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第12回:辻村深月さん

子供を待ちながら
<プロフィール> 1980年2月29日生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。他の著作に『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(講談社)、『太陽の坐る場所』(文藝春秋)、『本日は大安なり』(角川書店)などがある。『ツナグ』(新潮社)で第32回吉川英治文学新人賞受賞。『オーダーメイド殺人クラブ』(集英社)が第145回直木賞候補作となる。

購入書籍No.   12345678910111213

【1】『つるかめ助産院』(集英社)

『つるかめ助産院』

 そんなわけでまずは、読みたい読みたいと思いながら手を伸ばせずにいたものを。
 小川糸さんの『つるかめ助産院』。助産師をしている従姉から「すごくよかったよ」と薦められていたものが、まずは1冊目。

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【2】『RDG レッドデータガール』1~3(角川書店)

『RDG』

続けて、児童書のコーナーに移動して『RDG』シリーズを3巻まで。昔から大好きな荻原規子さんの、しかも酒井駒子さんのイラストが入ったこのシリーズ。発売すぐからずっと読みたかったのだけど、なかなか時間が作れなかった。

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 今回のお買い物には、もう1つもくろみが。きっと大部分を書店から家に直接送るだろうから、ハードカバーやサイズの大きな本もどんどん買おう! というものだ。
 同行してくれた松村さんに「本当は、少年探偵団やホームズシリーズをコンプリートした環境で子供を育てたいものですが、生まれてしばらくはまだ読めないから、もうちょっと待った方がよいですかね?」と話しつつ、未練たらしく一応見に行く。売り場の棚へ行くと、背表紙が黒い一画が。その名も"ホラーセレクション"。『サイコ』『猫』『ロマンスにはホラーを』といった心惹かれるタイトルが並ぶ。アンソロジーのようで、たとえば『サイコ』として編まれたものには『地獄変』、『屋根裏の散歩者』、『番町皿屋敷』などが収録されている。小説だけではなく、『猫』には、JETさんの漫画『飾り窓の猫』が収録されるという充実ぶり。これ欲しい! 英才教育用に! と叫びつつ、自分が欲しいだけ、という自覚もあるので泣く泣く諦める。
 ここで、"漫画で読める故事成語"とか、ことわざの本はないかな、と周りを探す。というのも、私は小さい頃、家に1冊あったその手の本をただ「漫画だから」という理由でボロボロになるまで熟読し、そこで覚えた言葉に今も随分助けてもらっているからだ。"混沌"も、"羮に懲りて膾を吹く"も、そうやって覚えた。自分の子にもぜひ、と思ったのだけど、記憶の中にあるようなイメージのものがなかったので、今回はやめておく。

【3】『まつり』(講談社)

『まつり』

そのまま、すぐ隣の絵本コーナーへ移動。子供に向けてのものではないけど、『ルリユールおじさん』で大ファンになっていたいせひでこさんの『まつり』を自分のためにかごへ。

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 絵本コーナーを歩くと思うのが、とにかくその人気の息の長さ! 私が子供の頃に読んで感銘を受けたものが今も第一線のベストセラーとして平積みされている。『ぐりとぐら』や『ノンタン』、『こぐまちゃん』......。ああ、決められない。
 絵本は他の買い物を終えた後でまた値段に応じて再調整、と別フロアに移動。そこで作家の新城カズマさんに遭遇! 偶然ですねー、と話しつつ、企画の主旨を説明し、なおかつ共通の友人である円城塔さんも体験済みな企画なんですよー、と話して、大いに羨ましがってもらう。

【4】『別冊宝島 AKB48推し!』(宝島社)

『別冊宝島 AKB48推し!』

新城さんと別れて、ふっと目の前の棚を見上げ、「ああー!」と声を上げる。そこはサブカル雑誌の陳列棚。『別冊宝島 AKB48推し!』の文字が。どうやら各界の著名人が自分が推すメンバーそれぞれについてを語るという構成らしい。昨年、毎日新聞で連載していたルポで取材して以来、彼女たちのすごさに圧倒されていた私。もちろん推しメンだっている。ああ、私も語りたかった、すごい、あの人もこの人も書いてる......、と羨ましい気持ちになりながら、迷うことなくかごの中へ。AKBの存在感は強く、これ1冊入れただけで、かごの中の色合いが一気に塗り替えられた印象に。

