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第41回:森絵都さん

自腹を恐れず「殿様買い」
<プロフィール> 森絵都(もり・えと)
 1968年東京都生まれ。1990年『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。1995年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、1999年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。『永遠の出口』『ラン』『この女』『漁師の愛人』『クラスメイツ』『みかづき』など、著書多数。

購入書籍No.   12345678910111213141516

【1】『京都歴史地図帖 探訪!!』(小学館クリエイティブ)
【2】『古地図で歩く古都・京都』(三栄書房)

『京都歴史地図帖 探訪!!』『古地図で歩く古都・京都』

 まず向かったのは2階の地図売り場だ。
「本じゃなくて、地図でもいいんですか」
 念のため、松村さんに確認すると、地図でもなんでも構わないとのこと。
「図書カードが使えるものなら大丈夫です」
「3万円以内に収めればいいんですね」
「いえ、いくら買っていただいてもいいんですけど、3万円を超えた差額は自腹になってしまいます。最後に消費税も加算されるので気をつけてくださいね。ふふ」
 松村さんは「自腹になります」「自腹です」と3回くらい念を押し、私の懐が痛まないようにひどく案じてくれている。
「はあ、自腹」「自腹ですか」と復唱しながら到着した地図売り場はさすがの品揃えで、ここならあると思っていた古地図も容易に見つかった。
「あった!」
 逸る手を玄人向けの本格的な1冊に伸ばすも、本格的すぎて読めそうにないので静かに棚へ戻し、迷ったあげく、初心者向けの『京都歴史地図帖 探訪!!』と『古地図で歩く古都・京都』を籠へ。まずは順調な滑りだしである。

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【3】『50トピックでトレーニング 英語で意見を言ってみる』(ベレ出版)

『50トピックでトレーニング 英語で意見を言ってみる』

 さて、次はどこへ行こうかな、とエレベーター前の各階案内を見ると、8階の児童書売り場が目についた。そこで8階へ狙いを定めるも、児童書売り場へ行きつく前、通りかかった英語教材売り場で足が止まる。 「あ、やっぱり、ここも見ます」
 私はこのところ英作文の良い教材を探しているのだけれど、市場に出回っている英語本の大半は「試験のため」か「会話のため」のもので、マニアックなニーズに応えてくれる本が少ない。が、そこはやっぱり大型書店さん、かなり役立ちそうな一冊(『50トピックでトレーニング 英語で意見を言ってみる』)が見つかったので、籠へ。

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【4】『三人寄れば、物語のことを』(青土社)

『三人寄れば、物語のことを』

 その後、軌道を修正して児童書売り場へ移動するなり、松村さん、栗原さん、私──と、三人三様の顔が一斉にほころんだ。
「やっぱり、いいですね、児童書」
「ほんと。カラフルだし、和みますね」
「ふふ」
 くつろいだ気分で棚をながめていると、上橋菜穂子さん、荻原規子さん、佐藤多佳子さんの鼎談集『三人寄れば、物語のことを』を発見。これは読まなきゃ、と迷わず籠へ。

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【5】『ムーミンキャラクター図鑑』(講談社)

『ムーミンキャラクター図鑑』

 さらに探索を続けた私は、ここで見つけてしまった。見つけてしまったが最後、タダでは通りすぎられないトーベ・ヤンソン特設コーナーを! ヤンソンファンの私の書棚はすでに結構なヤンソン・コレクションを誇っているのだが、そこにはまだ未所蔵の一冊(『ムーミンキャラクター図鑑』)があるではありませんか。本体2,900円。高い。図書カードありがとう。ほくほくと籠へ。

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 いいもの見つけたと悦に入る私の横では、過日、『うんこ漢字ドリル』の好評を教えてくれた栗原さん(男児の母)が、『おしりたんてい』の人気を熱く語っていた。
「やっぱり、子どもって好きですね、うんちとか、おしりとか。その点、やっぱりクレヨンしんちゃんって最強ですよね。うんちあり、おしりあり......」
「おならあり、ねえ」
「ふふふ」
 などと語らいながら、エレベーターで4階へ。移動中はいつも松村さんが、「今、ざっくり××円くらいです」と、籠の中身の総額をざっくり教えてくれる。
「じゃ、あとざっくり××円くらいですね」
「そうですね、ざっくり。ただし、最後に消費税がつきますから、気をつけてくださいね。3万円を超えると自腹ですからね。ふふ」
 ちなみに、この時点でのトータルはざっくり1万円。遅々たるペースながらも、私には余裕があった。ここまでは行き当たりばったりで来たものの、この先の買い物には緻密な計画を用意していたのだ。

