もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか？
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開！
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

　作家というのは、あまり役得のない仕事である。特に、ことお金の問題に関しては。実際私も、作家になって「しめしめ」と頬が緩んだ経験は一度もない。
　だから今回、この企画が回ってきた時には、作家になって初めての「しめしめ」だった。本当に３万円分、一気に買っていいの？　普段、あまりテンションが変わらない人間なのだが、今回ばかりは自分をコントロールできなかった。
　しかしイエスと言われて、はたと考えこんだ。
　本３万円分となると、相当な分量になるのは間違いない。文庫で言えば30冊見当だろうか。準備ゼロの状態から、いきなりこれだけの冊数を選び出すとなると、間違いなく半日仕事になる。いや、書店は好きだから、半日いても全然苦ではないのだが、それでは迷惑をかけるだろう。
　というわけで、予め入念な計画をたてることにした。とはいっても、欲しい本のリストを作り、書店を選ぶだけだが......私の場合、都内で「ホームグラウンド」になっている書店が何軒かあるのだが、その中から三省堂書店・神保町本店にお世話になることにした。中学校の頃からだから、かれこれ35年以上も通い続けている店で、上から下まで知り尽くしているし。
　このイベントに対しては、沐浴のような儀式が必要だと勝手に思いこんで、当日はわざわざ散髪を終えてから、最高気温35度のクソ暑い中を出撃した。普段からしょっちゅう歩いている街だから、「出撃」はちょっとばかり大袈裟なのだが、やはり「３万円」の威力は大きい。テンション、本番直前になってさらに上がる一方である。
　髪が短くなったせいか、暑さがさらに厳しく感じられ、ほとんど茹だった状態で現場到着。で、旧知の同書店・内田剛さんにご挨拶して、ようやくクールダウンした。どんなにあたふたしていても、親しくさせていただいている人に会うと、気持ちが落ち着きますね。
「何かあったら呼んで下さい」と内田さんに見送られ、まずは2階からスタート。私の場合、ここでは文芸・文庫の2階か、思想・哲学の4階に行くことが多く、今日も馴染みのこの2フロアで冷静に、計画通りに買い物を済ませるつもりだった。
　ところが、あっさり失敗した。

堂場瞬一さんが図書カードで購入した本

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

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