図書カードNEXT トップ > 図書カード使い放題?! > バックナンバー > 第38回:酒井順子さん

第38回:酒井順子さん

めざせ大漁
<プロフィール> 酒井順子(サカイ・ジュンコ)
1966(昭和41)年東京生れ。高校在学中から雑誌にエッセイを執筆。大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆に専念。2004年『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。『下に見る人』『地震と独身』『子の無い人生』『朝からスキャンダル』など著書多数。

購入書籍No.   1234567891011121314

【1】『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』(サンマーク出版)

『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』

 ......などと考えつつ始まった、この日の買い物。いつものように、まずは二階へと向かいました。文芸書コーナーへ、と思ったのですが、まず最初に、
「この本、欲しかった!」
 と手に取ったのは、売れている本のコーナーに積んであった『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』。著者は「開脚の女王Eiko」です。
 この本の広告を新聞で見た瞬間、「欲しい!」「売れそう!」と思った私。なぜなら私も「ベターッと開脚」ができるようになりたいと思っており、寝る前に毎日ストレッチをしている割には全く開脚できるようにならないから。私と同じように思っている人は多かろう、でもこの本を買うっていうのはどうなんだ......と放置していたわけですが、そのような本こそまさに今日、買うべきものなのではないか。ということでカゴへ。

ページトップへ

【2】『ビビビ・ビ・バップ』(講談社)
【3】『何様』(新潮社)

『ビビビ・ビ・バップ』『何様』

「ああ、これで私もやっと開脚ができるように~」と嬉しい気分になって、買い物気分に弾みがつきました。文芸書コーナーでは、その厚さのせいで手が出せずにいた『ビビビ・ビ・バップ』(奥泉光)、話題の『何様』(朝井リョウ)といったところを連続入手。

ページトップへ

【4】『谷崎潤一郎全集 第15巻 乱菊物語・盲目物語・吉野葛』(中央公論新社)

『谷崎潤一郎全集 第15巻 乱菊物語・盲目物語・吉野葛』

 次に全集の棚へと向かいます。中央公論新社の谷崎潤一郎全集、欲しいなぁと思っていたのだけれど、税抜きで一冊6800円、という価格に「むー」と思っていた私。こういう機会に一冊入手してみるのはどうか。......ということで、どの巻にしようか悩んだわけですが、「文庫に作品が収録されていない巻の方が」とか、「いやしかし、そもそも私は何の文庫を持っていたっけか」などとケチくさいことを考えていると、なかなか選ぶことができません。やっと、未読の「吉野葛」が収められている第15巻に決定。美しい函の中には、真紅の本。素敵です。

ページトップへ

【5】『落窪物語 新潮日本古典集成』(新潮社)

『落窪物語 新潮日本古典集成』

 新潮日本古典集成の『落窪物語』も、手に取りました。最近『枕草子』の現代語訳をしたのですが、『落窪物語』は『枕草子』においてでも言及されているのです。しかし実は私、『落窪物語』をちゃんと読んだことがありませんでした。これを機会にしっかり読んでみることを決意し(遅い)、カゴへ。

ページトップへ

【6】『私の「貧乏物語」』(岩波書店)

『私の「貧乏物語」』

 エッセイのコーナーでは、『私の「貧乏物語」』を手に取りました。河上肇『貧乏物語』から百年ということでの出版だそうですが、佐藤優さんによる『現代語訳 貧乏物語』を読んだところだったので、こちらも興味を惹かれたのです。
「貧乏」という言葉はおおっぴらには使用されづらくなってきたようで、「貧困」という言い方が幅をきかせている昨今。「貧乏物語」という正面切った言い方は、むしろ清々しい感じがします。濁音が二つも入った「ビンボウ」の方が、吹けば飛びそうな「ヒンコン」よりも骨太な感じがするなぁ、しかし「貧困」という言葉のイメージが悪くなったらなったで、また違う言い方に替えられるのだろうなぁ......などと思いつつ、レジ前を通って、奥側の新書・文庫のコーナーへ。

ページトップへ

【7】『日本近代随筆選 1出会いの時』(岩波文庫)
【8】『日本近代随筆選 2大地の声』(岩波文庫)
【9】『日本近代随筆選 3思い出の扉』(岩波文庫)
【10】『現代語訳 好色一代男』(岩波現代文庫)

