評価:★★★★★
昭和三十年代の和歌山。実父と義母と暮らす広之は、大阪から来た勝治と出会う。広之が憧れていた少女の靴下を盗む大胆さがあるかと思えば、「わしの家は普通とちゃう。それでも友達でおってくれるか。」とすがる。強さと脆さをあわせもつ勝治と、男同士の友情を育んでゆく広之の一夏を描く物語。「理想の家庭の条件とは?」と聞かれて、皆はどんな事を思い浮かべるのだろう。例えば、「血のつながりがある親と暮らすこと」「両親がまっとうな仕事についていて裕福」「家族が健康である」等々だろうか。だが本当の幸せは、外的条件のみでは計れない。肝心なのは、家族それぞれの、お互いを思う心がどれだけ深いかだろう。そして、思う心の強さと深さは、別れの辛さをどれだけ知っているかに依ると思う。だから彼等は出会った人との繋がりをとても大事にして、必死で守ろうとする。どんなに言葉がぶっきらぼうでも真心は伝わるし、他人の家のオムライスより、母親が買ってきたシュークリームがおいしく思える時がある。「大切なのは中身」という、シンプルだけど大事なことを教えてくれる作品。 |