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今月の新刊採点


「ティファニーで朝食を」 「ティファニーで朝食を」
トルーマン・カポーティ(著)
新潮社
税込1,260円
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佐々木克雄(ささき かつお)
佐々木克雄
評価:★★★★
 もの凄く私事で恐縮なのですが、訳者の村上さんとは大学、学部まで同じで、しかも自分の現役時代は『ノルウェイの森』の全盛期──あのクリスマスカラーの上下巻を手にキャンパスを歩いていることがステイタスだったのです(懐かしー&恥ずかしー)。てなワケで、自分らの世代は良くも悪くも村上さんの影響を多分に受けているものですから、この本をめくるときの葛藤というものは世間一般で考え得る「小説vs映画(というか、vsヘップバーン)」という構図ではなく、「カポーティの『僕』vs村上春樹の『僕』」だったのです。
 で、結論。そんなコトはまったく関係なく、天真爛漫なヒロイン、ホリーにすっかり魅了されておりました。素敵です、彼女。橋田壽賀子ばりの長ゼリフでもウィットに富んでいるからスイスイ読めてしまうし楽しめる。まあこれはカポーティと村上さんがタッグを組んだからこその産物なんでしょうけどね。いいモノ読ませていただきました。ご馳走様。

下久保玉美(しもくぼ たまみ)
下久保玉美
評価:★★★
 「あ、ティファニーで朝食食べる話じゃないんだ」というのが率直な感想です。こんな感想ですみません。でも考えてみればティファニーは宝石店でカフェじゃないから朝食なんて食べられるはずもないんですけどね。
 本書にもあるようにティファニーは年齢や経験など何かを蓄積した人、つまり成熟した人物がいくのにふさわしい場所とヒロイン、ホリーが語ります。しかし、ホリーは成熟とはかけ離れた存在として描かれます。シリアルのように健康でレモンのように清潔な十九歳のホリーは何かを蓄積するにはまだ教養も経験も足りないのです。自由奔放にニューヨークの社交界を渡り歩き、気ままな生活を送っているちょっと足らない女の子ように見えますがその奥に見える不安を感じずにいられません。
 実際に映画の方を見ていないからなんともいえないけど、オードリー・ヘップバーンとホリーはうまく重ならない気がしますが。こんど機会があったら映画の方も見たいです。

増住雄大(ますずみ ゆうだい
増住雄大
評価:★★★★
 どうせ猫も杓子もホリーなんだろ、きっと。
 この小説には、ホリー・ゴライトリーという魅力的な人物が登場する。多くの読者の記憶に残り続けるであろう、とても素敵な女性である。だから「ホリーが良かった」というのは、一番多く出得る感想だろう。その意見は否定しない。ホリーは良い。素晴らしいキャラクターだ。でも、「ティファニーで朝食を」について、それだけで済ませてしまうのはもったいない。
 まず、文章が良すぎる。適度に簡潔で、適度に詳しく、味がある。会話文も自然で、翻訳ものを読んでいるという事実を忘れてしまいそうだった。これはカポーティの力か村上春樹の力か。両方だな、たぶん。
 そして、語り手の「僕」。私は、このセンシティブで屈託のある青年の、考えや行動に大変感じ入った。周りの人たちや、世の中との距離の取り方が良い感じ。とても魅力的なキャラクターだと思う。
 まあでも、あれだ。私から見ても一番魅力的なのはホリーですね。結論。私も猫&杓子の一員です。

松井ゆかり(まつい ゆかり)
松井ゆかり
評価:★★★★
 同じような方は多くおられると思うが、初「ティファニーで朝食を」体験は実は映画である。原作者であるトルーマン・カポーティは、オードリー・ヘプバーンが主役ホリー・ゴライトリーを演じることに不満で、ほんとうはジョディ・フォスターに演じてほしかったと聞いた覚えがある。私もフォスターの大ファンなので彼女のホリー観たかったなと思うが、今となってはオードリー以外には考えられない気がする。しかし、ジョージ・ペパードは他に適任を当てはめることは可能だ。例えばジュード・ロウとか(イギリス人だけど。歌手でいいならベック)。
 これって、「ティファニー〜」の翻訳についても当てはまらないだろうか。作品そのものの持つ魅力を表しているのがオードリー。昔の翻訳の味わいを体現するのがペパードで、時代の流れの中から生まれた村上訳がロウ(あるいはベック)。
 映画や翻訳についての話が長くなってしまったが、もちろん小説自体の魅力というものがある。訳者村上春樹が語るほどには、カポーティという作家は私にとって速攻性のあるものではないのだが、その代わり何年も心のどこかに引っかかっていてある日突然効いてくる感じの存在である。つまりいずれにしてもやられているわけだが。

望月香子(もちづき きょうこ)
望月香子
評価:★★★
 まず映画を思い浮かべる人が多いと思いますし、ホリー役を演じたオードリーが表紙の「ティファニーで朝食を」を読んだことのある人が大多数だと思います。が、恥ずかしながらわたしは、観たことも読んだこともなく、これがティファニーデビューでした。
 16歳にも30歳にも見える、不思議な魅力を持つホリーと、小説家の「僕」との絶妙な距離感と、ホリーと「僕」のやりとりに夢中になりました。日々を水浴びのように生き、自由であろうとするホリーと、ちょっと屈折した繊細な「僕」との会話に見え隠れする孤独や切なさが、ひしひしと読み手に向かってきます。
 訳者の村上春樹さんの言うように、原典に忠実に、もう一度映画化してほしいです。ホリー役は、沢尻エリカさんはどうでしょうか…?
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