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第33回:小路幸也さん

作家の栄養補給本
<プロフィール> 小路幸也(しょうじゆきや)
北海道旭川市出身。2003年「空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction」により講談社メフィスト賞を受賞。同作品がデビュー作となる。他の著書に「東京バンドワゴン」(集英社)、「踊り子と探偵とパリを」(文藝春秋)、「花咲小路二丁目の花乃子さん」(ポプラ社)等多数。

購入書籍No.   123456

【1】『【サーカスの時間】本橋成一写真集』(河出書房新社)

『【サーカスの時間】本橋成一写真集』

 何よりもまずは写真集だ! と<八重洲ブックセンター>さんの最上階のフロアに行って、あれこれ眺めていたらこれを見つけたので即購入決定。そもそも僕の<資料本>というのは写真集が多い。とにかく<その現場の空気>を感じたいのだ。
 いい写真には、そこに生きる人たちの息遣いみたいなものまでが映し出されている。そこの空気感や佇まいみたいなものを感じ取れたら、もうそれで準備はオッケーですぐに書き進めるという感じだ。細かいデータみたいなところは間違っていたとしても、後で直せばいいんだからさ。
<サーカス>というものは、住んでいた地域にもよるだろうけど、僕の年代はぎりぎり接したか接しなかったというところ。とても魅力的な素材で、いつかものにしたいと考えているんだ。

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【2】『人力車の研究』(三樹書房)

『人力車の研究』

 たまたま本棚で見つけて「なんだこれは!」と嬉しさに思わず笑ってしまって手に取ってぱらぱらとめくって、電光石火で購入を決めた本。
 だって<人力車の研究>ですよ! 明治42年頃にゴムタイヤに変わっていったなんてどうやったら調べられます? いやもう本当にね、こういう研究をして資料として残してくださる方がいるお蔭で、我々小説家はそれをしっかりとした土台にして、あることないことを書けるんですよ。
 たぶん、いや間違いなく今後の僕の作品のどこかに<人力車>が出てくるはず。ひょっとしたらメインで書けるかもしれないと思ったほどに魅力的な資料本。

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【3】『岡本綺堂探偵小説全集【第一巻】明治三十六年~大正四年』(作品社)

『岡本綺堂探偵小説全集【第一巻】明治三十六年~大正四年』

 これはもう、何の説明もいりませんね。文庫で出されている岡本綺堂作品は何冊かは持っているものの、こうして纏められたものをいつかそのうちに絶対に買おうと思っていたものです。でも今回は買うつもりはなかったんだけど、棚にあるのを見かけて「あぁそうだこれもなー」と思って手に取ってしまったら最後でついつい買ってしまいました。小説としての面白さはもちろん、描かれた時代を感じ取れる貴重な資料。何よりもその時代の言葉遣いが、僕たち後世の作家にとってはとてつもない栄養になります。  それにしても<岡本綺堂>って名前は格好良いですよね。

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【4】『写真で見るヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活』(原書房)

『写真で見るヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活』

 永遠の憧れのロンドン! というわけで、まだ使う予定もないのにどんどんこの辺りの時代のロンドンの資料本がたまっていくんですよ。これも以前に買おうと思っていて、今回さっさと購入を決めた一冊。
 僕が<シャーロック・ホームズ>の物語で<イギリス>という国の<ロンドン>という街の存在を知って憧れ始めたのが小学校の3年生。それから萩尾望都さんの<ポーの一族>だったり、もちろんイギリスと言えば、<ビートルズ>や<ローリング・ストーンズ>や<クイーン>、そして女王陛下の<ジェームス・ボンド:007>と、常にイギリス=ロンドンは魅力的な<憧れの街>でした。
 この時代のロンドンを舞台にした小説はいつか書いてみたいとずっと思っているんですけど、なかなか難しい。何せ素晴らしい先達の皆さんがすごい作品をたくさん書いていますからね。

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【5】『図説 世界シンボル事典』(八坂書房)

『図説 世界シンボル事典』

 この辺りの資料もいつか買おうと思っていたもの。神話や魔術や錬金術や秘密結社エトセトラで、とにかくそういった方面のものにやたらといろいろ出てくる<シンボル>についてみっちり解説してくれる本。
 たとえば<十字>というものがキリスト教だけではなく他にもどんなふうにシンボル化されているかをしっかり解説してくれるわけです。ただ読んでるだけでも楽しい。たぶん読んでいるだけで一日が終わってしまいそうなぐらいおもしろい。手元にあるだけで楽しい資料っていうのも多いんだよね。

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【6】『アルファベット・ハウス』(ハヤカワ・ミステリ)

『アルファベット・ハウス』

 高い資料本ばかりどんどん買ってしまって、気がついたら最後にもう1000円ちょっとしか残ってなくて、じゃあ小説を一冊と思って買ったもの。<特捜部Q>ですっかり人気作家になった作者の傑作という触れ込みの<ハヤカワポケミス>ですね。  話は全然違いますが、僕の野望のひとつに<ハヤカワポケミスを全巻揃える>っていうのがあるんですよ。totoで6億円当たったら必ず揃えます。  少し予算をオーバーしたけど、その分は自分で払いました。小説はやっぱり翻訳物、海外文学を買うことが多いです。これはデビュー前からそうですね。

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 時間にして1時間も掛からなかったかな? 次の打ち合わせまでに時間があったので、おつきあいいただいた編集さんとちょっとコーヒーブレイクなど。
 本を選ぶのに迷うことはあまりないですね。「あ、これだ」と思ったらすぐに買う。本との出会いって、そのときを逃すと二度と会えないってことが多いんですよね。なので、いいと思ったらすぐ買う。どっちを買おうか迷ったら両方買う。メシを一食抜いても買う。メシを抜いても痩せるだけだけど、本がないと頭と心に栄養が回らないから。とは言っても、普段の暮らしの中で本屋さんに行って、たくさん本を買ったとしてもせいぜいが合計1万円ぐらいかなぁ。3万円も一気に使ったなんて間違いなく生まれて初めてですね。  というわけで、本当に楽しい時間を過ごせました。
<本の雑誌>さんありがとう!

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