『日本近代随筆選 1出会いの時』『2大地の声』『3思い出の扉』『現代語訳 好色一代男』

 随筆を職業とする私は、「随筆」とタイトルにつく本をみるとつい買いたくなる癖を持っており、まずは岩波文庫の『日本近代随筆選』1~3を入手。目次には、よく知る人の名も、知らない人の名も。これはトイレに置いて少しずつ読むのに向いているかも。
『日本近代随筆選』には、吉井勇の「玉島円通寺」という一編が載っていましたが、吉井勇の現代語訳による『好色一代男』も、カゴに入れました。『好色一代男』もまた、知った気になってはいるけれど実は読んでいない本なのです。

ページトップへ

【11】『折口信夫 天皇論集』(講談社文芸文庫)

『折口信夫 天皇論集』

 講談社文芸文庫は、何気なくレジに持っていくと「う、高い」と思うことがあるわけですが、「だからこそこんな時に」と、またもやさもしい根性を出して、コーナーの前に佇んでみます。天皇陛下の「お気持ち」表明があったりしたということで、『折口信夫 天皇論集』を選んでみました。どうでもいい話ですが、駅などの階段に「おり口」と書いてあると必ず、
「折、口、信、夫は、釈、迢、空」
 と、大昔に先生に教わったことを心の中でつぶやいてリズムをとりながら階段をおりる癖を、私は持っています。あの頃に抱いていた折口に対するぼんやりとした憧れを、思い出しました。

ページトップへ

【12】『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』(朝日出版社)

『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』

 このフロアはだいたい終了となって、エスカレーターで一つ上の階へ。人文関係の棚をうろうろします。最近、「婦人公論」において、婦人公論百年の歴史を振り返るという連載をしているのですが、その連載によってはじめて日本の近現代史というものに目覚めた私(これまた遅い)。その流れで『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子)を読んで「ほぉー」と思っていたもので、『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』(同)も、読んでみることに。  私の世代の場合、祖父が戦争に行ったり、親が疎開を体験していたりで、戦争は想像できる範囲の昔のことでした。しかしこの本の聞き手になっているような中高生にとっては、完全に歴史上の出来事になっているのだろうなぁ。

ページトップへ

【13】『昭和時代 一九八〇年代』(中央公論新社)

『昭和時代 一九八〇年代』

 それどころか今の10代にとっては、私の青春期、すなわちバブルの時代も「歴史上の一時期」。『昭和時代 一九八〇年代』(読売新聞昭和時代プロジェクト)という本を見つけ、「そうか、昭和はもう『昭和時代』なのか」と思い、こちらもカゴへ。

ページトップへ

【14】『東京23区便利情報地図 (2版)』(昭文社)

『東京23区便利情報地図 (2版)』

 もうそろそろ3万円に近づいてきたということで、最後に地下の地図売り場に行ってみました。私は東京都の区分地図というものを愛用しています。グーグルマップという便利なものがある今ではありますが、どこかに出かける前は必ず地図を開いて「この辺ね」と確認してからでないと安心できないという、昭和の女なのです。
 しかし愛用している東京都の地図は、なんと1993年の発行であり、六本木ヒルズも東京ミッドタウンもスカイツリーも載っていないという、ほとんど古地図。「新しい地図が欲しい」とずっと思いつつも、持ち前の放置癖を発揮して、購入せずに数十年。「この機会に!」と、一念発起しました。
 探してみると、今の地図は何だかカラフル、そしてとても詳しくなっています。字もやけに大きい感じがするのは、「今、地図を見るのは中高年くらい」だからなのか......。自分も中高年の一員であるということで、『東京23区便利情報地図』というものを購入することにしました。

ページトップへ

 そうこうしているうちに、金額が3万円をちょうど超えたようです。お買い物は2カゴ分となり、とても贅沢をした気分。
 服だの靴だのを買う時は、3万円の予算といったらさほどの潤沢感は無いわけですが、本の場合はこんなにもたっぷり購入することができる。そして2カゴ分の本は、服と違って流行り廃りもなく、一生モノとして私を楽しませてくれることでしょう。そう考えると、本とは何とお買い得なものであることか。
 宅配をお願いして任務は終了、となったわけですが、その後さらに、店内をうろついた私。お仕事気分から離れて棚を見るとまた違う本が見つかるものなのであり、さらに数冊、購入してしまったのでした。

図書カード使い放題?! トップ
ページトップへ