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第39回:有栖川有栖さん

アフター・サイン会のお買い物
<プロフィール> 有栖川有栖(アリスガワ・アリス)
1959(昭和34)年、大阪生れ。同志社大学卒。1989(平成元)年『月光ゲーム』でデビュー。書店勤務を続けながら創作活動を行い、1994年作家専業となる。2003年『マレー鉄道の謎』で第56回日本推理作家協会賞、2008年『女王国の城』で第8回本格ミステリ大賞を受賞。著書に『双頭の悪魔』『幽霊刑事』『迷宮逍遥』『赤い鳥は館に帰る』『絶叫城殺人事件』『作家小説』『鍵の掛かった男』『狩人の悪夢』など。

購入書籍No.   1234567891011121314

【1】『山怪 弐』(山と溪谷社)

『山怪 弐』

 サイン会を無事に終えたら、ひと休みにして、さて1階からスタート。
「ほら、見て。僕は新刊だよ!」と叫んでいる本たち(私のも交っている)の中ですぐ目に留まったのが、レジ近くにディスプレイされた『山怪 弐』だ。ミステリ以外に細々と怪談も書いている私は、これに先立って出た『山怪』を読んでいる。現代の『遠野物語』といった趣の本で、山の怪異に触れられる上、日本全国の山々を旅している気分になれるのが楽しかった。好評につき続刊が出たのは知っていた。「これかぁ」とまず購入。

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【2】『文庫解説ワンダーランド』(岩波新書)

『文庫解説ワンダーランド』

 岩波書店のPR誌『図書』の連載をまとめた『文庫解説ワンダーランド』は、買おうと決めていた。斎藤美奈子さんの本はこれまでもよく読んできたし、私自身がけっこう文庫解説を引き受けるのでテーマにも興味があったし、本文中に私が書いたある文庫解説に言及されているのを知っていた。『図書』の連載でその回を読んだのである。ヘボ解説と腐されていなかったのは幸いだ。

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【3】『洞窟ばか』(扶桑社)

『洞窟ばか』

『洞窟ばか』は、洞窟という言葉にひかれて手に取った。洞窟探検家の本らしいが......あ、テレビを点けたまま夜中に仕事をしていた時、この人を観たぞ。尋常でない旅をする人を紹介する(らしい。その時、初めて観た)『クレイジージャーニー』という番組に出ていたではないか。帯にもそう書いてある。前人未踏の洞窟に入り、その先がどうなっているか分からないのに17センチの隙間に潜り込んで前進を続けるのを観て、閉所恐怖症の私は「狂ってる......」と息を呑んだ。その人の書いた本なら恐ろしそうだけれど見逃せない。春がきたら広々とした公園のベンチで読もう。

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【4】『「本をつくる」という仕事』(筑摩書房)

『「本をつくる」という仕事』

 その近くに『「本をつくる」という仕事』を見つけ、迷わず買い物籠へ。本作りの裏方さんに関する本はたいてい面白い。
 まだ4冊しか選んでいないが、文芸書・文庫・新書を漁るため2階へ上がってみる。

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【5】『誰もがポオを読んでいた』(論創社)

『誰もがポオを読んでいた』

 論創海外ミステリの新刊『誰もがポオを読んでいた』が出ていたので籠へ。このシリーズを集めているのだ(コンプリートはできていないが)。ん、この叢書の今月の配本はこれ1冊だけか? 5冊ぐらい同時発売でもよかったんやで。
 論創社は、日本の古い探偵小説の叢書も出しており、漏れがあるけれどそちらも集めている。次巻は『甲賀三郎探偵小説選II』だったはず......なのだが、まだ出てないやん。後日に自腹を切るしかない。

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【6】『魔術師の帝国 1ゾシーク篇』(アトリエサード)

『魔術師の帝国 1ゾシーク篇』

『魔術師の帝国 1 ゾシーク篇』を購入。このナイトランド叢書を集めているから。──もしかして私、叢書に弱いですか?「買い支えたい」という意識強すぎ?
 全集にも弱くて、目下は刊行中の谷崎潤一郎と夢野久作のものを集めている。この2つも新刊が出ていなかったので、後日に自腹で。

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【7】『谷崎潤一郎の恋文』(中央公論新社)

