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第44回:岸本佐知子さん

アッチラ・オブ・ドーパミン
<プロフィール> 岸本佐知子(きしもと・さちこ)
翻訳家。訳書にリディア・デイヴィス『話の終わり』、ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』、ニコルソン・ベイカー『中二階』など多数。編訳書に『変愛小説集』、『居心地の悪い部屋』、著書に『ねにもつタイプ』など。

購入書籍No.   123456789101112

【1】『火の後に』(幻戯書房)

『火の後に』

 大正時代に活躍した片山廣子(松村みね子)の翻訳を集めたもの。ダンセイニ卿、イエーツ、グレゴリー夫人など。自分のことを考えても、翻訳を始めた当時と今とではネットのあるなしで飛躍的に調べ物などが楽になったというのに、大正時代にいったいどうやってどんな翻訳をしたのか、とても興味がある。あと装丁も素敵(そう私はジャケ買い野郎)。

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【2】『満ちみてる生』(未知谷)

『満ちみてる生』

 私には、ネット上でひそかに尊敬している本読みの人が何人もいて、その人たちがいい! と言うものは何でも気になるし読みたい。この本もその一つ。本当は同じシリーズの『デイゴ・レッド』も読みたかったが、店頭にはなかった。

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【3】『屋根屋』(講談社)

『屋根屋』

 ものすごく面白いのに、なぜかすぐに本が絶版になってしまって地団駄をふむ作家のツートップが、私にとっては河野多惠子と村田喜代子だ。最近たまたま『真夜中の自転車』と『蟹女』を読み返してやっぱり目茶苦茶面白かったところに棚で目が合ったので、迷わず購入。たしか以前この人の短編で屋根屋が出てくる、現実と幻想の混ざり具合が絶妙に変なのを読んだ気がするので、これもそんな話ではないかと期待。ちなみに『真夜中の自転車』も『蟹女』も『ルームメイト』も『鍋の中』も『望潮』も絶版。ぜんぶまとめて復刊希望。あと河野多惠子の『不意の声』と『妖術記』と『みいら採り猟奇譚』も頼みます。

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【4】『エコー・メイカー』(新潮社)

『エコー・メイカー』

 パワーズの本はだいたい持っているのになぜかこれだけ買いそびれたままで、こうなったら文庫化まで待とうかと思ったけれど、新潮社はそういうことをしないストロングスタイルなのだった。でも実際に手にとってみると装丁が本当にすばらしく、ジャケ買い野郎のくせに今までこれを持っていなかったなんて不覚だった。

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【5】『あの頃』(中央公論新社)

『あの頃』

 武田百合子の単行本未収録エッセイ集なんて、そんなもの秒で買わないでどうする! と思い、じっさい書店で見かけては何度も買おうとしたのだが、あと一歩のところで買えなかったのは、表紙の百合の絵が怖かったからだ。すみません。昔から私は赤い百合がすこし怖い、血を吸ったあとみたいで。

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【6】『本物の読書家』(講談社)

『本物の読書家』

 名前がずっと気になっていたところに、棚にあるのを見たら装丁が好ましかったので出会い頭に。群像新人文学賞といえば木下古栗や村田沙耶香を見いだした賞だし、きっと面白いにちがいない。

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【7】『小さな部屋 明日泣く』(講談社文芸文庫)

『小さな部屋 明日泣く』

 さいきん『怪しい来客簿』(文春文庫)をまたしみじみ読み返したのがきっかけで色川武大ブームが個人的に到来していて、同じ講談社文芸文庫に入っている『生家へ』を読んだらやっぱり面白かった。武田百合子もそうだけれど、どうして何を書いても必ず面白いなんていうことが可能なのか。

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【8】『百句燦燦 現代俳諧頌』(講談社文芸文庫)

『百句燦燦 現代俳諧頌』

 去年読んだ『十二神将変』(河出文庫)が、もうもう鼻血が出るくらい激しく好きすぎて去年のベストだったのだが、句の方面は何となく手を出しそびれていた(すみません)。文芸文庫には他にも『王朝百首』『秀吟百趣』などいくつか著作があるなかで迷わずこれにしたのは、いぜん紀伊國屋書店新宿本店でやった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』関連のフェアで選書されていたから。俳句とMMFR...? どういうことかわからないままに、期待が高まる。

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【9】『キャッチ=22』上下(ハヤカワepi文庫)

『キャッチ=22』上下

 『キャッチ=22』はOL時代に読んだはずなのに、なぜか本棚に上巻しか見当たらず、いつか下巻を買いなおそうと思っていたら素敵な新装版が出たので......というのもあるけれど、一番の理由は松田青子さんが解説を書いているから。私は松田さんの書く書評や解説がこの世で一番くらいに好きで、どうやったらこんなふうに書けるようになるんだろうと憧れと尊敬が止まらないが、たぶんいっぺん死んで生まれ変わっても無理だろう。

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【10】『The Best American Science Fiction and Fantasy 2016』(Mariner Books)

『The Best American Science Fiction and Fantasy 2016』

 洋書はほぼすべて脊髄反射でジャケ買い、が基本。なのでこれも即。でもカレン・ジョイ・ファウラー編のSFアンソロジーなんて、聞いただけで買うに決まっている。目次を見ると、ケリー・リンク、キジ・ジョンソン、サルマン・ラシュディなど有名作家の作品もあるが、大部分は聞いたことのない作家ばかりで、胸がときめく。

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【11】『The Standing Chandelier』(The Borough Press)

『The Standing Chandelier』

 ぜんぜん知らない版元から出たぜんぜん知らない作家の小説。タイトル+ジャケ買い。あるカップルの元に男の親友(かつ元カノ)から巨大な自作彫刻が送られてきて、2人は永遠にそれと共に暮らさなければならなくなる。何それ。

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【12】『Frankenstein in Baghdad』(Penguin Group USA)

『Frankenstein in Baghdad』

 イラクの作家。アメリカ占領下のバグダッドで、政府への抗議のために、瓦礫の中から掘り出した遺体をつぎはぎして一人ぶんの遺体を作ったところが、そのつぎはぎ遺体が行方不明になり、直後から街でつぎつぎ殺人が......という話らしい。何それ。

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 こうして入手したものを改めて並べてみると、我ながら面白そうなもの買ったな、と顔がにやけてくるが、同時に泣く泣く諦めたあれやこれやの本のことも脳裡をよぎる。いつか自腹で家に連れて帰るから待ってろよ、と心の中で誓った。
 今回、カートに好きな本を好きなだけ入れる! ということをやってみて面白かったのは、「あ、自分はこんな本が好きだったのだな」と、今まで自覚していなかった気づきがあったことだ。結果的に全部は買えないにしても、自分の密かな願望がわかって面白いので、みなさんも一度やってみてはどうでしょう。ただしあとで棚に戻すのが大変だけれど。それにお店の人にも引かれるけれど。

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