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【5】『LIFE3』(東京糸井重里事務所)

『LIFE3』

そうそう、胎教にいいものも買わなくっちゃ、と、料理本のコーナーに。フードスタイリスト飯島奈美さんの最新刊『LIFE3 なんでもない日、おめでとう! のごはん。』を購入。1、2巻とも、この本の通りに作れば絶対においしくできるという名著。残念ながら今回の3巻が完結編らしいのだけど、帯にある「カツ丼がきたーっ。」の文字と写真に、もう涎が出そう。

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【6】『オカアチャン1年生』(主婦と生活社)

『オカアチャン1年生』

また、妊娠初期に出会い、それからくり返し読んでいる出産体験記『トリペと』の2巻も出ているはず、とエッセイ漫画のコーナーへ。リラックマの生みの親であるコンドウアキさんのこの本は、とても丁寧で面白く、私はこの本の薦めによって今もマタニティスイミングに通っているほど。"トリペ"というのは、コンドウさんの赤ちゃんのアダ名だ。その2巻目の今回は『オカアチャン1年生 トリペと2』。今の時期に読むにはちょうどいいかも。

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【7】『結婚ゴーラウンド』(中央公論新社)

『結婚ゴーラウンド』

エッセイ漫画の棚を後にしようとしたところで、大田垣晴子さんの『結婚ゴーラウンド』が目にとまる。私は今年『本日は大安なり』という結婚式を扱った小説を出していて、その取材の際、結婚式に関する本やエッセイをかなり読んだのだが、大田垣さんが出されてたなんて知らなかった! 先日、人から同じく大田垣さんの『40歳!妊娠日記』を薦められて読んだばかりだったし、これはぜひ読んでみたい。

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 もっと小説も、と移動途中、また新城さんとすれ違う。別に見られてもいないのに、かごの中のAKBを「ああー、あ、あの買っちゃいました、AKB」と何故か言い訳する私。

【8】『ねむり姫』(河出書房新社)

『ねむり姫』

5月に出た自分の最新刊『オーダーメイド殺人クラブ』で主人公に澁澤龍の『少女コレクション序説』を読ませていたのだけど、そういえば、うちには澁澤さんの評論はあるけど小説がないなあ、と『ねむり姫』を見に行く。ここで悩ましい問題に直面。短編小説集として編まれた河出書房新社のものと、『ねむり姫』1編のみを大人向け絵本に仕立てたアートンの豪華版の2種類が置いてある。しかも、値段はそんなに変わらない。どちらにしようとうろうろ悩みながら、結局短編集を買う。

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【9】『千年の祈り』(新潮社)

『千年の祈り』

続けてイーユン・リー『千年の祈り』。映画がすごくよかったので、ぜひ原作も読みたいと思っていたのだ。

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ここからしばらくは、より実用的な本気のお買い物。まずは最近見始めたお能の謡や現代語訳がまとめて出ているような本はないかな、と探しに。前に一緒に観に行った人から、そういう本のコピーをもらったことがあって、それを片手に観たら、能の言葉がよりすんなり入ってきた経験があり、以来ずっと欲しかった。けれど、膨大な演目が網羅されているような本はやはりない様子。その時々に応じて1冊ずつ謡本を揃えていくのがよいようだ。
 また、重たい買い物の代名詞といえば辞典。今使っている『類語辞典』が適当に買ったものだったことを思い出し、もっといいものがあるかも、と棚へ。何冊か見て、すぐに「引きにくい!」「求めてるのはこういうのじゃない!」「うちの子の方が優秀!」と閉じる。単にもう馴れてしまったものが一番というだけかもしれないけど、うちの辞典って実は厳選された1冊だったのかも、と疑いをかけたことを心の中で詫びる。
 実用書のフロアを後にする時、新城さんと3度目の遭遇。「ああ、また」とお互いに笑ったけど、すでに最初に会ってから何時間も経過してることを思って、ああ、新城さんも本当に本と書店が好きなんだなあと、嬉しく幸せな気持ちになる。  さて、封印を解くような気持ちでコミックス売り場へ。最近の漫画は読みたいのを買い始めるときりがないので、自分の中でテッパンだと思っているすでに完結してる名作のみ、今日は買うことを許す。

