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図書カード使い放題?!

もし手元に自由に使える3万円の図書カードNEXTがあったら、あなたならどんな本を買いますか?
このコーナーでは、そんな夢のような話を作家さんに体験していただき、どんな本を選んだかを大公開!
図書カードNEXTで本を選ぶ楽しみをあなたも疑似体験してください。

最新:綿矢りささん

欲しい本を見つけに
<プロフィール> 綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年、京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞しデビュー。04年『蹴りたい背中』で芥川龍之介賞受賞。12年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞、同年に京都市芸術新人賞、20年『生のみ生のままで』で島清恋愛文学賞受賞。他の著書に『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』『オーラの発表会』『嫌いなら呼ぶなよ』『パッキパキ北京』など。

 今月の図書カード3万円お買い物は綿矢りさ氏が登場! 台湾発の総合書店をぐるぐるまわって旅行ガイドから危険生物百科、坂道の本にSFまで欲望のまま選んだ17冊はこれだ!
(2024年2月2日 於誠品生活日本橋)

 本屋へ行き、店内を見回って、読みたいと思った本を買うのが久しぶりだった。興味をひかれてあらかじめ書名を控えておいた本、仕事関係で資料として読んでおかなければならない本を、本屋へ買いに行っては帰ることの繰り返しだったからだ。欲しい本があるからじゃなくて、欲しい本を見つけに書店に行ったのは、本当にいつぐらいぶりのことだろう。
 もともと私にとって本屋へ行くというのは閉じた作業で、一人でしねしねと並ぶ本達を眺めつつ、ねっちょり、ねっちょりと本を手にとってはめくり、手にとってはめくりを繰り返すのが習わしで、そのときの背筋は前屈みになり、顔はスーパーで野菜を選ぶときと同じぐらい眉間にシワが寄っている。
 今回訪れたのは誠品生活日本橋。この企画は本屋さんをどこにするか選べるようになっていて、前から好きだった誠品書店さんにお邪魔することに決めた。ここはコレド日本橋のワンフロアの大半を占める、広く、平べったい書店だ、知らなかったけど、有隣堂が運営している。だからか、書店員さんからもらった名刺には、肩書きのところが誠品書店でなく有隣堂書店になっていた。
 ここの何が好きかって、本の他に色んな台湾の雑貨が買えるところ。辛いピーナッツのお菓子や台湾風味のメモ帳とかの文房具、器など揃えてあって、台湾名物の旧型炊飯器の実物が売ってたことも確かあった。石鹸やジャム、布靴など可愛いものがたくさんある。その甘いテイストと、ずらりと並ぶ平面置きの本の対比に心が躍る。本と雑貨の両方を買って帰ったら、苺とシャンパンを買って帰るみたいにおうちライフがキラキラしそうと思えてくる。で、今回行ったらちょうど春節の時期だったので、赤く巨大な提灯が天井からたくさんぶら下がっていて、めでたいムードまんさいだった。初めは本屋に本以外のものが並べてあるのに慣れなかった。でも段々、本だけが天井に届くほどの大きな棚にずらりと並べてある光景に圧迫感を感じるようになった。四角くとがった重い本の持つ、独特の緊張感、殺気にプレッシャーを感じるようになったのは、自分も本を出版するようになって、他の本たちと肩を並べている姿に、私の本はこれで大丈夫なのかなと、少しずつ試されてるピリピリした気持ちが蓄積していたからかもしれない。そんな本屋で、ちっ息しそうに感じるとき、本と違うものが置いてあると、和むし、本の新品さがより際立つ感じがする。もっともっとリラックスできるように、座って読める大人用の絨毯スペースも作ってほしいくらいだ。
 スゴいなと思ったのは書店員さんたちだ。坂道に関する、ブラタモリが好きな層向けの本が読みたいといえば、たくさんあるなかからセレクトしてきてくれて、そのどれもがマニアックすぎるくらいツボを押さえていた。翻訳BLを読みたいと言えば、台湾BLの「君との通勤時間」を推薦してくれた。残念ながらすでに読んでいたので今回は買わなかった。小説の間に小説内のシーンを実写化した二人の愛の写真を挟むという、斬新な本だ。酢豚を食べたあとに酢豚味のキスをするシーンがあり、異国情緒を感じた。おっと買ってない本に関して詳しく書いてしまった。

綿矢りささんが図書カードNEXTで購入した本

著書 著者/出版社 価格(税込)
『ひとりっぷ〈6〉 明日も世界の果てまで 香港の推し111編』 ひとりっP/集英社 ¥1,750
『[図説]台湾の妖怪伝説』 何敬堯、甄易言訳/原書房 ¥3,520
『愉快なる地図 台湾・樺太・パリへ』 林芙美子/中公文庫 ¥990
『はーばーらいと』 吉本ばなな/晶文社 ¥1,650
『大迫力!世界の危険生物大百科』 加藤英明監修/西東社 ¥1,430
『流浪地球』 劉慈欣、大森望、古市雅子訳/KADOKAWA ¥2,200
『パワースポット・オブ・台湾 台湾の聖殿と神々を巡る旅』 松田義人/玄光社 ¥1,980
『味の台湾』 焦桐、川浩二訳/みすず書房 ¥3,300
『涙を流し口から火をふく、四川料理の旅』 中川正道、張勇/書肆侃侃房 ¥1,650
『私をやめたい。でも今日くらいは笑ってみる』 蔡康永、森美樹監訳、長井由花訳/フォレスト出版 ¥1,760
『三つの名を持つ少女 その孤独と愛の記憶』 三毛、間ふさ子、妹尾加代訳/石風社 ¥1,980
『なんくるない』 よしもとばなな/新潮文庫 ¥572
『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 ケン・リュウ編、中原尚哉ほか訳/ハヤカワ文庫SF ¥1,100
『東京凸凹散歩 荷風にならって』 大竹昭子/亜紀書房 ¥1,980
『大江戸坂道探訪 東京の坂にひそむ歴史の謎と不思議に迫る』 山野勝/朝日文庫 ¥748
『東京暗渠学 失われた川を読む・紡ぐ・愉しむ』 本田創/実業之日本社 ¥2,860
『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』 高野秀行/文春文庫 ¥990
合計 17冊 ¥30,062

それでは各書籍について、購入の背景をじっくりと伺いましょう。

購入の背景について

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