

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 余談だが、15年間苦楽を共にした犬が死んでしまい、ペットロス状態だった我が家に転がり込んできたのは、新しい犬ではなく元野良の猫であった。気温がぐっと下がった今日この頃、「寝室には入れん」としかつめらしく言っていた父の布団で、家猫となった彼はのびのびと惰眠を貪っている。

【10】『裸一貫!つづ井さん〈1〉』(文藝春秋)

『裸一貫!つづ井さん〈1〉』

 そして『裸一貫! つづ井さん〈1〉』。
 以前から、私と同年代と思しきつづ井さんの愉快なコミックエッセイは楽しく拝見していたのだが、この本を出す際、彼女がnoteで発表した「決意表明」がSNSで話題となっていたらしい。つづ井さんらしく実に明るく前向きでありながら、現代を生きる女性に対したくさんの問い掛けを含んだ言葉であった。要約してニュアンスが異なってしまうのが嫌なのでここであえて説明はしないが、彼女の言うところの「『女性が楽しく生きている』ことをただ描いたもの」が本として世に出たことを、同じような立場で生きる人間として、心から嬉しく思っている。

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【11】『present 山口真帆1st写真集』(宝島社)

『present 山口真帆1st写真集』

 ちょうど取材が行われたこの日は、暴行被害を訴えNGT48を出て行った山口真帆さんの誕生日にして『present 山口真帆1st写真集』の発売日であった。
 生まれて初めて個人の写真集を買ったのだが、過激な格好が多くてびっくりした一方、非常に感心したし、感動してしまった。
 現在の日本では、暴行の被害にあった女性は「泣いていなければいけない」「貞淑でなければいけない」「弱者でなければ被害を訴える権利がない」「たとえ傷ついていなかったとしても、傷ついたふりをするのが賢いやり方なのだから、そうしなければおかしい」──そういった雰囲気が少なからず存在しているように感じる。
 そんな中でこれを出したのは、彼女と、彼女を支える周囲の覚悟と意気込みの表れだと思ったし、純粋に美しいと思った。
 山口さんはまだ女優さんとしては未知数で、すべてこれからというところだが、逆に言えばそれはとっくに、彼女は「暴行の被害にあった女性」などではないのだということでもある。
 最初は応援するつもりで買ったのだが、将来彼女がどんな姿になっていくのか、ただただ楽しみになった。それは実際に写真集を買ったからこそ得られた気持ちであり、ネットでニュースを追っているだけでは決して分からなかったことだろう。

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 今回書店を回遊してみて、改めて「自分の好き」を確認出来たような気がする。
 最後の最後、自腹分を払おうとしたらまさかの現金不足で、担当編集氏から1万円を借りることになったのだが、その時はもう、企画だということも忘れて皆で爆笑してしまった。
 私にとって、仲のよい女友達と服を買いに来たような、とても充実した一時であった。

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