図書カードNEXT トップ > 図書カード使い放題?! > バックナンバー > 第11回:円城塔さん

第11回:円城塔さん

旅のついでに・・・
<プロフィール> 1972年北海道生まれ。 2007年、短編「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文學界新人賞を受賞。同作品で第137回芥川賞候補となる。同年、『Self-Reference ENGINE』で単行本デビュー。2010年、『烏有此譚』(講談社)で第23回三島由紀夫賞候補、第32回野間文芸新人賞受賞。

購入書籍No.   12345678910111213

【1】『アライバル』(河出書房新社)
【2】『ニーベルンゲンの歌』前後編(ちくま文庫)

■ブックファースト渋谷文化村通り店。
自分の中では、普段使いの街の本屋さんという位置づけなので、極々素朴に選びます。

『ビロードのうさぎ』『BとIとRとD』

新刊棚から字なし絵本の『アライバル』と、ちくま文庫の『ニーベルンゲンの歌』。大阪で買えばいいじゃんとかはちっとも頭に浮かばずに、息するように手に取っており。その間、以前とは多少変わった棚の並びを無意識的に覚えていきます。本棚を覚えるという妙な趣味を持っていて、覚えた方が本屋さんは使いやすいというのもありますが、単に趣味です。ああ、あの本に書いてあったなと考えたとき、あそこの本屋さんのあそこの棚にと思い浮かんで、遠くの本屋さんだったりするのが好きなのです。もう随分前の記憶だから棚も変わってしまったろうなと、独りしみじみしたりします。この記憶は割に強固で、『ニーベルンゲンの歌』をみかけた棚は昔、洋雑誌の場所だったなあとかいう印象が、『ニーベルンゲンの歌』そのものにじわりと染みてきたりします。ファッション誌の表紙を飾るジークフリートとかいう絵が頭に浮かんでにやりとしたりもするわけですが、不気味なので抑えます。

ページトップへ

【3】『音楽史を変えた五つの発明』(白水社)

『フクロモモンガ 小動物ビギナーズガイド』

新聞書評棚からは、『音楽史を変えた五つの発明』。見逃していたので有り難い。音楽を聴く耳を全然持たないくせに、音楽の話は好きなのです。自分がどうも持っていないらしい機能について、機能満載の人が語るのをきくのは楽しい。

ページトップへ

【4】『ドクター・ラット』(河出書房新社)

『ドクター・ラット』

 3軒回り、1軒あたり1万円かなと思っているので、もう既にあと1冊くらいしか買えません。全然足りない。ここまでほんの20分。しかし改めて考えると、東京にいるときもこんな使い方をさせてもらっていたわけで、通路がわりに通っては、目につく本を手に取るスタイル。顔見知りの店員さんにおすすめされた『きのこ文学名作選』は持ち歩くと無駄に傷みそうなので保留し、『ドクター・ラット』。ねずみものは好きなのです。『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』とか。それはうさぎ。やっぱりガンバか。いやしかし『川の光』を読んでいないなと思いつつ、こちらもまたの機会と。

ページトップへ

 非番なのに店内にいた、こちらも顔見知りの店員さんに飴をもらい(ブックファーストのサービスではありません)、会計へ。何故か図書カードを、1万円×2+1,000円×10枚でもらったので、1,000円の方をまとめて出します。ウィーン。ウィーン。わりと長い。地下2階の思想、歴史、科学棚へ行く余裕がなくなったことをちょっと残念に思いつつ店の奥へ。店の奥から、センター街へ抜ける秘密階段があるのです。昔は剥き出しの本の山とかがんがん積まれていましたが、ドアがついていたりするのに時の流れを感じつつ地上に出ます。
 前は入らなかったSoftBankの電波も店内でわりとつかまりました。待ち合わせにも使えるように。

【5】『ユリシーズ』I~IV(集英社文庫)

■リブロ渋谷店。
 本屋さんの違いなんて本の数だけじゃない? という人は割といるかと思うのですが、そんなことは決してないわけで、少しでも使いやすくしようという店員さんの血のにじむような努力があるわけです。こちらでも、非番なのに店内にいた顔見知りの店員さん(更に接客をしている)。そんなに本が好きか。と聞くのは野暮というものでしょう。

『ユリシーズ』

 パルコの地下なので、パルコっぽいものを買おうというのが目論みですが、意外に全部揃っているのをみかけない文庫版の『ユリシーズ』をとりあえず確保。御免なさい。読んでいません。ここで一寸ブレーキがかかり悩みます。欲しい本はあるのですが、軒並み5,000円超級なのでもう少し細かく刻んでみたい。折角こういう企画なので、機会がなければ今一歩手が出ないものにするべきではと相談してみて、『禅とオートバイ修理技術』かなとか『ロールシャッハの鮫』かなとか言ってみますがしっくりとこず。美術系も巡るも、はまりません。

ページトップへ

【6】『タティングレースの小さなアクセサリー』(文化出版局)

