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第14回:夢枕獏さん

予算オーバー上等 光より速いものに乾杯
<プロフィール> 1951年1月1日、神奈川県生まれ。 東海大学文学部日本文学科卒。 1977年に作家デビュー。 以後、「キマイラ」「サイコダイバー」「闇狩り師」「餓狼伝」「大帝の剣」「陰陽師」などのシリーズ作品を発表。 1989年『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞、1998年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞、2011年『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞、舟橋聖一文学賞を、それぞれ受賞。

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【1】『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』

 最初に眼についたのは、増田俊也さん『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』である。
『ゴング格闘技』に連載されていた、触ればやけどしそうなほど熱い本である。まず、これを迷わず買ってしまった。あ、いや、正直に書いておけば一瞬は迷ったのだ。というのは、ぼくは著者の増田さんとは知りあいで、もしかしたら、この本、おくられてくるかもしれないという考えが、頭によぎったのだ。しかし、この本を読みたい、早く読みたいという欲望の方が勝ってしまい、あっという間にこの本をカゴに入れてしまったのだった。
 何しろ、力道山に敗れた木村の怨念や、柔道ファン、格闘技ファン、あらゆる人たちの想いを、作者が全身で背負っての渾身の1冊である。2段組で700ページを超える厚さもまったく気にならない。
 しかし、買ったその翌日に、実は、この本が自宅に届いたので、本書は我が家に今2冊あるのである。

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【2】『かごめ歌の暗号』(東京書籍)

『かごめ歌の暗号』

 『かごめ歌の暗号』は、おなじみ「かーごめ、かごめ......」の歌の謎解き本である。実は今、『明治大帝の密使』という物語を連載中で、この話の中にこの歌が出てくるのである。明治忍法帖とでも言うべき話で、講道館の嘉納治五郎や、西郷四郎が、徳川埋蔵金をめぐって忍者軍団と闘う話なのである。その資料として、これを買ったのだ。

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【3】『いねむり先生』(集英社)

『いねむり先生』

『いねむり先生』は、伊集院静さんの本。前々からぜひ読まねばと思っていたのが、ちょうど目の前にあったので、もちろんカゴへ。

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【4】『神社と古代民間祭祀』(白水社)
【5】『神社と古代王権祭祀』(白水社)

『神社と古代民間祭祀』『神社と古代王権祭祀』

『神社と古代民間祭祀』と『神社と古代王権祭祀』は、今書いている『翁─OKINA』の資料として買った。これは『裏源氏物語』とでも言うべき物語で、なんと光源氏が、メフィストフェレス役の蘆屋道満に引きつれられて、古代史の旅に出てゆく話である。古代ギリシア、唐の神話伝説にからめて、ふたりがたどりついたのは─というおもしろ本なのだが、この時買ったこの資料に眼を通している時間がないまま、脱稿してしまった。残念。

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【6】【7】【8】『司馬遼太郎が考えたこと』 4~6(新潮文庫)

『司馬遼太郎が考えたこと』 4~6

『司馬遼太郎が考えたこと』4~6。これは、1~15まである。そのうち、1~3、9~15までは読んでいるので、まだ読んでいない4~8までをまとめて買うつもりでいた。どこの本屋に行っても置いてないか、あってもバラバラで、そのため、最後に残ったのが、4~8だったのである。天下の紀伊國屋であれば全巻あるかと思っていたのだが、さにあらず、やはり、バラバラの品揃えであった。とにかく、眼についたので、4~6までをあわてて買った。この本、旅本として、実によいのである。電車の中、飛行機の中、ホテルの部屋─時間がある時に読んで、おもしろく、そして教養が自然と身についてしまうという実によい本である。司馬さん、たいへんな教養人であった。ああ、司馬さんの百分の一でいいから、この教養のおこぼれをいただきたいものである。

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【9】『奈良時代MAP 平城京編』(光村推古書院)

『奈良時代MAP 平城京編』

『奈良時代MAP』は、もちろん次に書く小説の資料とするためだ。
 阿倍仲麻呂のことを書くつもりでいるのである。この地図のシリーズ、現代の地図と重ねて見ることができるので、たいへんありがたい本なのである。

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【10】『職業=田原俊彦』(ロング新書)

