もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。
第41回:森絵都さん
- 自腹を恐れず「殿様買い」
- <プロフィール>
森絵都(もり・えと)
1968年東京都生まれ。1990年『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。1995年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、1999年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。『永遠の出口』『ラン』『この女』『漁師の愛人』『クラスメイツ』『みかづき』など、著書多数。
図書カード3万円お買い物コーナーに今月は森絵都氏が挑戦! 古地図に児童書、英作文教材から歴史専門書まで、「殿様買い」した16冊はこれだ!
(平成29年5月29日 於ジュンク堂書店池袋本店)
本気で本を買う気になると、なんとなく、体が池袋へ向かう。そんな習性が私にはある。人生でもっとも本を読んでいた10代の終わり、私は高田馬場にあった某専門学校に通っていて、その学校で一番仲のよかった友達が西武池袋線沿いに住んでいた。おのずと生活の軸が池袋へ傾いたのだろう。毎日ヒマだったのもあって、あの頃は本当にしょっちゅう池袋の本屋さんに入り浸っていた。
余談ながら、当時、自営業を営んでいた父の会社も池袋の近辺にあり、私のデビュー後、新刊が出るたびに、父は池袋中の書店巡りをし、せっせと本を買い漁っていた。あまりに買い漁りすぎて、あるとき、まったくの無名だった私の本が某店の週間売りあげベスト20に入ってしまい、担当編集者から「書店さんから連絡をもらったんですけど、なんか、うちの社員がランクインのために操作をしたって疑われているような......」と、若干気まずげな報告を受けたのも忘れられない思い出だ。
時は流れて父の会社は潰れ、父は死に、その編集者さえも4年前に亡くなってしまった。が、それはそれとして、池袋には今も多くの良い本屋さんがある。池袋は不滅なり。そんなこんなの感慨を胸に、5月某日、今回の企画でお世話になるジュンク堂池袋店さんをめざした。
とりわけ本気で本を買う際、私はよくこのジュンク堂さんに来る。とにかく広くて大量の本がある上、図書館にも似たこざっぱりした佇まいが心地よく、落ちついて本を選べるのが嬉しい。今日はここで図書カード3万円分を使い放題だなんて、幸せすぎて怖い。
浮きたつ足で、まずは『本の雑誌』編集者の松村眞喜子さん、集英社編集者の栗原佳子さんと待ち合わせをしている1階入口へ。と、そこに怪しげな女性を発見。何やら案内のような紙を両手に掲げて立っている。イベント告知? 宣伝? 勧誘? いえ、私はちょっと用事が、という顔でしずしず通りすぎようとするも、掲げられていたそれは案内ではなく『本の雑誌』だった。
松村さんですか、と尋ねるのも野暮なほど鮮やかな登場である。
「私、ちょっと怪しいですよね。皆さん、不審そうに通っていかれるんですよ。ふふ」
涼やかな笑顔の松村さんと初対面の挨拶をしているうちに、栗原さんも到着。
「じゃ、さっそく始めましょうか」
というわけで、いざや買い物スタート、となる。
森絵都さんが図書カードで購入した本
著書 | 著者/出版社 | 価格(税込) |
---|---|---|
『京都歴史地図帖 探訪!!』 | 歴史探訪研究会編/小学館クリエイティブ | ¥1,728 |
『古地図で歩く古都・京都』 | 天野太郎監修/三栄書房 | ¥1,404 |
『50トピックでトレーニング 英語で意見を言ってみる』 | 森秀夫/ベレ出版 | ¥2,052 |
『三人寄れば、物語のことを』 | 上橋菜穂子、荻原規子、佐藤多佳子/青土社 | ¥1,512 |
『ムーミンキャラクター図鑑』 | シルケ・ハッポネン、高橋絵里香訳/講談社 | ¥3,132 |
『中世の〈遊女〉』 | 辻浩和/京都大学学術出版会 | ¥4,104 |
『中世日記の世界 史料で読み解く日本史』 | 松薗斉、近藤好和/ミネルヴァ書房 | ¥4,320 |
『絵図にみる荘園の世界』 | 小山靖憲、佐藤和彦編/東京大学出版会 | ¥3,024 |
『長いお別れ』 | 中島京子/文藝春秋 | ¥1,674 |
『短編少女』 | 集英社文庫編集部編/集英社文庫 | ¥1,338 |
『短編少年』 | 集英社文庫編集部編/集英社文庫 | |
『魔術師のおい』 | C・S・ルイス、土屋京子訳/光文社古典新訳文庫 | ¥2,223 |
『ライオンと魔女と衣装だんす』 | C・S・ルイス、土屋京子訳/光文社古典新訳文庫 | |
『馬と少年』 | C・S・ルイス、土屋京子訳/光文社古典新訳文庫 | |
『私の仕事』 | 緒方貞子/朝日新聞出版 | ¥928 |
『あの頃』 | 武田百合子著、武田花編/中央公論新社 | ¥3,024 |
合計 16冊 購入総額 ¥30,463 |
それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。