 藤子不二雄先生の『まんが道』を全巻揃えるかどうかで、たっぷり時間をかけて悩む。実家では父が持っているのだが、自分の棚にも欲しい。電卓を取り出して、ここまで買った本の金額を合計したら、文庫版でならギリギリ予算の枠内で収まる。ただし、ここで『まんが道』を選ぶと、絵本のコーナーに戻った時に、絵本が買えなくなる。目をつけていた『こぐまちゃんえほん 全15冊セット』は12,600円。まさか、『まんが道』と『こぐまちゃん』を天秤にかけて迷う日が来るなんて......、と呆然としながら、ええい、と覚悟を決める。『まんが道』を買ったら、きっと続編の『愛...しりそめし頃に...』も揃えたくなるに決まってる! 今日はそれは無理だから、と自分に言い聞かせ、『こぐまちゃん』を選ぶ。

【10】『洗礼』1~3(小学館)

『洗礼』1~3

と、後ろを見ると、楳図かずお先生の『洗礼』が。ビッグコミックススペシャルから出た新しいカバーがすごくかっこよくて、ずっと欲しかった。お前、胎教とか言ってなかったか? しかも数ある楳図作品の中でも、よりにもよって妊娠中に『洗礼』? と、自分でツッコミを入れつつ、どうにも欲しくなってしまったので全3巻をかごの中へ。

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【11】『AKB49 恋愛禁止条例』2(講談社)

『AKB49 恋愛禁止条例』2

満足しながらコミックス棚を後にする直前、また「ああー!」と声を上げる。『AKB49恋愛禁止条例』の2巻が出ている。「もしAKBに幻の49人目のメンバーがいたら?」というこの漫画、現実のメンバーも実名で登場するというファンには嬉しい設定で、1巻を読んでから続きを楽しみにしていた。「すいません、すいません」と誰にともなく謝りながら「これは別会計で買います」と松村さんに話すと、「せっかくだから含めましょうよ」とお優しい返事。ああ、最近の漫画は買わない、という決意はどこへやら、楽しみすぎるのでかごの中へ。

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【12】『こぐまちゃんえほん 全15冊セット』(こぐま社)
【13】『こぐまちゃんおでかけセット』(こぐま社)

『こぐまちゃんえほん 全15冊セット』

絵本コーナーに戻り、最後のお買い物。『こぐまちゃん』全巻セットをかごへ。ミニタオルがついていてかわいい。実を言えば、書店を訪れた当初は3万円の予算内で収めるのが美学! と思っていたのだけど、この時点ですでに大幅オーバー。ならば、とついでに横にあった『こぐまちゃんおでかけセット』も買う。これは、赤ちゃんとお出かけする時に持ち歩きが便利なようサイズを小さく、軽くした絵本2冊と、ミニバッグがついているイケてるセット。

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 『洗礼』と『こぐまちゃん』と『AKB48』が入ったかごをレジに持って行きながら、変なラインナップだなあ、とお腹を撫でてみる。
 子供を待ちながら、と言い訳しながら欲望のままに買った本の合計は17冊、35,725円(『こぐまちゃん』はセットで1冊扱い)。随分足が出たけど、満足。
 では、みなさま。またすぐに帰ってくるし、新刊も出ますが、辻村、ひとまずこれらの本と一緒にお休みに入ります。復帰まで、しばらくお待ちいただければ幸いです。

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