第2回:北村薫さん
- 落語とタイガースDVDと古典文学全集を同時に買う作家
- <プロフィール>1949年生まれ。埼玉県出身。
89年『空飛ぶ馬』でデビュー。91年に『夜の蝉』で日本推理作家協会賞短篇・連作部門を受賞。06年に『ニッポン硬貨の謎』で本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞。小説に『覆面作家は二人いる』『冬のオペラ』『スキップ』『盤上の敵』『鷺と雪』、エッセイに『謎物語』『詩歌の待ち伏せ』などがある。
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【1】『琵琶法師 〈異界〉を語る人びと』(岩波新書)
さて、まず最初にあげたいのが、こちらの本。
タイトル通りの本だけれど、これには、最後の琵琶法師山鹿良之の映像DVDがついている。広告で見た時から、そそられていた。今回の企画にあわせて買おうと思って、この日が来るのを待っていた。先に『肥後の琵琶弾き山鹿良之の世界~語りと神事~』という3枚組CDの方を買って聴いた。「菊池くずれ」などの泥絵の具で描かれたような物語の感触に魅かれ、あれこれ思うことは多い。CDの方は、今年の3作に入れたい。
【2】『ふしあな』(小池書院)
さて、上記の新書のことは、呉智英さんが『ダ・ヴィンチ』で取り上げていた。そのページの左側にコミック紹介欄があった。ふと目をやって、《何、これ?》と思ったのが、このコミック。
《史上初、誰も見たことのない浮世絵マンガ 全ページ浮世絵で描かれるめくるめく江戸の恋物語が、未発表作品を加えて10年ぶりに新装版として復活》と書いてあった。コミックに詳しい方には、周知の本なのだろう。期せずして、こういうものを発見するのが本を探す喜び-とばかりにコミックのコーナーへ。
【3】『劇画漂流』(上・下)(青林工藝舎)
コミックのコーナーへ来たところで、新聞で見て気になっていたこちらも購入。手塚治虫文化賞大賞受賞ということで、紹介されていた。貸本漫画の時代が書かれている。わたしが小学生の頃が、その全盛期。家に持って帰れば10円、その場で読めば5円だった。懐かしい漫画家──いや、劇画家か──の名前が次々と出て来るようだ。楽しみである。
【4】『落語こてんパン』(ポプラ社)
次に、落語のコーナーに移る。まず、この本。
柳家喬太郎さんは、うまくてセンスがよくて花がある。追っかけが多いのも、よく分かる。朝日カルチャーでの落語講座なども、まことに素晴らしかった。落語は、演題を──というより、演者を聴くもの。こういう人が出て来るのだから、落語は滅びない。
──で、このコーナーにはCDやDVD付きの本や雑誌が多い。わたしは、こういうものに、とても弱い。グリコの時代から、何かが付いてる──といわれると、思わず買いたくなる。そこで...
【5】『落語のいき 第4巻 長屋噺編』(小学館)
こちらには、圓蔵の「らくだ」、さん喬の「締め込み」、圓太郎の「雛鍔」が入っている。
【6】『落語ファン倶楽部 Vol.7』 (白夜書房)
こちらの特典CDには、《へぇ~》と嬉しくなるようなものが入っていたりする。今回は、圓生の「よもやま洒落ばなし」などなどが入っている。圓生の芸談はNHKの「女性手帳」その他、かなり残っている筈なので、散逸しないうちにCD化しておいてもらいたい。昨今は、落語など放送局に眠っていた音源が、かなり表に出て来るので嬉しい。
個人的には嬉しいような悲しいような場合もある。オープンリールでエアチェックした何本かのテープを、40年ほど前に《こんな昔のものがあるんだ》と貰って以来、《持ってる人、あまりいないよなあ》と、ひそかに悦にいっていた。小勝の「佐々木政談」など結構なものだった。それが今年、出てしまった。まあ、喜ぶべきなのだろう。
【7】『落語百選DVDコレクション 18』(デアゴスティーニ・ジャパン
さて、落語といえば、『落語百選DVDコレクション 18』(デアゴスティーニ・ジャパン) が、喬太郎と瀧川鯉昇。これも当然、《買い》である。
【8】『阪神タイガースオリジナルDVDブック 猛虎列伝Vol.7 掛布雅之』(講談社)
DVDブックのコーナーに行くと、他にも目に飛び込んで来るものがある。自動的にカゴに入れるしかないのが、これ。
掛布は、無名の選手として入団したわけだが、あの頃、春のキャンプを見た誰かが《今年の新人に、すごいのがいる》と言っていた。《本当かい?》と思っていたが、それがあの31番になった。《専門家というのは、見るところを見ているのだなあ》と感心した。ところで数年前まで、阪神にはシーツという外国人選手がいた。《掛布とシーツの対談》をやったら、面白いだろうと考えていた。しかし、スポーツ誌には企画として出しても却下されたに違いない。千載一遇の機会だったのに、残念。
【9】『新編日本古典文学全集今昔物語集4』(講談社学術文庫)
この辺で、以前から気になっていた本を買ってしまう。
これ、1~3巻まで買っておいて、それっきりになっていた。ある時4巻がないのに気づいたが、どこにでもある本ではない。東京の大型書店でないと、この全集に出会えない。書店に行っても、忘れていることが多い。思い出して棚まで行っても、そういう時にはこの巻がない。巡り合わせとはそういうものだ。この機会にと思って、購入。
【10】『聴いて学ぶアイルランド音楽』(アルテスパブリッシング)
こちらも、手に入れたかった本。元はオックスフォード大学出版局から出ている教科書らしい。これまた、27曲収録のCD付きなのが嬉しい。よく出来た教科書というのは、生徒以外の人間には、とても面白いものだ。帯の訳者の言葉がいい。《「ボロボロ」になるまでこの本を使いたおしてみてください》。
で、アイルランドといえば《『ダブリン市民』の新訳が出ていたよなあ》と、文庫のコーナーに行く。
【11】『ダブリナーズ』(新潮文庫)
あったあった。
どうしようかなあ、とも思ったが、こちらも帯の《『ダブリン市民』が生まれ変わった!》という言葉に降参して買う。
【12】『日本人の忘れもの1』
【13】『東海道品川宿』
【14】『光源氏の人間関係』
【15】『東京おぼえ帳』
【16】『増補 荷風のいた街』
【17】『書痴半代記』(ウェッジ文庫)
さて、文庫のところに来たのは、今回の目玉、ウェッジ文庫をまとめ買いするためでもある。
実は、すでに持っているものも買ったのだ。人にあげるためである。それにしても、いい仕事しているなあ、ウェッジ文庫。それぞれ、もう100円高くてもいいのになあ。そう思いませんか?
【18】『幕末明治美人帖』(新人物文庫)
近くの棚にも手を伸ばし、こちらの本を買う。ここで残りが2000円ぐらい。後、2冊ぐらいだ。
【19】『たいした問題じゃないが イギリス・コラム傑作選』(岩波文庫)
そこで、買おうと思っていた浮かんだ本がこちら。
【20】『プルースト『失われた時を求めて』を読む』(日本放送出版協会)
ラストは、教科書ではないけれど、NHKのテキストから、これにした。
やれやれと、4階のM&Cカフェで丸善名物ハヤシライスで昼食。丸善に入社すると、その由来のビデオを見せられるそうだ。創業者、早矢仕有的氏をしのびつつ、これにて一件落着。
(於丸善本店)