『谷崎潤一郎の恋文』

 そのかわり、『谷崎潤一郎の恋文』を籠へと入れる。急いで買わなくてもいいか、と何度も書店で見送ってきた本で、いずれ入手するつもりだった。すぐには読まないとしても、そろそろ買っておかないと忘れてしまいそうだ。

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【8】『筒井康隆コレクションⅠ 48億の妄想』(出版芸術社)

『筒井康隆コレクションⅠ 48億の妄想』

 中立ちの棚を見て回っていたら、分厚い『筒井康隆コレクション』が並んでいたので、足が止まる。これなぁ。持っておきたいのだけれど、収録されているのは文庫などですでに所持しているものが大半だし、揃えたら場所を取るのでためらっていたのだ。筒井先生には熱いファンが大勢いるから、買い支えねば、という意識も薄かったのだが......。
 やっぱり買ってしまおうかな、と迷いつつ第一巻の『48億の妄想』をペラペラとめくった。この巻には私が中学時代に夢中で読んだ『SF教室』が挿絵もそのまま入っていて、懐かしくてたまらない。他では読めないキラー・コンテンツである。よし、コンプリートするかどうかは保留して、第一巻は買おう。
 今回どっと買い込んだ本の中で、おそらく私が最初に読むのは『SF教室』になるのだろう。中島河太郎の『推理小説の読み方』(これは喜国雅彦さんに古本でプレゼントしてもらった)とともに、本当に想い出深い1冊なのだ。

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【9】『ウインドアイ』(新潮社)

『ウインドアイ』

 海外文学の棚に回れば、ここにも気になる本が何冊もある。『ウインドアイ』は自分好みの短編集の気配を発散させているから、買う。買うのが運命だったかのように。

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【10】『ミスター・メルセデス』上下(文藝春秋)

『ミスター・メルセデス』上下

 平積みされた『ミスター・メルセデス(上・下)』は、あのスティーヴン・キングのMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞受賞作だから買うのは義務に等しく、中身も面白いに決まっている。ただ、積んでいる間にたちまち2、3年が過ぎて文庫化されてしまう気がして、購入を控えていたのだが、買ってしまえ。早く読みたくなってきていた。  キングを入れて、やっと2万円弱。作家がこう言うと鼻白む人がいるかもしれないが、本って安いよな、と実感する。これだけのものを熟読したら何日楽しめることか。

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【11】『アガサ・クリスティーの生涯』上下(早川書房)

『アガサ・クリスティーの生涯』上下

 おっと。『アガサ・クリスティーの生涯(上・下)』を見つけてしまった。伝記までは読まなくてもいいか、と見送ってきたが、今の私はかつての私よりもクリスティーという作家とその作品に強い興味を抱いている。籠に加える時に見たら、消費税の表示がない。奥付によると初版は1987年とあり、そんなに古い本だとは思っていなかった。何年も本棚で眠っていた本をサルベージした気分だ。

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 残りの予算が4千円ほどになり、3階より上に人文書だの児童書だのを見に行く余裕がなくなってきたが、致し方ない。文庫の新刊を数点選んでフィニッシュにしよう。

【12】『謀略の都』 上下(講談社文庫)

『謀略の都』 上下

 まずはゴダードの新シリーズ『謀略の都 1919年三部作(1)(上・下)』。昨今は海外ミステリのファンが減っているというが、ゴダードの傑作があれもこれも品切している現状はつらい。「これ以上、どう面白く書けばいいんだ?」と言いたいほどのクオリティなのに。新シリーズが新しい読者を獲得しますように。

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【13】『破壊された男』(ハヤカワ文庫SF)
【14】『さあ、気ちがいになりなさい』(ハヤカワ文庫SF)

『破壊された男』『さあ、気ちがいになりなさい』

 ハヤカワ文庫の平積みから、いずれも初めて文庫化された『破壊された男』と『さあ、気ちがいになりなさい』をピックアップしたところで、3万円をわずかに超えた。
 買い物はここまで。店内を巡れば欲しい本がまだまだ見つかるだろうが、悔いはない。どうせすべては自分の本で、「気が向いたものから順に持って帰る」だけのことだ。

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 1階に下りてレジで清算し、自宅への発送をお願いして、ゲームセット。サイン会でお世話になった直後に買い物をして、三省堂さんにちょっとお返しができたようにも思う。
『本の雑誌』に感謝しつつ、大阪への帰路に就いた。

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