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第5回:篠田節子さん

物語の気配を感じとれ!リアル書店でわくわく大人買い
<プロフィール>1955年 東京生まれ。
東京学芸大学学校教育学科卒業。八王子市役所勤務の後1990年「絹の変容」で集英社小説すばる新人賞受賞、1997年「ゴサインタン」で山本周五郎賞受賞、「女たちのジハード」で直木賞受賞。2009年「仮想儀礼」で柴田錬三郎賞を受賞。「弥勒」「讃歌」「ホーラ」等著書多数。最新作は「薄暮」日本経済新聞社刊、週刊朝日誌上で「ライン」を連載中。

購入書籍No.   12345678910111213

【1】『グローバリズムへの叛逆 反米主義と市民運動』
【2】『アメリカ外交と21世紀の世界 冷戦史の背景と地域的多様性をふまえて』(中央公論新社)(昭和堂

『グローバリズムへの叛逆 反米主義と市民運動』 『アメリカ外交と21世紀の世界 冷戦史の背景と地域的多様性をふまえて』

 この2冊は、この週末参加する予定の合宿ゼミ(八王子セミナーハウス主催「アメリカ発世界経済危機と現代世界」)の資料。著者である両先生の講義前に、ざっと目を通しておかなくてはならない。
 この種の話題はネット→テレビ→新聞→雑誌と情報が古くなる。そのせいか、新聞雑誌の購読者数が落ちていると言われるが、断片に過ぎない最新情報だけ集めたところで何が起きているのか、経緯が掴めない。情報量の多さと正確さ、時間軸に沿った説明となると新聞、雑誌といった活字メディアに軍配が上がる。さらに問題の本質を探り、この先を予測するとなると、たとえ発行から数年が経っているにしても、やはり単行本で仕入れた知識やそこで展開される論理が有効だ。

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【3】『マダガスカル島 西インド洋地域研究入門』
【4】『サイチョウ 熱帯の森にタネをまく巨鳥』
【5】『熱帯アジア動物記 フィールド野生動物学入門』(東海大学出版会)

『マダガスカル島 西インド洋地域研究入門』 『サイチョウ 熱帯の森にタネをまく巨鳥』 alt=

 これぞ衝動買い。題名を見ただけでアドレナリン出まくり。「南の島」「熱帯雨林」と聞いたとたんに、航空券を握りしめて飛んで行きたくなる私。今の気分はカルチャーよりネイチャーだ。とはいえ暇も金もなく、近場の激安ツアーでお茶を濁す。

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【6】『サイパン ロタ&テニアン 地球の歩き方』(ダイヤモンド社)

『サイパン ロタ&テニアン 地球の歩き方』

 「地球の迷い方」と異名を取る、アテにならぬガイドブックだが、現地に行って「えーっ、これって、嘘じゃん」とやる瞬間がまた楽しい。だいたいガイドブック通りの旅など、どこが面白いものか。なお、主人公が海外旅行先でさんざんな目に遭うCSドキュメンタリー「史上最悪の地球の歩き方」は、今、一番のお気に入りだ。

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やはり旅は、旅情や恋やうまいもんより冒険が一番。(他人がやるのは特に)
というわけで、

【7】『コンゴ・ジャーニー』上下巻(新潮社)

『コンゴ・ジャーニー』上下巻

 「果てしない熱帯雨林、肉をむさぼるアリの大群、一発ぶっぱなす機会を窺っている兵士たち、同行者は、理想家肌のアメリカ人動物学者と女たらしのコンゴ人生物学者」という帯文を見たら、読まずにはいられない。ノンフィクションだが、実はこの帯にあるような小説こそ、自分で書きたい。特に登場人物は、こうでなくちゃ。

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【8】『フラグメント 超進化生物の島』(早川書房)

『フラグメント 超進化生物の島』

 こちらの帯もそそる。
 「これは生物学的地獄絵巻だ」
 さてどんな世界が展開されるのか。クライトン亡き後、科学的知識と論理的思考の上にぶっ飛んだ話を構築する作家を待っていた。期待に応えてくれるか。はやる気持を押さえつつ、これは旅に連れていこう。サイパンに向かう深夜便のエコノミー座席で読んだら、さぞ気分を盛り上げてくれるだろう。

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【9】『雑食動物のジレンマ ある4つの食事の自然史』上下巻(東洋経済新報社)