【6】『中世の〈遊女〉』(京都大学学術出版会)
【7】『中世日記の世界 史料で読み解く日本史』(ミネルヴァ書房)
【8】『絵図にみる荘園の世界』(東京大学出版会)

『中世の〈遊女〉』『中世日記の世界 史料で読み解く日本史』『絵図にみる荘園の世界』

 「つぎは、歴史の本を見ます」
 いざ出陣、と赴いた勝負所は、4階の歴史本売り場。専門書の強気な価格設定からして、ここで一気に総額がはねあがるはずなのだ。
 はたして、はねあがりました。『中世の〈遊女〉』『中世日記の世界 史料で読み解く日本史』『絵図にみる荘園の世界』──籠に入れた3冊はいずれも3,000円超えの大物ばかりで、まさに「殿様買い」を堪能。仕事の資料はケチケチできないと自分に言い訳をするも、私の場合、資料探しがエスカレートして方向を見失い、個人的な趣味の世界へ走りがちなのも否めない。今回の3冊では『絵図にみる荘園の世界』がきな臭い。構想中の小説に荘園なんて出てこないのだ。出す気もない。なのに、いろいろ調べているうちに、どうしても「大判でカラー頁もある荘園の本」がほしくなってしまった。

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 「おっ、今の売り場でだいぶ稼ぎましたね」
 戦術通りの総額アップに、松村さんもご満悦だ。
「目下、ざっくり××円くらいです。最後にちゃんと計算して調整しましょう。オーバーすると自腹になっちゃいますからね。ふふ」
 まるで娘の小遣いを案ずる母のごとく、どこまでも親身になってくれる松村さん──なのだが、人間の心理とは不可解なもので、「オーバーすると自腹」と何度も言われていると、なにやらだんだん「もしかしたら、オーバーして多少の自腹を払うくらいのほうがいいのかも」という気持ちになってくるのである。あるいは、「むしろオーバーしたほうが松村さんは喜んでくれるかも」と。いや、松村さんは邪念のかけらもないさわやかな方なので、これは私の邪念なのですが。

 3万円超えるべきか、超えないべきか。それが問題だ──と懊悩しつつ向かった最後の売り場は、3階の文芸書売り場。文芸書は日頃からわりとこまめにチェックしていて、買いたい本は大方買ってしまっているつもりでいたため、ラストの調整用に残しておいたのだけど、改めて棚を見まわすと、やはりこれまで見落としていた本や、いつか買おうと思っていた「書店に積ん読本」も数々目に留まる。あれもこれもとつぎつぎ籠へ。

【9】『長いお別れ』(文藝春秋)

『長いお別れ』

 中島京子さんの『長いお別れ』は、どこかで紹介を見かけたときから読みたかった一冊。

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【10】『短編少女』(集英社文庫)
【11】『短編少年』(集英社文庫)

『短編少女』『短編少年』

 短編アンソロジーの『短編少女』と『短編少年』もテーマと執筆陣に惹かれて気になっていた。

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【12】『魔術師のおい』(光文社古典新訳文庫)
【13】『ライオンと魔女と衣装だんす』(光文社古典新訳文庫)
【14】『馬と少年』(光文社古典新訳文庫)

『魔術師のおい』『ライオンと魔女と衣装だんす』『馬と少年』

 『ナルニア国物語』の新訳は完結を待ってから買うつもりだったが、この際だから購入。

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【15】私の仕事(朝日新聞出版)

『私の仕事』

 緒方貞子さんの手記『私の仕事』は目に入って一秒後に籠へ入れていた。

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【16】『あの頃』 (中央公論新社)

『あの頃』

 どれもこれも早く読みたくてうずうずしてくるが、なんといってもこの日一番の収穫は、武田百合子さんの未収録エッセイを収めた新刊『あの頃』だ。私はこの著者の文章が大好きで、あまり多作の方でなかったのを残念に思いつつ、同じ本を何度もくりかえし読んでいた。が、まだ未収録の作品があったのだ。しかも、こんなに分厚い本(533頁)が編めるほど!

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 興奮さめやらぬまま買い物を終え、重たい籠を会計へ。計16冊を選ぶのに要した時間は、約2時間45分。松村さん曰く、「なかなか早いほうですよ」。
 で、問題の総額は──30,463円! オーバーしましたよ、松村さん。ふふ。

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