評価:★★★★
中学校教師・久保は、明治時代にある女性冒険家「I・B」の通訳として彼女の旅に同行した青年・伊藤亀吉が書いた手記を、屋根裏で見つける。だが手記は途中で終わっており、久保は亀吉の孫娘と思われる女性劇画作家シゲルに連絡を取る。興味がなかったシゲルが、熱心な久保やその教え子の赤堀に引きずられる形で、欠落部分探しに加わる「現在」と、彼女の祖先である亀吉の手記「=過去」で構成されている。序盤、全然話が噛み合わず、ぎくしゃくしていた三人が、手記をネタにして会う度に親しさを増してゆく。過去が現在に影響を与えていくというパターンは、よく小説でも使われる。だが、「過去を繰り返すかのようにシゲルと久保が恋に落ちる」なんて、ベタな展開は外してあり、安心した。「あのころ私は若く、人としてはまだ拙かった。(p150)」とあるが、手記の文章自体も昔の文章を一度現代文に翻訳しており、どこか拙い感じがした。その拙い言葉が、丁寧な言葉で遠回しに愛を語る、もどかしい二人−亀吉と「I・B」−のイメージと重なった。 |