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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

第37回:原田マハさん

アートブック一気買い
<プロフィール> 原田マハ(ハラダ・マハ)
1962年、東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館にて勤務。2005年「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞、デビュー。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、第5回R-40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワードを受賞。その他の作品に『暗幕のゲルニカ』『ロマンシエ』『ジヴェルニーの食卓』などがある。

今月の図書カード3万円使い放題コーナーに挑戦するのは、原田マハ氏。芸術コーナーの棚での高額美術書一気買いを目論みつつ、購入した14冊は果たして何だ!?
(平成28年7月8日 於三省堂書店神保町本店)

 私の実家は、東京都のど真ん中、本の町・神保町にある。
 などと書くと、資産家の娘か古書店何代目か、と思われてしまいそうなので、先にバラしておくと、かつての父の勤め先が千代田区にあったため、その近所でつましい借家住まいを続けて今日に至る。従って、都心に家を持つ資産家とか億ション住まいとかとは一ミリも関係ない。あいもかわらずつましい借家住まいである。いきなり本編とは関係ない話題で始めてしまったが、これを先に白状しておかないと話が進められないので、あしからず。
 3万円の図書カードを使って、好きな本を買ってもいいという、なんとも魅力的な企画に参加させていただくにあたり、私が迷わず選んだ書店は、三省堂書店神保町本店である。実家から徒歩七分のところにあるため、しょっちゅう通っている馴染みの書店。この界隈には出版社も多いので、ときには二階のカフェで編集者と待ち合わせをすることも。
 この書店に行けば必ず立ち寄るコーナーがある。それは4階「芸術」コーナーだ。
 私はもともと美術館のキュレーター(学芸員)をしていたこともあり、アート業界で20年ほど働いていた経験をもつ。拙著「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」「ジヴェルニーの食卓」など、アートを題材にした小説の数々は、自らの体験に基づいて書いたものだ。それに加えて、アートが好きで好きでたまらないから、自分の大好きなアーティストが登場する小説を書いてしまった─というわけである。
 かつてアートの世界に身を置いていたときも、アートにまつわる小説を書いているいまも、常に必要となるのは良質な文献である。キュレーターをしていたときは、展覧会の企画の参考資料となる美術書を探し回った。その頃はいまと違ってインターネットなどなかった時代だったから、美術書を豊富に取り揃えている大型書店や、美術館のミュージアムショップなどで買い漁った。当時は勤め先が経費として購入代金を払ってくれたので、比較的気前よく買っていた。
 美術書というのはやたら値段が張る。図版を多く使っている大型の画集はもちろん、分厚い上に二段組で小さな文字がびっしり並んでいる研究書も、びっくりするような値段を付けていることも多い。作家になってからは当然自分のお財布で買うので、選本の目が厳しくなった。しかし、「おっ! この本、まさに探していた一冊じゃないか」とみつけたものに限って、「どうしてもどうしても必要なのに、どうしてどうしてこんなに高いの?!」と悶絶するような値段だったりする。三省堂書店神保町本店四階の芸術コーナーの美術本の棚付近で、身をよじらせているヘンな人がいたら、それはきっと私なのである。

原田マハさんが図書カードで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『陸奥A子』 外舘惠子編/河出書房新社 ¥1,944
『作家の旅』 コロナ・ブックス編集部編/平凡社 ¥1,728
『作家と温泉』 草彅洋平編/河出書房新社 ¥1,836
『作家の珈琲』 コロナ・ブックス編集部編/平凡社 ¥1,728
『昭和なくらし方』 小泉和子/河出書房新社 ¥1,728
『女中がいた昭和』 小泉和子編/河出書房新社 ¥1,728
『昭和の結婚』 小泉和子編/河出書房新社 ¥1,998
『川端康成伝 双面の人』 小谷野敦/中央公論新社 ¥3,240
『ムンクを追え!』 エドワード・ドルニック著、河野純治訳/光文社 ¥1,836
『小林秀雄全作品20 ゴッホの手紙』 小林秀雄/新潮社 ¥1,728
『ゴッホの椅子』 久津輪雅/誠文堂新光社 ¥2,484
『ゴッホの手紙』 H・アンナ・スー編、千足伸行監訳、冨田章、藤島美菜訳/西村書店 ¥4,104
『西洋名画の読み方5 印象派』 ジェームズ・H・ルービン著、神原正明監修、内藤憲吾訳/創元社 ¥4,104
『オバマ広島演説 対訳』 CNN English Express 編集部編/朝日出版社 ¥756
合計 14冊  購入総額 ¥30,942

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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