『職業=田原俊彦』

 で、もう順不同となっているのだが、次が、田原俊彦『職業=田原俊彦』である。
あのたのきんトリオのトシちゃんの本だ。
「ぼくはビッグだから─」
発言で、世間をビックりさせたトシちゃんだが、このところ、たまに出てくるバラエティ番組でのふっきれかたがなかなかいいのだ。
世間が抱いているトシちゃんのイメージをネタにして笑いをとることができるようなタレントに、いつの間にか変身していたのである。しかも、この本のタイトルが"職業=田原俊彦"だよ。
これは読まねばならない。
オビに、
「天職=田原俊彦」
とある。
凄いじゃないか、トシちゃん。

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 ここらあたりで、どうなったか値段の確認をしてもらう。
しかし、なかなか計算ができない。
ノートに手で値段を書いて、それを足し算するのだが、
「あ、もう一度」
うまく計が出ず、何度かやって、
「まだ、あと一万円残っています」
と、担当者は言った。

【11】『驚異の地球』(日経BP社)

『驚異の地球』

 よっしゃ、よっしゃ、それならばとさらに買い込んだのが、
『驚異の地球』である。
スペースシャトルから撮った写真集だ。
これはいい。
ガンジス川河口の写真なんて、これ、もう地球じゃない。どこか他の星系の惑星としか見えない。グロテスクで美しい。河がのたうっている。見ているだけで、想像力がかきたてられるのである。

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【12】『Newton』(ニュートンプレス)
【13】『時間とは何か?』(日経サイエンス社)

『Newton』『時間とは何か?』

 さらに買ったぞ。
『Newton』、『別冊日経サイエンス』。それぞれ、特集が「大宇宙」、「時間とは何か?」である。
宇宙論関係の本は、年に何冊か買っている。

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【14】『地球外生命を求めて』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
【15】【16】『隠れていた宇宙』 上下(早川書房)

『地球外生命を求めて』『隠れていた宇宙』上下

 今回は、はずみがついているので、さらに『地球外生命を求めて』、『隠れていた宇宙』上・下を買ってしまう。
このはずみについて説明をしておくと、実はこのたびたいへんに衝撃的なニュースが世間を(一部かもしれないが)騒がせたのを御存知であろうか。
光よりも速いものが、発見されてしまった(かもしれない)というのである。
それは、ミュータイプのニュートリノだ。
15000回の実験を繰り返し、どうしてもこいつは光より速いんじゃないのということになって、ついに発表にふみきったというのである。
な、な、な、なんだとう。
これは、天動説に対して地動説が出た時以上のショッキングな事件である。
現在、宇宙の謎を解くのに使用されているのが、アインシュタインの相対性原理と量子論である。
そのうちの一方、相対性原理を成り立たせている、
「光の速度は絶対である」
という考え方が、音をたてて崩れてしまったのだ。
もちろん、だからといって、現在の我々の生活にたいへんな影響が出るわけではない。
古い理論であるニュートン力学を使っても、砲弾はねらったところへきちんと着弾するし、宇宙船は、月に到着することができる。
しかし、しかし、光の速度さえも相対的であったというなら、まさにこれこそ相対性原理そのもの─じゃないか─にしても凄いことになってきてしまったのである。
なんということだ。
我々は、宇宙の始まりと終りについて、もう一度、考えなおさねばならないのだ。
なんという、おもしろさ。なんという心ときめく発見なのであろうか。
「まさか、そんなはずはない」
という学者もいるが、ガリレオだって、アインシュタインだって、そう言われてきたのである。
なんだかいいぞ。
そういう気分の時だったので、宇宙論本を大量に買い込んでしまったのである。

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と─
ここで重大な事実が判明した。
なんと、さっきの計算が間違っていて、もう、買い込んだ本、3万円を軽くオーバーしているというのである。
その額、8,093円。
なに!?
しかし、すでに、本を棚に返している時間はない。
次の約束が迫っていたからである。
それに、せっかくついてしまった勢いを、ここで止めるわけにはいかないのだ。
読むぞ、全部。
たとえ幾らであろうと、この本、みんな買った!!
でも、この次は、電卓の用意を、ぜひお願いいたしますね。

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