『タティングレースの小さなアクセサリー』

 ここは矢張りお洒落系じゃないのか、と方針を転換し、料理、手芸系をあさります。フランス女子高生の料理の教科書『修道院のレシピ』みたいなのないですかと無茶振りをしつつ、『ニット男子』を却下。『LIFE なんでもない日、おめでとう!のごはん。』もう一声。羊毛フェルトでも良いですと言いつつ、きっと自分ではやらないだろうので、作例を眺めておそるべき可愛らしさに戦慄するにとどめ、『タティングレースの小さなアクセサリー』を。編み物挫折中なのに、レースかよという話ですが、結び目が好きでシャトルが好きです。将来はひたすら長大なレースを編み続けているお婆ちゃんにわたしはなりたい。

ページトップへ

【7】『そしてカバたちはタンクで茹で死に』(河出書房新社)
【8】『口に出せない習慣、不自然な行為』(彩流社)

『そしてカバたちはタンクで茹で死に』『口に出せない習慣、不自然な行為』

 外国文学棚へ戻り、やっぱり少し変更された棚を端から記憶して遊びます。そういえば買っていなかった『そしてカバたちはタンクで茹で死に』。リブロっぽくないか。そうでもないかも。ふと目に留まるバーセルミの文字。『口に出せない習慣、不自然な行為』。知らない本が。すみません、現代アメリカ文学叢書、見落としてました。

ページトップへ

【9】『西行百首』(講談社文芸文庫)
【10】『ロラン・バルト 中国旅行ノート』(ちくま学芸文庫)

『西行百首』『ロラン・バルト 中国旅行ノート』

 このへんで予算的にリミットなのですが、世間話などするうちに『西行百首』と『中国旅行ノート』。塚本邦雄とロラン・バルトは、なんでしょう。時間をあけては思い出し、目についた順にぽつぽつと読む好きさ加減。忘れねばこそ思い出さず候。
(非番の)店員さんと先程の図書カードの話などします。

ページトップへ

「先日25万円分お買い上げ頂いたお客様がいらっしゃいまして、全額500円のカードでお支払い頂きまして、一枚読むのに8秒かかるので、会計に30分程かかりますが宜しいですかとお尋ねすると、宜しいと」(うろおぼえなので文責円城)。何か負けた気持ちになる。あとで検算してみると、かかるのは66分となりそうなのだが、読み取り機が2台あるということなのかどうか。

【11】『妖説太閤記』上下(講談社文庫)
【12】『アレクサンドルII世暗殺』上下(日本放送出版協会)

■MARUZEN&ジュンク堂渋谷店。
「離れると二度と会えませんから」
 と宣言し、担当さんと肩を並べて棚の間を進みます。巨大本屋さんということで何か専門書を買おうと理工の棚へ行きますが、普段から優先度高く買っているので特になく。LISPに手を出そうかと思いつつ、この話は長くなるので中断。

『妖説太閤記』
『アレクサンドルII世暗殺』

 ところどころ照明の落とされている歴史棚、宗教棚、哲学棚を巡りつつ、以前一度来ただけなので棚の配置を覚えきれておらず、やや途方に暮れながら文庫棚へ。山田風太郎『妖説太閤記』を。ミステリと明治もの、忍法帖はそれなりに読んだのですが、妖説には手を出しておらずここから開幕。
 歴史棚へ戻り、『アレクサンドルII世暗殺』。これは小説書きの参考用。

ページトップへ

【13】『ザノーニ』I・II(国書刊行会)

『ザノーニ』

 節電の対象はあんまり人のこない棚なのかなあと、薄暗い幻想棚の前に佇みぼんやりとしていると、棚の左上に『ザノーニ』の文字。一旦、目が滑ったあと急いで戻る。Amazonで品切れ、MARUZEN&ジュンク堂のネットストアHONでの検索でも品切れの『ザノーニ』が。「薔薇十字、フリーメーソン、カバラの秘儀を小説化し、エリファス・レヴィをして「英国の真正なオカルティスト」といわしめた、リットン卿の代表長編」がっ。と盛り上がる人って日本に2,000人くらいしかいないよなとか、Project Gutenbergで読めやとか、持ってなかったのかとかいうのは措き、予算オーバーですが、知ったことではないので購入。ISBNがないので、レジの人に若干の混乱を引き起こしたのは秘密。ちなみに節電棚の対象は、お年寄りが少ない棚、であるらしい。これもうろ覚えなので文責円城。

ページトップへ

 以上、4月10日の渋谷本屋さんめぐり、持って帰るまでが買い物です。2万円くらい持ち歩くことはたまにあっても、3万円は未知の領域、平気かなと若干の不安を抱きつつ、袋を3つ下げてホテルへ帰還。左手が痛い。自分を運ばせることによって腕を上がらなくさせ、読まれないように抵抗する本というのを考えるがいまひとつ。
 大阪へ帰る12日の朝、本をまとめていたところで震度3の余震発生。東海道新幹線が一時止まる(後、すぐに復旧)。
 まあ、しばらく帰れなくなってもとりあえず本はあるな、と思う。

図書カード使い放題?! トップ
ページトップへ