『雑食動物のジレンマ ある4つの食事の自然史』 上下巻

 最近流行の「草食男子」と「肉食女子」。おまえは何だと問われたら、「雑食オバ」と答えよう。今回のお買い物だって安全保障の大先生から戸梶圭太まで。雑食のスカベンジャーほど強い物はない。天変地異などものともせず、死骸から枯れ枝まで、何でも食って生き延びる。豊かなときにはグルメできるのもうれしい。しかしちょっと待て、それって結構、危険じゃないか?と迷って選んだ上下巻。

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 そして専門の国産ホラーをチェック。

【10】『センチュリー・オブ・ザ・ダムド』(早川書房)

『センチュリー・オブ・ザ・ダムド』

 日本ホラー小説大賞の最終候補作を全面改稿したものらしい。戸梶圭太の作品は雑誌で読んで、そのバカっぷりを気にいっている。最終候補作って、つまり落選作のこと。直木賞落選作、山本周五郎賞落選作、ホラー大賞落選作。「栄光の落選作」は、古いSFやミステリを中心に、いくらでもある。場内騒然、選考委員一名憤死、みたいなやつがあれば読みたいものだ。文体は、うん、戸梶圭太だ。2段組みハードカバー。さて食えるか、食えないか、ハイリスクハイリターンな臭いがする。ぞくぞく......。

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【11】『鉄槌』(双葉社)

『鉄槌』

 まったく話題になってないが、最近読んだ「てのひらたけ」が、思いの外、上質なホラー幻想譚だった。そこで今度は長編に挑戦、とあちこちの本屋で探したがない。ネットで当たっても、「出品者からお求めになれます」とは、どういうこっちゃ? しかしさすが大型書店。目指す「うなぎ鬼」はなかったが、丸の内丸善の店頭には、何冊か高田侑の本があった。とはいえ、長身の私でさえ、踏み台を使わないと取れない上の方の棚。(こういうあんまりな場所に置かれていたって、面白い本はあるので、皆様、レジ横の平台以外にもぜひ目を向けてください)ぱらぱらめくると、「フェイバリット」の方は、ほんわかした恋愛小説風で、今回の探し物とは少しテイストが違う。「鉄槌」はサスペンスと銘打たれ、ページを開いても、グロ系ホラーの生臭みも、人情系ホラーのアミノ酸調味料臭もない。いい感じだ。実物に触ってページをめくれるのが、リアル書店の良さか。提示された作品情報以上の、作品の醸し出すムードが感じられ、これが広告やレビューに頼らず、望む本をかぎ当てる手がかりになる。

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【12】『ブラバン』(新潮文庫)

『ブラバン』

 「話の展開ではない、文章だ」という文学作品の評価基準についての物言いをどこかで聞いた。と、言われても、現代文学の過剰に口語的な、いささかカジュアルすぎる響きは、あまり好きではない。今、名文家と言われてまっ先に思い浮かぶのは、エンタテイメント作家として認知されている津原だ。異様に才気走った短編集をいくつも書いているが、評価がついていってない。で、「ブラバン」だが、ぱらぱらめくると、「僕」という一人称、登場人物はさん付けで、こういうのは苦手だ。しかも中身は青春小説。以前ジュニアノベルを書いていた人だから、まあそれもありか、と思いつつページを繰ると、一人称「僕」小説に似合わぬ、硬質な文体が現れた。しかもときおり出てくる長文が、リズムも文法もびしっとキマっている。この人のことだから、プロットも月並みな青春小説では終わらせないだろう、と期待して買う。

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 最後は、

【13】『ドロップ2』(林製紙株式会社)

『ドロップ2』

 何だ、こりゃ。ト、ト、トイレットペーパー...。いくらなんだってこれは嫌だ。
「お手洗いにて一回の用足しで読み切れる分量の掌編小説で、なかなか味わい深く怖い話でございます」と本のソムリエが隣でささやく。
 嫌だったら嫌だ! そんな、まさか鈴木光司の著者近影が印刷してあったりして ......。
「夜など、個室でつらつら読んでおりますと、本当に尻の毛がよだってまいります」
 余計に嫌だ...
「嫌がらせに、どなたさまかにプレゼントなさるのもよろしいのでは?」
 お、その手があったか! 小説教室時代からの悪友、鈴木輝一郎が、来週上京してくる。つい最近上梓した「信長と信忠」(毎日新聞社)のキャンペーンのためだ。会食を予定しているのだが、良い土産ができた。即、購入。滞在先のホテルエドモントで、長い夜を楽しんでもらえるに違いない。

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