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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

第43回:尾崎世界観さん

本棚の前の時間
<プロフィール> 尾崎世界観(おざき・せかいかん):1984年生まれ。東京都出身。クリープハイプのヴォーカル・ギター。2012年4月にアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャー・デビュー。2016年6月に初小説『祐介』(文藝春秋)を刊行。他著に『苦汁100%』(文藝春秋)。

 今月の図書カード3万円お買い物コーナーは尾崎世界観氏が登場。かつての"戦場"で、動物の生態の本から文芸、詩集、タレント本までじっくり買った19冊はこれだ!(平成29年9月18日 於紀伊國屋書店横浜店)

 本屋が好きで、暇さえあれば本屋に行っていた。あの頃の自分にとって、本屋は戦場だった。金を持たず丸腰で、敵に見つからないように店内を立ち読みしてまわっていた。図書館はさながら野戦病院。旬をすこし過ぎた、今じゃない、そんな本の匂いはいつも優しかった。自転車のカゴを本で埋めて、重みに耐えきれずユラユラ揺れながら帰った。
 それから時を経て、すこしずつ余裕が出てきた。持つのが面倒なくらいの本を買ったりすることもある。今回は3万円、好きに買って良いということで、楽しみにしていた。場所は紀伊國屋書店横浜店。そごうの中を上がっていくと、突然現れる店内。どこからどこまでが店なのか、境目が曖昧で、そんな所も好きだ。本屋だ、本屋に行くぞ。さぁ、入り口だ、よし、入る。ということもなく、気がついたらヌルっと本屋に居るあの感じが良い。どうでもいいけれど、なんでデパートの食品売り場のエレベーター付近って、必ず椅子が埋まってるんだろうか。こんなにも店が開いているのに。それに見向きもせず、お年寄りや子供が退屈を持て余してこの世の終わりみたいな顔で暮れなずんでいる印象がある。疲労感というよりも、疲労そのものが座っているようで、見ていて落ちこむ。
 受け取った図書カードを手に、店内を歩く。休日ということもあって、レジには行列が。いつもお世話になっている川俣さんも今日は私服だ。休日は私服で出勤だなんて、お洒落な本屋だな。いや、他の店員さんはエプロンをしている。あぁ、そうか、休日なのにわざわざ出勤させてしまったのか、これは申し訳ない。
まずは普段全く気にしていない棚へ。1番奥にある、宗教や心についての本が並ぶこの場所は温度が低い。同じ本屋とは思えないほどにひっそりとしている。なんだかエロいことが出来そうだなとか、そんな煩悩まみれの自分が読むべき本ばかりだ。でも、悟りを開いたら商売にはならない。煩悩を捨てたら何も書けなくなってしまう。タイトルだけ読んでいても、何だか説教されている気分になって実家の母親を思い出してしまう。最終的には、あぁ、久しぶりに電話でもしてみようかなぁ、なんてセンチメンタルな気分にまでなってきた。何も買わずに移動。

尾崎世界観さんが図書カードで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『ヒトを喰う生き物』 パンク町田監修、斎藤沙千恵/ビジネス社 ¥1,296
『観察する目が変わる動物学入門』 浅場明莉、菊水健史/ベレ出版 ¥1,728
『動物になって生きてみた』 チャールズ・フォスター、西田美緒子訳/ 河出書房新社 ¥2,052
『うたたね』 川内倫子写真・構成/リトル・モア ¥3,240
『緑のさる』 山下澄人/平凡社 ¥1,512
『星の子』 今村夏子/朝日新聞出版 ¥1,512
『地鳴き、小鳥みたいな』 保坂和志/講談社 ¥1,620
『静かな雨』 宮下奈都/ 文藝春秋 ¥1,296
『やがて海へと届く』 彩瀬まる/講談社 ¥1,620
『花火の音だけ聞きながら』 いがらしみきお/双葉社 ¥1,296
『裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパーク13』 石田衣良/文藝春秋 ¥1,620
『息子と狩猟に』 服部文祥/新潮社 ¥1,728
『関東戎夷焼煮袋』 町田康/幻戯書房 ¥1,944
『チバユウスケ詩集 モア・ビート』 チバユウスケ/HeHe ¥1,944
『志の輔の背丈』 立川志の輔/毎日新聞出版 ¥1,620
『新編 啄木歌集』 石川啄木、久保田正文編/岩波文庫 ¥1,026
『爪と目』 藤野可織/新潮文庫 ¥464
『第2図書係補佐』 又吉直樹/幻冬舎よしもと文庫 ¥535
『新版 家畜飼育の基礎【農学基礎セミナー】』 阿部亮/農山漁村文化協会 ¥1,944
合計 19冊  購入総額 ¥29,997

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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